バケモノの闇

 

 王様が覆い被さってきて、暗い影が俺を飲み込んでいく。腕の中から逃げ出そうと分厚い胸板を何度も押し返した。
 彫刻のような筋肉は見掛け倒しではないのかびくともしない。

「そんな軟弱な腕でどう抵抗するつもりだ?」
「うるさいっ、アンタはおかしい…っ、異常だ!」

 こんな非道なことができるなんて、人間じゃない。そう叫べば、グッと温度が下がったような気がした。
 恐る恐る上を見上げれば、ゾッとするほど表情のない男が俺を見下ろしていた。王様であるはずだ、王様なはずなのに全く違う人に見えるほど表情に全く色がない。

「…もう一度言え、俺がなんだって?」
「に、…人間じゃ、ない…っ」

 正直に答えれば、左頬に衝撃が走った。ジンジンと熱を持つ頬、切れたのか口端から血の味がした。
 打たれたのか、どこか俺は他人事のようにそう思った。王様は俺を平手打ちした癖に、信じられない程優しい手つきで顎を持ち上げる。

「そうだ、お前の言う通り俺は人じゃない」


 ーーーバケモノだ。

 そう言って笑う王様の目は何の光もなかった。ただその瞳の奥には、此方が堕ちてしまいそうなほど真っ暗な闇が広がっていた。




 *



 どれだけの時間が過ぎたのか、もうわからない。

「あっ、ぁ…っも、やめ……っ♡」
「貧相な身体だが、ここまで淫乱だと面白いな…ここがいいんだろう?」
「っ、ひ、ぃ…っ♡」

 後孔にある痼りをグッと軽く押されただけで、鈴口から勢いのない体液が溢れた。嫌だ、もうやめてくれ、心中にいる俺が叫んでいる。憎いと思っていた男に触られ吐き気がするほど嫌なのに、男の言う通り淫乱な身体は気持ちと相反して喜んでいた。
 アナル以外の性感帯は触られてもいない。それなのに俺は何度も精液を吐き出した。


「辛いか?」
「つらい…っ、辛いからもぅ、っ♡あっ、ああっ、ひ、ぃ、あっ、あぁ…っ」
「奥も気持ちがいいのか、さすが淫売だな」


 長い指先が奥を擽る様に撫でた。甘い刺激が身体を駆け巡り、俺はまた軽く達した。
 王様はそんな俺を見て喉で笑うと、指を抜いた。そのまま肩を跨ぐ様な体勢になり、半勃ちのそれを顔前に持ってくる。まだ最大サイズまでいってないのに、すでに長大なそれに顔が青ざめた。グッと髪を掴まれ、熱い先端が俺の顔に擦り付けられる。


「お前を可愛いとも美しいとも思わないが…絶望した顔は酷くそそられる」
「ぅ…っ、俺はアンタの顔見てると、虫唾が走る…っぁ、ぐ…っ」
「くく…虫唾が走る俺のペニスを口に入れられてどうだ?」

 口の中に無理矢理入ってきたそれに俺はギョッとして、歯が少し当たってしまう。すると見えない何かにまた首を絞められ、息苦しさに目の前が真っ赤に歪む。

「奥まで飲み込め…そうだ…」
「ぉWっ、ぐ…っ、ぅ…っ」
「っ、キツいな…お前は喉も性器なのか?」

 馬鹿にしたように笑われ俺は悔しさで瞳に涙を滲ませた。喉奥を突くように出し入れされ苦しさに何度もえずいた。それが気持ちいいのか口の中のものはどんどん膨れ上がっていく。腫れた先っぽが時折上顎を擦るとぞくりと快感が広がる。嫌なのに慣れてしまった俺の身体は快感を拾い上げていた。
 王様はちんぽを口から抜いて、見せつけるように濡れたそれを扱いた。唾液か先走りかわからないものが頬に垂れる。


「背後を向け」


 何で俺が言うこと聞かなきゃいけないんだ、そう思ったが恐怖で震える身体はゆっくり四つん這いの体勢をとった。先っぽがアナルの縁に触れた瞬間そこはいやらしく吸い付いた。それを見たのか王様は馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

「っ、ひぃ、ぃ、ぁっ、あ、〜〜〜っ」
「く、締め付けるな。入らないだろうが…この淫乱…っ」
「あWっ、ぁっ♡たたくな、ぁっ、う、っ、あぁ、あっ♡」

 叱るように強く尻を叩かれ俺は首を逸らし喘いだ。散々慣らされたアナルは嬉しげに長大なちんぽを飲み込んだ。ずりずりと肉壁を擦り上げながら激しくピストンされて、腕の力が抜けて上体を崩してしまう。腕を背後に引かれまた上体を起こされるが、不安定なまま俺は揺さぶられるように犯された。

 悔しいほど気持ちが良かった。


「は、ぁっ、ひ、ぃ…♡あっ、あっ、ぉ、ぉWっ♡あ、んっ、あっ、あぁ…っ♡」
「どうだ?嫌いな俺に犯されて…」
「さい、あく…っ、あぁっ、あっ、♡そこ、やだ…っ、う、ぅ♡」

