悪魔のお気に入り



悪魔と奴隷の男のお話。
※人間×人外 


 
 そいつはボロボロだった。

 そいつは娼婦の女から生まれ幼い時に捨てられた。奴隷として拾われた後、男達の慰み者にされ、大きく成長した今は過度な労働をしている。背は高く骨格は太いため、まともな食事を食べていればそれは逞しい身体になっていただろう。

「まーたその人間を見ているのか?」
「…ん?うん、暇つぶしにね」
「そんなの見て何が面白いんだか」

 ボロボロの鏡に映るそれを見ていると黒ずくめの美しい男が声をかけてきた。僕は一瞬だけそいつに目をやりまた鏡に目線を戻した。
 人間から僕たちは悪魔と呼ばれている存在だ。声をかけてきた男も同じく悪魔である。僕たちは気まぐれに天界に降りて人間と戯れたり、たまに仲の悪い天使たちと小競り合いをする。仕事もない僕たちは常に退屈しているのだ。

「そんなハリスはまた人間の雌を誑かしてきたの?僕より悪趣味だよ」
「そんなことはないさ。人間の女は面白いぞ、精力は美味しいし身体は柔らかい」
「色魔でもないのによくそんなことできるよね」

 お前は顔が美しくないから人間を誑かすこともできないものな、そうハリスは意地の悪い顔で言った。僕はそんなハリスの言葉を鼻で笑う。
 僕は美しい顔が多い悪魔の中でも珍しいほど特徴のない顔だった。しいてあげるならば特徴は吸血鬼のように赤い唇と、昔から不健康そうだと言われ続けている青白い肌ぐらいだろうか。
 確かにハリスのように綺麗であれば同じような遊びをしていたかもしれないが、僕はそんな遊びに興味はない。

「この人間もかなり大きくなったな」
「そうだね、この前まで赤ん坊だったのに…本当に人間は早く成長する」

 鏡に映る男が生まれてからいまの今までのことをずっと見てきた。何事にも興味が湧かなかった僕が飽きずに見ているから、周りの友人は皆ハリスのような反応をする。

「こいつ顔が綺麗だから、こんな奴隷でなければハリスより美しい男になってただろうね」
「まさか!冗談だろう?人間がこの俺を超えられる訳がない!」

 芝居がかった大袈裟な素振り否定するハリスを見ながら、冗談じゃないんだけど、と内心思う。僕は一所懸命働く男を眺めるのをやめ、鏡から離れる。

「ハリスが煩いから僕は少し寝てくるよ」
「俺は煩くないぞ?相変わらず冷たい男だな、お前は」

 ハリスとそこで別れて僕は自分の家に帰ることにした。


 *


 少し寝てから、いつものように飼っているケルベロスの散歩をすることにした。僕が飼っているケルベロスは大きく立派だが大人しく、僕にもよく懐いてくれている。ちなみに名前はクロだ、この名前は色が黒いからと言う安易な理由でつけた。
 リードを引きながらふとあの奴隷を見に行くかと思い、クロを連れて下界を移す鏡の場所へ向かった。


 下界はもう夜だろうか、僕はそう思いながら鏡の表面を揺らした。しかし、映し出されたそれを見て僕は目を見開く。

 なんとあの奴隷が縛られて刃物を突きつけられているではないか。まさか今死ぬのか?いや、そんなはずはない。だって担当の死神は現れていないのだから。

 僕は慌ててこの奴隷の死神の元へ飛んだ。
 その死神は下界と死界につながる場所にいた。相変わらず隈の酷い顔をしているがそんなことは今はどうでもいい。

「ちょっと!あの男はまだ死なないよね!?」
「なっ、なんだよ、いきなり!」
「さっさと答えろ、死神」

 いきなり現れた僕にその死神は驚いた顔をしたが、やれやれと溜息を吐いた。

「あの男って奴隷の人間か?まだ死期ではないが、運命は変わるからわからない」
「…じゃあ死ぬかもしれないってこと?」
「そうだ。全く俺の仕事が増えるからやめて欲しいがな」

