救世主たち

 

 砂埃が入り口の方でたっている。焦げたような臭いが充満していた。ぼやけた視界のなか、そこを見る10人くらいの人影が見えた。

「そこまでだ!ウィップ・スターン」
「…なんだね、君たちは」
「王宮第一騎士団だ、貴様を違法薬物所持、売買の疑いで逮捕する」

 聞こえてきたのはよく知っている声だ。その声の主がわかり、じわりと涙が滲んだ。

「ずっと貴様達のことを探っていたが、ようやくここまで来た」
「ふん…私たちを見張っていたのか」

 そう言って注射器をウィップさんは下に捨てた。

「がれすさん…」
「外道め…っ!民間人を巻き込んで違法薬物を使おうとしてたのか…っ」
「……あぁ、うるさい犬たちだ」

 ウィップさんは立ち上がり男達に合図を送る。男達はガレスさん、騎士団に一斉に襲い掛かった。

 次の瞬間、ピカッと眩しい電光が男達を包んだ。バチバチ電流が流れる音がして、男達は全身から煙を上げ次々と倒れた。

「…はぁー、雑魚は引っ込んでてよね」
「れいと、ん…?」
「あーぁ、かわいそうなハジメ…ボロボロじゃないか」

 どうやらレイトンも来ていたらしい。最初のでかい音もレイトンが雷魔法を使って扉を壊した音だったようだ。


「くそ…っ、どうしてこの場所が…」
「ハジメの魔核がわからないようにするんなんて…小賢しい真似するよね」


 少し魔法使えるくらいで調子に乗るな、レイトンはそう言ってウィップさんを拘束した。見えない何かに縛られているウィップさんはバランスを崩して倒れた。
 俺は初めて戦うための魔法を見たが、やはりレイトンはすごい人みたいだ。

 ぼんやりそれを見ているとガレスさんがこちらに走ってきた。

「ハジメ!大丈夫か?!」
「ガレスさ…」
「おい、しっかりしろ…っ」

 ガレスさんは縄を解き、優しく抱きしめてくれた。冷え切った体がガレスさんの熱で暖かくなる。

「かいる、も…たすけてくださ…ぃ」
「わかった…おい!早くそいつらを拘束しろ!」

 カイルを指差しそう伝えると、ガレスさんは部下の人に怒鳴り声を上げた。大丈夫だと安心して、俺の意識はゆっくり暗闇に落ちた。



 *


 カイルは騎士団と魔導師を見て戸惑った。なぜ、この人達が助けに来たのかわからなかったからだ。
 ガレスのことは見たことはあるが、わざわざ部隊を引き連れてくるなんて思いもしなかった。

「何でって顔してるね」
「あぁ…この場所も、ハジメが誘拐されたことも何でわかった」
「ハジメは国にとって大事だからね、今日ハジメ会ったときに追跡魔法をかけたんだ。そしたらいきなりハジメの魔核の跡が追えなくなったからびっくりしたよ」

 レイトンはカイルの縄を解きながら言葉を続けた。レイトンはハジメの異変に気づき、念のため第一騎士団に声をかけ数人連れて来たのだ。団長補佐官であるガレスが、ハジメの名前を聞いた瞬間血相を変えていたのを思い出しレイトンは少し笑った。

「ハジメの魔核探してみたら山奥のここにいて、変だと思って来たらさぁ…ちょっと前から騎士団が目をつけてた犯罪者がハジメを誘拐してたなんてね…君もハジメも大変だったね」
「ありがとな…助けてくれて」
「いいや、見つけるのが遅くなったから君もハジメもボロボロだ」

 魔核の跡を消す魔法はこの国で数人しか使えないほど珍しい魔法だった。それが使えるレイトンも探すことはしたことがなく、大変てこずったのだ。
 黙って聞いていたカイルはレイトンの言葉である言葉が引っかかりそれを口にした。

「なぁ、何でハジメと国が関係あるんだ」
「それは…神子様がハジメに会いたがっててね、だから今度王宮に招待するつもりだよ」
「……何でだ?」
「それはハジメから聞いて!僕からはなぁんにも言えない」

 レイトンはそう言ってカイルの肩を叩きその場を離れた。ハジメが王宮に行く…?どういう展開なのかわからず呆然としてしまう。
 そうしていると、ガレスがハジメを抱いて目の前にやってきた。

「貴様がウィップ・スターンの悪事と関わりがあるのは知っているが、証拠がないからな…今回は見逃してやる」
「…そうかよ」

 ウィップはこれまで上手く証拠を隠滅していたようだが、今回はブルームーンを所持していたのを見られ捕まった。今回はカイルが被害者ということで対処されるようだ。

「不本意だが、貴様も手当てが必要だ…ハジメと共に病院に連れて行ってやる」
「は?俺は動けるから別に…」
「おい、貴様はハジメが心配じゃないのか…!」
「…っ」

 そう言われて、カイルはその腕の中で弱々しく息をしているハジメを見る。ハジメが羽織っている軍服のジャケットから見える肌は所々赤黒く痣になっていた。
 早くついてこい、そう言ったガレスの言葉にカイルは顔を歪めて頷いた。




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