地獄の宴
「ーー…っ、カイル?」
ぼんやりとした視界の中、カイルが奥に座っているのが見えた。目が覚めたばかりで頭がボーっとしてうまく働かない。
ここは倉庫のような場所で、何人かの男の声がした。
「起きたかね」
「あなた、は…っ」
俺を見下ろす男の顔を見て目を見開いた。そうだ、俺はこの人に薬を盛られて…思い出して男、ウィップさんを睨みつけた。
「そう怖い顔をしないでくれ…おい、そいつも起こせ」
周りにいた男達の1人がカイルに水をかける。どうやらカイルは柱に縛りつけられていて、俺は縛られたまま地面に横になっていた。カイルは服を着ているが、俺は何も身につけていない。
寒さで体が震えて歯がなっている。
「っ、おい…ウィップさん、あんた何してんだよ」
「カイルそこでよく見ておきなさい」
目覚めたカイルは真っ青な顔でこちらを見ている。縄を解こうとしているが強固に何重にも巻かれたそれを解けるはずがない。
そんなカイルを放置して、ウィップさんは俺の顎を掴み顔を見つめた。
「普通の男の顔だな…黒髪とその瞳は珍しいが」
「なに、するんですか…っ」
「何って…君を買ったんだから、することはわかるだろう?」
そう穏やかに笑う男に俺は恐怖を感じた。
「噛みちぎられるかもしれないから口は使うなよ…あぁ、何か布を持ってきてくれ」
「…っ、うぐ」
「これでいい、それでは始めようか」
口に布を噛まされ声が出せないようにされた。周りの男達が一斉に俺の体に触れる。体を這う手が気持ち悪くて顔を歪めた。
「っ、何してんだよ!!やめろ、ハジメに触るんじゃねェ!」
「お前は黙って見ていなさい」
「テメェ…っ!」
カイルの必死の表情が男達の体の隙間から見えた。怒りでいっぱいのその顔を見ていると俺は苦しくなった。久しぶりに会ったのがこんな状況だなんて、不安定なカイルはまた病んでしまうのではないか。
自分の心配をしなければいけないのはわかっているが、俺は非力でどうすることもできない。抵抗せずに身を任せることしかできないのだ。
「っぐ…!」
適当に後ろを慣らされて、すぐに熱いものが入ってきた。
中にローションを入れていて本当によかったと今日ほど思ったことはない。他の男達も性器を俺の体に擦り付けてくる。
不快、ただただ不快だった。荒い男たちの息も臭いも、何もかもが。
反応を示さない俺に前にいる男が平手打ちをしてきた。痛みに顔が歪んだのを見て、いやらしい下品な笑みを浮かべている。
「ぅ、っ…ぐ…っ」
「こいつ殴るといい顔するな」
男達は楽しげに殴り始めた。腹を殴られて俺は痛みに蹲る。
「やめろ!クソ野郎、テメェ許さねェからな!!」
「ふん…黙って見ていろと言っているだろう」
カイルもウィップさんに頬を殴られていた。かわいそうだな、俺は痛みでぼんやりとした気持ちでそれを見ていた。
この世界に来たときは同じようなことをカイルにされたのに、カイルはすごく辛そうだった。
…お前がなんでそんな顔するんだよ、そう思いながら俺は小さく笑った。
*
「生きているな?君が死んだら面白くない」
ゆっくりとした動きでウィップさんを見上げる。精液や血、胃液…いろんなもので俺は汚れていた。殴られ蹴られたところが熱を持って痛い。
本当にこの世界に来た時みたいだ。また同じ目に合うとは思っていなかったが。
「クソが…っ!」
「はははっ、泣いているのかね」
カイルは俺を見て涙を流している。俺が小さく名前を呼べば悔しそうに顔を歪めて、もっと泣き始めた。男前が台無しだ。
「カイル、考えは変わったか?また私と仕事をしてくれるだろう?」
「…っ、嫌だって言ってんだろうが」
「し、ごと…?」
なんの話をしているんだろうか、俺の言葉に気づいたウィップさんが俺を見る。
「あぁ、君は知らないのか…カイルはね、私の部下として奴隷や薬物を売ったりしていたんだ」
「っ、そんな…ほんとうなのか、カイル」
俺が見つめるとカイルは俯いた。宝石商だと言っていたのにどうして…裏切られたような気持ちになった。
「でも、カイルはその仕事を辞めたいと言ったんだ…ハジメ、君のためにね」
「ぇ…?」
「本当に君はいらんことをしてくれたよ、ハジメくん」
まさか俺が変われと言ったからカイルはやめようとしたのだろうか。俺なんかの言うこと聞いてなかったらこんなことにならなかっただろうに、俺は悲しくて涙が溢れた。
「お前が好きだから…っ、こんな汚え俺を見せたくなかったから変わりたかった…!」
「かい、る…」
「なのに…、お前をこんな目に合わせて…っ!すまねぇ、すまねぇ…ハジメ…っ」
ほんと馬鹿だよお前、俺はそう言いながら顔を歪めた。必死に謝るカイルに対して憎しみなんかなくて、カイルの不器用さが愛しく感じた。不器用なくせに俺のために変わろうとするカイルが可愛い、そう思ってしまった。
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