本当に欲しいもの

 

 ハジメさんと過ごす日々は穏やかで、ずっと笑顔でいれた。

「ハジメさん、あれ何?あの大きい野菜!」
「あぁ、あれはカボチャだよ。前の世界とは名前が違った気がする」

 オレの知ってるカボチャとは思えないほど大きい。スラムから少し離れたところにある市場に、毎日ハジメさんと来ている。最初は無理矢理オレが着いてきていたんだけど、今はハジメさんもオレが同行することに何も言わなくなった。
 ハジメさんといると、王宮で生活していた時にはない発見で溢れていた。


 オレがあのカボチャばっかり気にしているから、ハジメさんは苦笑いしながら少し小さめのカボチャを買ってくれた。
 食材や日用品を購入し、いつも通りハジメさんは台所に立つ。料理している姿をリビングから見たり、真横から見るのが好きだった。

「ナギサ君、そんなとこにいると危ないぞ?」
「オレは子供じゃないよ!」

 子供扱いされてムッとしてしまう。包丁や火を使うから危ないとハジメさんは言うけど、それで怪我をするほどオレは子供じゃない。どれだけ注意されようと、魔法のように華麗な手つきで料理をするハジメさんを近くで見たかった。


 出来上がったのはカボチャ、ブロッコリー、鶏肉がゴロゴロ入ったシチューだった。ガーリックトーストも作ってくれて、それと一緒に食べると頬っぺたが落ちそうなくらい美味しい。
 うまーい!そう言いながら食べていると、ハジメさんはティッシュで口元を拭いてくれた。

「おかわりは沢山あるんだし、もっとゆっくり食べろ…って、あーぁ…なんでこんなとこ汚すんだ?」

 口周りを汚すオレを見て笑うハジメさんの眼差しは優しくて、その瞳に見つめられると心臓がうるさくなった。拭いた後、頭を撫でられてオレは身体を震わせる。死んじゃいそうなくらい嬉しい気持ちでいっぱいだった。

「…弟がいたらこんな感じなのか」
「へ…?おとうと…」
「ほら、この前施設の兄ちゃんに似てるって言ってただろ?俺は弟はいないけど、何となく弟がいたらこんな感じなのかって思ってさ」

 ナギサ君が弟だったら嬉しいよ、そう言ってハジメさんは笑った。
 オレも嬉しい…筈なのに胸が軋むように痛い。ハジメさんが兄ちゃんだったらいいのに、そう思っていたのはオレもだった。
 なのに…なんで?なんでこんな悲しい気持ちになるんだ?ズキズキと痛む胸を抑えるように胸元をぎゅっと掴む。

「どうした、どこか痛いのか?」
「っ、痛くない、平気…」
「平気そうには見えないが…」

 心配そうに顔を覗き込むハジメさん。その姿を見て、オレの胸はもっと痛みを訴えてくる。原因不明の痛みに襲われたけど、オレはなんとか美味しいご飯を完食することができた。おかわりはしたかったけど、出来なかった。



 *


 真っ暗な部屋に静かな寝息だけが小さく響いている。
 眠るハジメさんの横顔をジッと見つめながら、何度目かの溜息を吐いた。ハジメさんの家にきてから同じベッドで寝ているけど、ここまで眠れない時なんてなかった。

 眠れなくてハジメさんの顔を見つめては、小さく溜息を吐いてというのをさっきから何度も繰り返している。ハジメさんの顔を改めて見ると、耳の横に黒子があったり、下唇がちょっと厚めだったり、色々なことに気づいた。
 まっすぐに伸びる睫毛は綺麗だった。

「……っ」

 顔をジッと見ているとどんどん下半身に熱が集まって、オレのちんこは何故か勃起してしまった。この世界に来てオナニーはほぼ毎日していたけど、ハジメさんと住んでからは全くしていない。
 ズボンの上から硬いそれを撫でると、じんわり熱さが伝わってくる。ハジメさんを見てこんな勃起させるなんてオレはどうしてしまったんだろう。
 ダメだ、そう思っても一度触れると手は止まらない。

 下着とズボンをずらしてちんこを取り出す。息を乱しながら扱いていると、ハジメさんの顔が此方に向いた。

「っ…ナギサくん…?」
「はじめ、さ…っ」
「まだ起きてたのか…」

 ハジメさんは眠そうに目を擦ろうとして、腕を上げた。その時、手の甲がオレのちんこに触れてしまった。ギョッとハジメさんは目を見開き、オレを見た。

「ごめんなさい、おれ…止まらなくて」
「な、なにして…っ」
「は…っ、ぅ…はじめさ、ん」

 ハジメさんの骨張っていて華奢な手を掴み、オレのちんこを触らせた。ハジメさんの手が自分の硬く勃起したちんこを触ってる、そう思っただけで透明な汁が先っぽからどんどん溢れてきた。
 困惑してるのか切長の目が見開かれて、オレと下を何度も見てを繰り返している。

「っ、気持ちいい…ハジメさんの手」
「ちょっと、待って…とりあえず手を止めてくれないか?」
「むりっ、とまらないから…っ」

 首筋に顔を埋めると石鹸とハジメさんの匂いがした。その匂いを嗅げばもっと硬くなって、先走りがオレとハジメさんの手を汚す。ハジメさんは小さく息を吐くと、ちんこを少しキツく握って擦り始めた。その刺激に腰が震えてしまう。

「や、ばいって…そこ、気持ち良すぎるから…っ」

 片方の手は竿を扱いて、もう片方の手は亀頭を丸く撫でるように刺激された。時折、裏筋も撫でられると甘く痺れるような快感に小さく喘いだ。
 ハジメさんはオレを見つめながら手を動かした。たまに下を確認するのが可愛くて、エロくてちんこがどんどん腫れ上がっていく。何でこの人こんな可愛いの?おかしいよ、そんなことばかり考えながら、目の前の首筋に舌を這わせた。
 ピクリと震えた身体に堪らなくなって、名前を呼びながら吸い付いたり舐めたりを繰り返した。

 人の手、ハジメさんの手に触られるのがこんな気持ちいいなんて知らなかった。
 ハジメさんに扱かれて、オレは呆気なく射精した。

「ナギサくん、これはどういうこと?何でいきなりオナニーなんか…」
「…………」
「若いし、溜まってるのはわかるけど…何も俺の横でしなくても」

 ハジメさんは困ったように眉を下げながら、気まずげにそう言った。いつもならここですぐごめんなさいって謝るし、そうしたかった。でもハジメさんが少しだけ頬を赤くしている姿を見ると、可愛くてめちゃくちゃにしたい、もっと困らせたい、そんな欲求が湧いてきた。首筋じゃなくて、もっと違うところを舐めて触って、エロいことしたらハジメさんはどうなるんだろう。
 心臓はずっとドキドキうるさい。身体は燃えるように熱くて、それを冷ますように何度か息を吐きだした。
 
 こんな気持ちになるのは初めてだった。

 また勃ち上がりだしたモノを、ハジメさんの細い腰に擦り付ける。びくりと身体を震わせたハジメさんは、信じられないものを見るような顔でこちらを見た。


「なっ…なに、して…」


 ハジメさんは兄ちゃんじゃない。ハジメさんと兄弟なんかなりたくない。
 さっき感じたモヤモヤの正体がやっとわかった。


「…ハジメさんとエッチしたい」


 オレはこの人の彼氏になりたいんだ。



*前 | 次#