最終話
麻也は久しぶりにDIVAに来ていた。まだ昼だからかあまり人はいないが、これから鷹人にに会うため少し緊張していた。
奥に行き、ヤリ部屋に入る。中では、鷹人はソファに座り煙草を吹かしていた。
「…よぉ」
「ごめんね、いきなり会いたいなんて言って」
「いや、大丈夫だ。…それより、前はカズマが悪かった」
”前”とは麻也が強姦されかけた時のことだろうか、そう思い麻也は、大丈夫だったから…と言って微笑んだ。
「あのね、話したいことがあるんだ」
「…俺も麻也に話したいことがある」
「そっか…僕から話していい?」
ああ、と鷹人は頷いた。
麻也は少し息を吐き、鷹人に向き直る。
「ーー僕、もう此処には来ないから」
「……?!」
鷹人は目を見開き、麻也を見つめた。暫く沈黙が続き、煙草の火を消して鷹人が口を開く。
「……優馬、か」
コクリと頷いた麻也を見て、鷹人はゆっくり息を吐いた。
「優馬と一緒にいることを決めたんだ。だから、鷹人とはしない」
「…本気か?」
「本気だよ」
こんな冗談僕は言えない、そう麻也は言った。
鷹人はいきなり麻也の腕を掴み、ベッドに叩きつけるように押し倒した。麻也は腕を解こうにも、力が強すぎて解くことはできない。
「ちょっと、やだ…っ、離してっ!」
「…お前は俺が好きなんじゃねえのかよ?」
「たか、ひと…?」
仄暗い光を宿した瞳が麻也を見つめる。今まで見たことがない鷹人の表情に、麻也は恐怖を感じた。
唖然としていると、無理やりキスをされそうになり、必死に抵抗する。
「やめて、やめてよっ!!」
「…っ!?」
力いっぱい腕を振りほどき、鷹人を突き飛ばした。あまり強い力ではなかったが、麻也の行動に鷹人は唖然とした
麻也は鷹人から距離を取り、ぎゅっと手を握り締める。
「僕は、優馬が好きなんだ」
「あいつの何処がいいんだ、俺の…」
鷹人はそう言いかけてく、口を止めた。
麻也は少し目を伏せてから、視線を鷹人に戻した。
「……鷹人といると苦しかった。何を考えているのか…分からなくて、ずっと苦しかったよ」
「……」
「それでも鷹人が好きだったから一緒に居られた…セフレでも、男で抱かれるのは僕だけだって思ってたから」
麻也はまた涙を流した。
ぎゅっと拳を握り、続けて口を開いた。
「特別だって、思って…でも、鷹人は僕以外の男を抱いた」
「それは…」
「鷹人にとってはただの遊びだったのかもしれない…けど、僕はそんな風に思えなかった」
ぽたぽたと落ちた滴がシーツにシミを作る。
鷹人は何も言わず、ただ麻也の言葉に耳を傾けた。
「僕は特別じゃなくなったんだって…」
自分は特別、そう思うことで持っていた心が壊れた。麻也はあの日を思い出し、少し笑みを浮かべた。
「琉衣くんを抱いてる鷹人を見た日に、優馬と出会ったんだ」
「…っ」
「優馬はすごく優しかった、弱ってたからかもしれないけど…そう感じたよ」
泣きながら笑う麻也に鷹人は少し顔を歪めた。
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