 少し膨らんだ腹を優しく押されてビリビリとした快感が背筋に走った。最奥と前立腺、俺のいいところが分かっているのか嫌なほどそこばかり擦り上げられた。グッと肩に腕を回し、起こされると左耳に噛みつかれた。鋭い痛みを感じた瞬間、ガクッと腰が一瞬抜けてしまった。


「……前を触らずに達することができるのか」
「ふ、っく…っ、はぁ…っ、ぁっ♡」

 どろどろと勢いのない射精を見た王様は感心したように呟いた。イッたからやめて欲しいのに王様の腰は止まらず、むしろ激しさを増した。手を首の前で組み、そのまま背後に引かれ犯される。グッと首が締まり頭に少しだけ血が上った。死ぬほどではないが苦しくて辛いこの体勢に俺は涙を流した。
 先っぽが結腸の入り口を何度も叩き、抉る度に水のような体液がちんぽから噴き上がった。

「ぅ、ぐ……っ」
「ぁ、あ、っ、あ……っ♡」


 中に熱いものが吐き出された瞬間、首を解放され俺の身体はそのままベッドに沈んだ。奥に擦り付けるかのようにぐっぐっと腰を押しつけられ、俺はまた小さく喘ぎ声を溢した。




 *




 うっすらとしたモヤがあたりに広がっている。
 俺はぼーっとしながらその中をまっすぐ歩いていた。暫くすると草木が生い茂っているところに出てきた。なんだ、ここ…そう思っていると木の下に少年が本を片手に腰を下ろしている姿が見えた。
 綺麗な金髪が風に靡いている。綺麗だなと素直にそう思ったが、少年は無表情のまま前を見つめていた。冷たく人形のようにも見えるその顔はどこか見覚えがあった。どこだったか、そう思って頭を使うが全く出てこない。

 すると、どこからか男の声が聞こえてきた。


「ーー殿下!こんなとこにいらしたんですね」

 笑みを浮かべて走ってきた男を見て俺は息を詰めた。頭が混乱している。だって、この男は…


「ユアンか。俺はあの講師に剣術は教わりたくない」
「……我儘はいけませんよ。先生がお待ちしております、行きましょう」
「嫌だ!剣術はお前に教わりたいんだ、あんな男は俺に必要ない!」

 男…ユアンは眉を下げ、困ったような顔で笑っている。金髪の短い髪、精悍な顔立ちに少し生えた髭…俺が会ったときよりも少し若い姿のユアンがそこにいる。じゃあ、この少年は…俺は眉を吊り上げ怒っている少年に目を向ける。


「ユージン殿下、俺よりもあの先生の方が教えるのは上手いんですよ。さ、早く戻りましょう。殿下を連れ戻さないと俺が怒られちまう」
「嫌だ…ユアンがいい。俺の専属騎士なのだから、別に…構わないだろう」

 ユージン殿下と呼ばれた少年は口をへの字に曲げてそっぽを向いた。そうか、この少年はあの国王様なのか…俺は衝撃の事実に呆然と立ち尽くすしかなかった。ユアンもこの国王も今とは随分印象が違う。幼い王様はともかく、ユアンに関しては爽やかすぎて人格が変わったのかと思うほどだった。

「誰も俺に期待なんてしていない…強くなってほしいなんて思ってないのに」
「そんなこと誰も思っていません」
「嘘だ!昨日だって、パトリシアが…っ」
「パトリシア殿が何ですか?」

 ユージンは口を黙み、顔を歪ませながら俯いた。ユアンはそんな様子の少年を見て眉間に皺を寄せ、細く頼りない肩にそっと触れた。


「……俺は殿下に力をつけて強くなってもらいたいんです。周りに何を言われてもそいつらを蹴散らせばいいんですよ。ユージン殿下は逞しく立派な国王になれる」
「……呪われた、女の子供でもか…っ」
「ユージン殿下…」


 俯く顔から雫が零れ落ちるのが見えた。声を押し殺しなく後ろ姿がなんとも痛ましい。俺はジッとその2人を見つめることしかできなかった。沈黙と鼻を啜る音があたりに響いた。


「今日は俺も授業に参加します。久しぶりに手合わせしましょう」
「………」
「さ、涙を拭いて…そのままではまた馬鹿にされてしまいますよ?」

 ユアンの言葉を聞いて乱暴に袖で顔を拭うユージン。前を睨みつける少年は先程の弱々しい姿とは全く違っていた。小さな拳でユアンの腕を殴りつけ、鼻を鳴らす。


「ユアン、俺に手加減するなよ」
「わかっております」

 ユアン小さく笑い頷いた。
 大きな背中と二回り小さな背中が去っていくのを俺は見送った。
 衝撃的な出来事の連続で頭がついていけない。何でこんなものを見ているのかもわからない。ユアンと国王の過去で間違いないのだろうか。様々な疑問が頭に浮かんでは消える。
 何もわからない中、ユージンが言った「呪われた女の子供」その言葉が嫌に頭の中をぐるぐる回って離れなかった。


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