 死神は疲労感の溢れた顔を歪めて僕を見た。可愛い僕のケルベロスが唸っているがどうせ噛まれてもこの死神はどうもしないだろう。

「あの男を死なせたくなければお前がその運命を変えてやればいい」
「…………」
「なんてな、冗談だ、ぜ…」

 死神が言い切る前に僕はそこから飛んだ。

「…嘘だろ?マジで助けに行ったのかよ、あの悪魔」

 誰もいない空間を見てそう死神が呟いていたが、僕にはそんな声が届くはずもなかった。




「なっ、なんだテメェは!!」
「うるさい、散れ」

 僕は喚く人間を吹き飛ばした。汚い唾液が顔にかかったことに気づき顔を歪める。ポケットからハンカチを取り出ししっかり拭った。
 ここ最近で1番不快な気分にされた。

「ふざけんじゃねぇぞ!このばけも、ぐあああっ!」

 他の人間もいきなり現れた僕に襲い掛かるが、先程の奴と同じ様に吹き飛ばしていく。倒れた人間にクロが飛びかかろうとしているがリードを引いて抑える。

「あ、なたは一体…っ」


 いつも鏡越しで見ていた男が僕を見て唖然としている。サファイアのような瞳に見つめられるのは悪い気はせず、何故か気分が高揚した。
 男は酷く殴られたのか身体中に痣を作っていた。鞭にも打たれたのか所々ミミズ腫れができている。それは明らかにいつもより折檻が酷かったことを物語っていた。一気に面白くない気持ちになる。
 僕の暇つぶしを勝手に殺すのは許さない。

「あいつらどうしようか、殺す?それともこの建物ごとぶっ壊そうか。君はどうしたい?」
「へ?あ、あの…」
「あぁ…もちろん対価はもらう。でもその代わり君の願いは何でも叶えてあげるよ」

 僕の言葉をなかなか理解できないのか男はあ、う、と言葉にならない声を漏らしていた。牢屋の床に膝をつき男を縛る縄を解く。
 男の手を取ると、その手は爪を剥がされたのか血塗れだった。見苦しくて男の傷を治してやると、余計に混乱しているようだった。

「傷が治ってる…!?あ、あなたは一体何者なのですか?」
「…悪魔、と言ったらわかる?」
「あ、あ、悪魔!?」

 ありえない、そんな…男はそう言って瞳を揺らした。僕は早くこの臭い場所から去りたくて仕方がなかったが、まだこの男の願いを聞いていない。

「何でも叶えてあげるから早く願いを言ってくれないかな」
「…どうして叶えてくれるのですか?」
「どうしてって…君の魂を僕のものにしたいから」

 勝手に死なれたら困るんだよね、僕はそう言いながら男の顔を見つめる。やはり痩せこけているが男の顔はとても美しい。悪魔は美しいものが大好きなのである。
 男は少し顔を青ざめさせながら口を開いた。

「俺はもう奴隷は嫌だ…っ、自由になりたいんだ」
「わかった、それが願いだね」
「へ?!お、俺を奴隷にするんじゃないんですか?」

 僕はその言葉を聞いて首を傾げる。

「僕には優秀なペットがいるし、奴隷なんていらない」
「俺をあんたのものにするんだろう?それは奴隷と一緒なんじゃ…」
「君が勝手に死んだら困るから君の魂を僕のものにするだけ、奴隷にするつもりはない。別に悪い話じゃないでしょ?」

 戸惑いながらも男は頷いた。まあ僕のものになったら生かすも殺すも僕の気持ちで決まるのだが、この男はわからないようだ。僕はすっと男に手を差し出す。

「もう一度聞くよ、君の願いはなに?」
「俺は…奴隷をやめたい、自由な生活がほしい…っ」


 僕の体から放出された魔力が黒い影のようにのび周りを囲む。震える男の手が僕の手を掴むと、手の甲に模様が浮かび上がり男の全身の肌を這うように埋めていく。


「ーーじゃあ僕と契約しようか、エヴァン」
「はい…俺の魂を貴方に…」

 黒い影はニンマリと笑い、当たりにケタケタと笑い声を響かせた。


 *


「サシャ、ただいま」
「あぁ…おかえり」

 寝ていたベッドから男は起き上がって、俺にそう返事を返した。恐ろしい顔をした、頭が3つある犬からリードを外す。犬は自由になった体を揺らし、俺から離れて部屋の端に向かった。どうやら水を飲みにいくらしい。

