第5話

 
 錆びた扉を開けば、でかい怒鳴り声が響いた。


「ゴラァ!!優馬、テメェどこほっつき歩いてやがった!…って、ん?」

 派手な金髪坊主の男は、優馬におぶられている麻也を見て止まった。麻也はバッチリ目が合って、気まずく思いながら小さく会釈する。

「まあまあ、そんな怒んなって!」
「お前っ、それどうしたんだよ!?傷だらけじゃねえか!」

 金髪坊主は、麻也を指差しまた優馬に怒鳴りかかる。優馬は苦笑いしながら中に進み、奥に置かれたソファーに麻也を下ろした。
 麻也はすごい剣幕の金髪坊主に少し驚いていた。
 周りの仲間も、なんだなんだとソファーの近くに集まる。


「あー、とりあず…健吾(けんご)、救急箱持ってきて」


 優馬は金髪坊主ーー健吾にそう言った。







「い……ったい!」
「そりゃー、痛えよ。血出てるし」

 優馬は痛がる麻也の切れた口元に消毒液を付けたティッシュを押し付け、けたけた可笑しそうに笑った。

 ーーあれから、健吾は慌ただしく救急箱を用意し持ってきてくれた。
 優馬は麻也をみんなに紹介し、手当てを始めた。

 そんな中で、手当てをされてる麻也は、痛みに悶えながらも少し戸惑っていた。

 麻也の知る”溜まり場”は、こんなところじゃない。みんな冷たく、鷹人を崇拝し、麻也を蔑む。ーーだから、麻也は戸惑った。

 ーーーここの溜まり場の空気に。


「はい、麻也さん!オレンジジュースっす!」
「馬鹿野郎!オレンジジュースなんかガキみてーな飲みもんだすなよ!麻也さんは大学生だぞ?酒でいーんだよ」
「馬鹿はテメェだ、テツ!怪我してんのに酒なんか出すわけねぇだろうが」

 上から、髪をピンクに染め、前髪をちょんまげのように結んだ彦星(ひこぼし)。次に声を上げたのは、健吾のように金髪坊主頭のテツこと鉄信(てつのぶ)。
 最後に、健吾が声を上げた。
 因みにテツは言われてすぐに健吾に拳骨を食らわされた。

 麻也は戸惑いながらも、嬉しく思った。
 あそこでは、こんなことはなかった。
 ーーこんな、こんな暖かく迎えてくれはしなかった。


「ーーー麻也?どした?」
「え!?いや、なんでもないよ!」

 優馬に声をかけられ、はっとした。
 いつの間にか顔の手当ては終わっていて、麻也は驚いた。

「やっぱ手馴れてるね」
「まー、喧嘩するし…はい、上の服脱いで!腹も怪我してんだから!」
「わっ、いきなり脱がさないでよ!」

 ごめんごめん、と優馬は笑った。
 怒りながらも麻也も笑い、服を脱ぐ。5月の終わりだからか、寒くはなかった。

「……麻也、これ結構痛かったんじゃね?」
「いや、結構じゃねー。相当だろ、こりゃあ」

 優馬も健吾も、麻也の腹にある痣に顔を歪ませた。
 すぐに優馬は包帯を巻き、彦星に氷を持って来させた。

「これでちょっとはマシになる、と思う」
「うん、ありがとう…優馬」

 麻也がそう言って微笑むと、優馬はよしよしと頭を撫でた。

「…っ!?」

 麻也はいきなりの優馬の行動に驚いた。

「どうしたの?」
「ん?…麻也はこんなちっこいのによく我慢したなって」
「…ちっこいは余計だよ」
「ははっ!だって、俺の胸くらいじゃん?」

 麻也は笑う優馬の胸を軽く拳で殴った。
 悔しいが、確かに優馬の胸くらいしか身長はない。
 優馬はそんな麻也を優しい眼差しで見つめ、また頭を撫でた。




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