第16話
ーーバキッ!
骨がぶつかるような、そんな音が部屋に響いた。
「た、鷹人さん…?」
殴られた男ーーカズマは、戸惑いの視線を殴った男、鷹人に向けた。
鷹人は冷ややかな、それでいて燃えるような怒りを含んだ瞳でカズマを見た。
「ーー誰が麻也に手ェ出していいっつった」
「そ、そんな…好きにしていいって!」
「俺が許可したのは優馬を殺ることだけだ。…余計なことしやがって」
鷹人はカズマの腹を蹴り上げる。怒りを吐き出すように息を吐き、煙草を取り出した。
カズマは咳き込みながら、鷹人を見上げる。
「ぁ、あんなやつ…どうでもいいでしょう?!まさか…好きとか、ないですよね?」
「……」
「ねぇ、そうですよね?鷹人さん」
歪んだ笑みを浮かべたカズマを見下ろし、鷹人は煙草に火をつけ、たっぷり吸った。
「テメェに話すことはねぇ。…失せろ」
紫煙を吐き出しながらそう言えば、カズマはふらつきながらも立ち上がり、鷹人を見てから部屋から出ていった。
鷹人はまた煙草に口をつけた。
ーーまさか…好きとか、ないですよね?
さっきのカズマの台詞が頭に響いた。
鷹人は何故、麻也に手を出したのか未だにわからないでいた。男に告白されたのが麻也が初めてで、好奇心が湧いたこともあると思うが、麻也の柔らかい雰囲気が気に入ったのかもしれない。
現に、鷹人は麻也の側にいると落ち着いた。今まで周りにはそんな奴はいなかったから、麻也を気に入ってはいた。
以前琉衣という後輩を抱いたが、あれ以降何もない。嫌いになった訳ではないが、思っていたよりよくなかった。麻也のほうがいい、そう感じた。
ーー麻也を好きなのだろうか。
鷹人は考える。
あの柔らかい、落ち着く空気を優馬は感じているのだろうか…それは許せない。
アレは自分のモノだ。鷹人はそう思ったことに驚いた。
これは、執着…鷹人は麻也に執着していることにきづいた。この執着がカズマの言う『好き』なのなら、間違いなくそうだ。
自分は麻也が好きーー鷹人はそれがしっくりきた。麻也が優馬といると聞いた時に感じた苛立ち、麻也を犯そうとしたカズマに対する怒り…それは他のセフレには感じないことだ。感じた気持ちは自分が麻也を愛していたからなのだと、鷹人は気づいた。
好きだと、鷹人が告げたら麻也はどんな反応をするだろうか。笑顔を浮かべて、泣くだろうか…、驚くだろうか…
「ーー悪くねぇな」
鷹人は無意識に笑みを浮かべていた。
短くなった煙草を灰皿に擦りつけると、スマホが鳴る。取ってみれば、麻也からの着信だった。
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