 怖いけれど慣れると可愛く見えてくる。微笑んでいると目の前に、先程はベッドにいた男が現れた。頭に山羊の角を生やし、尻から生えた尻尾はユラユラ揺れている。それに血管が透けるほどに白い肌、光も入らないような真っ黒な瞳に赤い唇。
 俺の目の前にいる、この小柄でごく普通の顔をした男は悪魔である。

 何年か前まで俺は奴隷だった。あれは、主人の妻は無理やり俺と関係を保とうとした。それを見た主人はブチギレ俺は殺されそうになったのだ。
 そんな俺を悪魔、サシャは助けてくれて魂と引き換えに俺は自由を手に入れた。それからサシャは俺によく会いに来て、今では山小屋で一緒に暮らしている。
 気まぐれに俺にちょっかいをかけ、寝たい時に寝て、愛犬のクロと遊ぶ。悪魔のはずなのにサシャは全く悪魔らしくなかった。最初は恐れていたがだんだんとこの悪魔を可愛いと思うようになっていった。
 共に生活しているクロは凶暴だが、サシャが教育してくれたおかげか俺は噛まれたことはない。

 突っ立って俺を見上げていた小さい悪魔は、俺の胸をペタペタ触り始めた。

「また筋肉がついたの?この前触ったときより盛り上がってる」
「さっき鍛錬したから筋肉が大きくなってるのかもしれない…嫌か?」

 自由になってから俺は強くなるために身体を鍛えた。ガリガリだった身体が今は硬い筋肉で覆われている。美しいものが好きなサシャはこんな筋肉ダルマのような俺を嫌がるかもしれない。
 かつて見た嫌悪感丸出しのサシャの顔を思い出し、胸がざわついた。

「筋肉がありすぎるのは美しくないけど、エヴァンは似合ってるからいいよ」
「そうか、ならよかった…」
「なに、契約を切られると思ったの?」

 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべたサシャの白い頬に手を当てる。そっと指を滑らすと、それは絹のように滑らかな肌だと改めて思った。俺のカサついた指なんかで触れたら傷がついてしまいそうだ。

 ジッと見つめ合うと黒い瞳に吸い込まれそうになる。瞳から赤い濡れたような唇に目をやれば、もう耐えられなかった。

「んっ、ん…っ」
「は、ぁ…サシャ…」

 唇にむしゃぶりつき強引に舌をからめとる。サシャは体を時折ビクつかせながら俺に縋り付いてきた。顔を少し赤くしながら必死に俺に合わせてくれている。
 俺がサシャに想いを寄せ始めたのほんの一年ほど前だ。気まぐれな猫のような悪魔が愛しくて仕方がなかった。堪らず俺は手を出してしまったが、サシャは俺の気持ちを受け入れてくれたのだ。

「ん、人間はす、ぐ…、発情するんだね…っ」
「サシャが可愛すぎるから仕方ないだろう」
「ほんとに物好きだね…っ、ひぁ!?」

 サシャの肉付きの悪い尻を揉みしだくと俺はあることに気がついた。

「また下着着てないんだな…いやらしい悪魔だ」
「だって必要な、あっ、あぁっ!だめっ、そんな…っ」

 悪魔は下着を履かないのか、サシャが履かない主義なのかはわからない。何度も下着を履けと言っているのにこの悪魔は全く聞いてくれないのだ。
 少しむかついて布越しに穴を指の腹で撫で回した。ひくついたそこはキュッキュッと俺の指に噛み付いてくる。身体の熱が膨張したのを感じ、俺はサシャを抱き上げ寝室に向かった。

 サシャの服を全て脱がした後、俺も服を脱いだ。奴隷時代はこんな行為が嫌で仕方がなかった。だが、今はこれを毎日のようにしていて、何回しても熱は治らないのだ。
 サシャの可愛らしい乳首に吸い付き舌で転がす。柔らかかったそれはどんどん硬くなり吸いやすい形に変わっていく。時折歯を立てながら責めたてると、サシャの身体はトロトロに溶けていく。


