第9話

「あのさ、鷹人」


 ”もし、今日僕が来れなかったら琉衣くん呼んでたの?”


 鷹人の顔を見ず、麻也はそう言った。ーー自分は代わりがきくものではないのか、きくものなのか確認したかった。
 麻也は鷹人の首元を見つめながら、返事を待つ。

 鷹人の口が開く。


「ーーそうだな、男とヤりたい気分だったから」


 麻也はこの前のようにはならなかった。絶望したわけでもなく、怒りが湧いたわけでもない。ただ、自分はそれだけの存在なのだと、受け止めた。
 恐らく鷹人は琉衣もそのようにしか思っていない、麻也と琉衣は同じだ。

 ーー麻也はまた胸が少し凍りついたような、気がした。







 DIVAを出ると、6月の湿った生温い空気に包まれた。
 麻也は繁華街を歩きながらスマホを取り出す。画面に表示された通知を見て、慌ててトークを開いた。


『おーい!麻也ちゃーん!』
『ぶっちすんなよー』
『まやー』

 その後には犬が泣いてるスタンプが続いている。全て優馬からだった。
 犬が優馬に見えて麻也はクスリと笑った。

 ーー会いたいなあ。

 ふとそう思った。
 画面を操作し、優馬に電話をかけた。


『ーーはい』
「もしもし、僕だけど」
『…麻也、何してたんだよー』

 優しい声に麻也は無意識にほっと、息を吐いた。

「ごめん、ちょっと用事があって…返事できなかった」
『…なら別にいーけどさ、なんかあったのかって心配した。麻也、いつもすぐ返事くれるから』
「心配させちゃってごめんね、ほんと忙しかっただけだから」
『おう、何もなくてよかった」

 麻也は繁華街を出たところで優馬に言った。


「今から会いたい」
『ん?俺と?』
「うん…だめかな」
『だめじゃねーよ!今どこにいんの?」

 優馬に今いる場所を言って、電話を切った。近くにある店の壁にもたれながら、麻也はどんよりとした空を見つめた。

「…雨降りそうだな」

 そう、小さく呟いた。


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