天才魔導師さまのお仕事(2)
「みなさーん!お元気?」
「何だレイトン…いきなり現れて」
長閑な昼下がり、王宮の中にあるテラスで神子、国王、武官と文官が優雅にティータイムを楽しんでいた。そこに王宮魔導師長であるレイトンが颯爽と現れ、皆は驚愕した声を上げた。
特に驚いているのは神子のナギサであった。ナギサはあまりレイトンと会話をしたことがないのだ。
「ちょっと神子様に聞きたいことがあってね」
「今は無理だ、俺たちで休憩してるからな」
「陛下お願い〜!大事な話なんだよ」
ナギサは戸惑っているように見えたが、レイトンは気にせず国王に強請る。周りもいきなりの要求に驚いていた。
「聞きたいこととは何だ?」
「神子様の故郷のこととか…まあ、いろいろだよ!」
「………」
「大丈夫!僕は陛下達みたいに神子様に恋愛感情ないから」
その言葉を聞いて周りは一斉に否定をしはじめた。ナギサも顔を赤らめて慌てている。
「そういう茶番は後にしてさ、早く2人っきりでお話させてよ!僕も忙しいんだから」
ね、いいでしょ?とレイトンはナギサに問いかける。未だに顔を少し赤らめたままナギサは小さく頷いた。
「ユージン、俺レイトンさんと話すから…部屋で待っててくれよ」
「…だめだ」
「お願い!大事な話みたいだし…」
頼むよ、ナギサは上目遣いで国王…ユージンにお願いをした。惚れている国王は嫌とも言えず渋々首を縦に振った。
「レイトン、妙な真似をしたらタダじゃ済まさないぞ」
「わかってますよ、陛下」
鼻を鳴らし国王を含む神子の取り巻きは王宮の中に入って行った。その姿を見送りレイトンはナギサの目の前に腰をかける。
「いくつか質問するね。まず最初の質問なんだけど、神子様ってどこからきたの?」
「え、と…違う世界から来た」
「そーじゃなくて、どんな国なの?というか国とかあるの?」
ナギサはいきなりの質問に動揺するが『日本』という国から来たのだとはっきり答えた。レイトンは頬杖をつき目の前にいる美しい神子を見つめさらに口を開く。
「ニホンね…ニホンの人はみんな神子様みたいに魔力量が多いのかな?」
「いや、俺が魔力持ってるのはここに来て知ったし…俺もだけど前の世界の人は魔法なんて使える人はいなかったと思う」
「じゃあこっちに来て魔法が使えるようになったんだ…異世界人がみんな魔力が多いわけじゃなくて、神子様だから多いわけね」
レイトンはもう1人の異世界人を頭に思い浮かべ思考を巡らす。何故ハジメがこちら側にきたのかわからないが、神子のように特別な役割がないため魔力量が平均以下なのかもしらない。レイトンはそう結論付けた。
「異世界の人はみんな神子様みたいに神様と会話したり、未来のことを予言したりできるの?」
「その力も俺はここに来てできるようになっただけだから他の人はできないと思う……てか、なんでそんなこと俺に聞くんだ?」
「君の他にも異世界からやってきた人がいるから、その人も同じことができるのか気になったんだよ」
「っはあ?!」
「うっそだよーん!僕が気になって聞いただけー」
驚き言葉が出ないのか口をぱくぱくさせるナギサを見て、レイトンはそんなの冗談に決まってるでしょと返した。レイトンは動揺している神子を無視して立ち上がる。
「っ、待てよレイトン!本当に冗談なのかよ」
「…じゃあ、冗談じゃなかったらどうするの?」
「そ、れは…その異世界人と友達になる、かな」
あまりに子供くさい答えにレイトンは鼻で笑った。
「友達?友達になってどうするのさ」
「一緒にここでユージン達と仕事したらいい!同じ異世界人なら仲良くなれるはず」
「仕事ね…ここで縛られてるから同じ仲間が欲しいんじゃないの、君は」
「っ、ちがう!そんなこと考えてない!」
図星だね、レイトンは動揺で揺れる瞳を見てそう思った。神子は国にとって大事な存在であり危険に晒すことはできない。だから王都すら遊びに行くことはできず自由は王宮内だけである。そんな生活をしていて鬱憤が溜まらないはずかない。
「もし君と同じ異世界人がいたとして
王宮に来たいと思うかな?その人物はもしかしたらこの世界で仕事について平和に生活しているかもしれないよ」
「そ、れは…っ」
「家族も作っていたら?そうなったら君と同じようにここで生活はできないよね…まあ、まず神子じゃない異世界人なんて怪しくて王宮では働けないよ」
レイトンはもう1人の異世界人を思い出す。王宮で働け、神子と生活しろと告げた時、その人物が迷惑そうな顔をするのが安易に想像できた。
「まあ、君の他に異世界人がいるわけないから安心して」
「……本当に?」
「ほんとほんと!だから神子様は気にしないでよ、僕は君の故郷と能力に興味があっただけだから」
何か言いたげな神子に背を向けレイトンはスラムに向かうために移動魔法を唱えた。
*
「ーーやぁ、元気?」
「レイトン?どうしてここに…」
玄関の扉を開けた目の前にレイトンが笑顔で立っていて俺は驚いた。お邪魔しまーすとそう言いながらレイトンは家に入ってくる。
突然のことで驚きながらレイトンに用件を尋ねた。
「ハジメに聞きたいことがあるんだけど、ハジメって未来のこととか見える?」
「……はぁ?」
「もしくは便利な道具を何でも作れたり、夢の中で神様と会話したり、命令されたりする?」
ファンタジーなことを聞かれ俺は呆れてしまう。そんなことできるわけがない。そんなことできてたら超人だ。
「できるわけないだろ、何言ってんだ」
「ん〜…本当に異世界人がみんなすごい能力を持ってるわけじゃないんだね」
レイトンが残念そうに言った言葉に俺は固まった。
「なに、言って…」
「ハジメの故郷って神子と同じニホン?それとも違う国が故郷なのかな?」
「お前…なんで日本のこと知ってるんだ」
平然と日本の名前を言ったレイトンに俺は動揺が隠せなかった。
「神子に聞いたんだ、その反応だとハジメはニホンから来たんだね」
「………」
「酷いよハジメ…僕に異世界人なこと黙ってるなんてさ」
残念そうにしているレイトンはいつも通りでそれがとても怖かった。
嫌な汗が背中を伝っている。ゴクリと口に溜まった唾液を飲み込み、俺はギュッと拳を握りしめた。
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