「んあ、あ…っ、きもちいい…っ」
「乳首感じるようになったんだな…ここもすげえ硬くなってきてるぞ」
「ひ、あぁんっ、エヴァンやめろっ、あっあっああぁ♡」

 既に硬くなったサシャのペニスを力強く扱けば先端から我慢汁が噴き出した。背を矢なりにさせサシャは悲鳴のような喘ぎ声を上げた。
 サシャの腰を少し上げ、俺はあるひくついたアナルに舌を伸ばした。シワをなぞる様に舐めてから舌を中に挿入した。

「あっひぃぃっ、やだ、やだ…ぁっ、きたない、からぁっ、あぁっん!」
「いやらしい味がする」

 ジュルルルっと音を立てて啜ればその腰が小さく震えた。指も挿入してよく知ってる腫れた痼を指で押しつぶした。

「ん、ぉっ、あっあ〜〜〜っ!しょこだめ、だめぇ…っ、ひあ、あっあっ、いく♡いくいくっ♡」
「は、ぁ…可愛い」

 ビクビクさせながら快楽を感じているサシャに堪らず俺は口付けた。小さな口を塞いで激しく舌を絡ませる。サシャの唾液は気のせいか甘く感じる。
 激しく指を動かし何度もサシャが感じるところを刺激した。唾液を啜り、舌に吸い付くとサシャの身体は痙攣する様に震えた。濃い精液がサシャの薄い腹を汚していく。


「んっんぉっ、ふ、ん〜〜〜〜〜っ♡はぁ、いってるからぁっ♡」
「おれも、もう挿れていいか?限界だ…っ」


 臍に着くぐらい勃起した俺のペニスを見てサシャは顔を赤らめた。そして少し時間を置いてから小さく頷く。
 サシャの両膝を掴み胸まで持ち上げる。ほぼ真上の状態からそれをアナルに突き刺した。小さなアナルは精一杯シワを伸ばしながら飲み込んでいく。


「うっ、あぁっ、おちんち、でかすぎる…っ、はぁんっ♡」
「っ、苦しいか?サシャ」
「くるしくないっ!ん、はぁぁっ、はやく、うごいて…?」


 サシャは腰を揺らしながらそう言った。小さなサシャを気遣おうとしていた俺の理性の糸がブチッと切れた。
 腰を手で掴み一気に奥を突き上げた。


「あひぃぃっ♡しょんな、はげひぃ、よぉっ♡あっあっあっ、あぁんっ!やら、やらぁっ!」
「煽ったのはサシャだ…っ」
「らって、ぇっ、きもちぃから、ひ、ああああっ♡」


 腕に絡み付いた尻尾を掴み、尖った先端を口に含み舐めしゃぶった。そこの神経が敏感なのか毎回サシャは悲鳴を上げている。ぎゅうううっと腸壁が締まりサシャが精子を出さずにイッたのだとわかった。

 俺もそろそろ限界が近いためピストンを激しくした。


「らめ、ひっ、らめええ…っ、いっ、てう…っ、いってるからぁっ!ひあ、ああっ、あっ、あぁんっ!」
「は、は…っ、好きだ、サシャ」
「ひ、いいいっ、でるっ、でちゃう、ぅ〜〜〜〜っ♡」


 プシャアアアッと先端から透明の液体が噴き出し、互いの体を濡らしていく。一層アナルが締まり、俺は耐えられず中に射精した。










「んああっ、あっ…は、ぁ…も、むり…っ♡」


 バックの体勢で中に静液を吐き出した。何度も出しているため縁から白濁液が溢れている。
 ぐぽっとエグい音を立てながら少し萎えたペニスを抜き出す。飛んだ様な顔をしたサシャを見てまたやりすぎた!と俺は焦り出す。

「わ、悪いサシャ…やりすぎた」
「き、きみ…色魔じゃないよね…?」
「違う!すまない、次からは気をつけるから…」

 嫌わないでくれ、そう弱々しく言った俺を見てサシャは目を少し見開いた。それは一瞬だけで、次にフニャリと甘い笑顔を俺に向けてくれた。

「嫌いになるわけがないだろ、だってエヴァンは僕のお気に入りなんだから」


 俺の魂は死ぬまで、いや死んだ後もサシャのものでありたい。サシャの側でずっといたいと思っているのだ。

 細い指先が俺に伸ばされる。





「エヴァン、僕のエヴァン…」





 大好きだよ、目の前のご機嫌な悪魔は甘い声色でそう囁いた。





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