第15話

 麻也はふらつきながらも優馬に駆け寄り、腕を掴む。


「もういいよ、優馬!」
「麻也…」
「もういいから…」

 泣きながらそう言う麻也を見て、優馬は顔を歪めた。

「ーーっ麻也、それ」

 優馬が麻也の足元を見て、目を見開く。麻也はそこを見ると血が伝っていた。どうやら、無理やり指を入れられ少し裂けたらしい。
 優馬はまた拳を振り上げるが、今度こそ健吾やみんなに止められていた。





「優馬、助けてくれてありがとう」

 溜まり場で手当てを受けた後、麻也と優馬以外のみんなは後始末があるからと外に出た。
 麻也が隣に座る優馬に頭をさげると、優馬は首を振って否定する。

「ごめんな、俺のせいで…巻き込んじまった」
「優馬が悪いわけじゃないよ…僕にも原因があるから」
「麻也にはねーよ、俺が成南のやつらに…」
「あるんだ!あるんだよ…っ」

 強くそう言った麻也に、優馬は目を見開く。

「僕も鷹人と関係があるから」
「…どういうことだよ」

 優馬を見つめる麻也の瞳には涙が浮かんでいた。

「ーー僕、鷹人のセフレなんだ」
「…っ?!」
「優馬のこともあったと思うけど、あの人達は鷹人のセフレの僕も気に入らなかったんだ。だから、優馬だけが悪いわけじゃない」

 僕にも原因があるんだよ、そう麻也は言った。優馬はただ言葉を失った。
 そんな様子が辛くて、麻也は唇を噛みしめ俯向く。

「ーー麻也は…鷹人が好きなのか?」
「好き、だったよ」

 そう、好きだった。
 麻也は鷹人が好きだった。だが、今は違うと思っている。
 男に犯されそうになったとき、浮かんだのは鷹人ではなくーー優馬だった。忘れかけていた楽しいという気持ちや、幸せを麻也に与えてくれた優馬だった。

 今、麻也の心の中にいるのは優馬だ。


「僕はずっと、鷹人の側にいたかった。でも…今は違う」
「麻也…」
「僕は、僕は優馬と一緒にいたい…優馬が好きなんだ」

 麻也の目からぽたぽたと滴が溢れた。優馬は麻也の腕を引き、抱きしめた。
 キツく抱きしめて、口を開いた。

「ーー俺も、麻也と一緒にいたい」
「優馬…っ」

 ”麻也、好きだよ”

 そう優しい声色で、微笑みながら優馬は言った。麻也はまさか受け入れてくれるとは思っていなくて、余計涙が溢れた。

「ははっ、そんな泣くなよ」
「だって…だって、嬉しくて…っ」
「かわいーなぁ、麻也は」

 よしよし、と優馬は泣き[D:22118]る麻也の頭を優しく撫でた。嬉しい、と泣く麻也に愛しさを感じた。
 また、優馬はぎゅっと抱きしめた。


「鷹人、むかつくなー」
「ぐす…っ、なんで?」
「こんな可愛い麻也に愛されてたなんて。むかつくよ、マジで」

 腕を緩め、優馬は麻也の顔を覗き込んだ。

「俺、麻也のこと大切にするから…」
「うん…僕も、優馬を大切にする」

 見つめ合いながら2人はくすくす笑った。

「…なんか照れるな」
「…だね」

 優馬は優しく頬を撫でて、そっと口付けた。
 麻也は驚きながらも、優馬に身を任せ目を閉じた。
 唇は一瞬で離れた。

「…もっとしていいか?」
「ふふっ…いーよ」

 また唇が触れ合う。今度は深くキスを交わした。
 麻也はこんな幸せでいいのか、怖くなった。でも、この幸せを手放すことはできない。麻也は胸に広がる暖かさを感じ瞳を閉じた。



 ーーそして麻也はこの新しい恋のために、かつての報われなかった恋に終止符を打たなければならなかった。


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