深淵の底




ヤクザ×高校生

※少しだけの痛い表現
※少しだけの♡喘ぎ
※幸せな内容じゃない



 

「ああ…やっと帰ってきたか、クソガキ」
「え?」


 ある日、学校から帰れば見たことのない男達が家の前に立っていた。怒りを露わにしている男達とは違い、その男は笑みを浮かべていた。いや、笑っていたのは口元だけでその瞳の奥は真っ黒だった。
 状況も掴めないまま、男は俺を高級車の中に押し入れそこから連れ去った。
 これが俺の人生が終わった日であり、この日を最後に俺は2度と家に帰ることはできなかった。



「で、お前の親父が金払わず逃げ出したわけだが…どう落とし前つけるんだ?」
「あ、の…話が全然わからないんですけど、父さんは…し、借金してたってことですか…?」

 目の前に座る男は紫煙を周りに吐き出しながら、知らなかったのか、と何でもないように言った。
 俺は父親がクズなことは理解していたつもりだった。それでも、まさか借金していただなんて信じられない。どれだけギャンブルに依存していても、俺には優しい父だったのだ。


「あー…カケルだっけか、とりあえず息子のお前が借金の1000万を肩代わりしなきゃならんのよ」
「いっせんまん…?そんな、俺まだ高校生で…っ」
「高校はもう行けねえよ、高校行く金あったら全部返済にまわさねぇと」

 ヘラヘラ笑う男を呆然と見つめるしか俺にはできなかった。1000万の借金をどうやって俺が返せると言うのだろう。絶望して言葉も出ない俺を見て、男が隣に座って肩を抱いてきた。

「…ま、ちょっとくらいは俺が情けかけてやるから安心しろ」

 安心しろ、そう笑みを浮かべている男の瞳はやはり真っ黒で何の色も感じなかった。


 *


「よぉ、お勤めごくろーさん」

 嫌になるほど聞きなれた声に俺は小さくため息を吐いた。小さいワンルームのベッドに腰掛け、優雅にタバコを吹かしている男はあの日俺を連れ去った男だ。

「黒川さん、勝手に家に入らないでくださいよ」
「あぁ?俺が持ってるアパートなんだから俺の好きにしていいだろうがよ」
「…そうですけど、掃除もしてないしやめてください」

 ニヤニヤ笑いながら男、黒川さんは自分の隣を叩いた。座れと言う意味だろうか、どうするべきか戸惑っていると苛立だしげに腕を引かれた。
 ふわりと香ったタバコとお香の匂いに目を細める。

「カケルの部屋は全然物がねえんだから掃除する必要あるか、ん?」
「………」
「なんか言えよ…まあいい、給料渡せや」

 俺は貰った封筒を黒川さんに渡した。この男はよく家にくるが、大体は給料日の日にやって来るのだ。多くはない紙幣を数える黒川さんの姿を見つめながら、俺は小さく息を吐いた。今月も無事に支払えた。


「ーー次からは利子も入れて5万にあげるか」
「え?俺これ以上支払ったら生活できないですよ!」

 今ですらカツカツな生活なのに、これ以上お金を搾取されたらどう生活していけばいいのか。
 黒川さんは俺の顎を荒く掴み、顔近づけた。怒っているのか何を考えているのか、目の前にある瞳からは何も読み取れない。

「前から言ってんだろ、ウリした方が儲かるって。お前はまだ18でより多く稼げるんだ…俺の言ってる意味わかるだろ?」
「む、無理です…働けません」

 何を思ったのか、黒川さんは俺を押し倒した。両腕を掴み上げられて、荒々しく武骨な手が俺の体を弄る。


「や、やめてくださ…っ、くろかわ、さん!」
「大人しくしとけよ…暴れたらこれ、潰すぞ?」

 2つの陰嚢をフニフニと弄る手に俺は恐怖を覚えた。怖い、この男が。何度も体を売れと迫られていたが、俺は男に抱かれる趣味なんてないためずっと断ってきていた。
 いつもならそれで終わるはずなのに、何故今日に限ってこんなことに。

「なんだ、まだ被ってんじゃねえか…俺が皮剥いてやろうか?」
「うっ、ぁ…やめ、て、ください…っ」
「くくっ、カケルは童貞だもんなぁ…」

 楽しげにちんぽを扱かれ、他人からの刺激に慣れていないそれは俺の意思に反して勃ちあがっていく。絶妙な力加減で果てそうになるまで責められ、限界が近づけば今度は緩められる。
 頭がおかしくなりそうな刺激に俺はただ涙を流すしかなかった。すると、ちんぽを刺激していた手が背後へと下がっていった。奥の窄まりにカサついた指の感触が触れ、俺は体を震わせた。


「む、りです…っ、それはできま、せ…」
「おいおい…泣くなよ」

 ーーーブチ犯したくなるだろ。


 その時、俺は初めて黒川さんの目に感情の色が宿るところを見た。厭らしい、劣情の色がその瞳に浮かんでいた。


 *



「ひ、あああっ、らめ、らっ…あっあ、ぁあっ!」
「っ、は…おら、こっちむけや」

 顔を掴まれ、背後を向かされる。後ろから責められ続け、ベッドについた膝が今にも崩れ落ちそうだった。
 黒川さんの薄い唇が貪るように激しく口付けてくる。嘘みたいに熱い舌に吐き気がするほどの嫌悪感が湧いてくるのに、俺の体の奥からはジワジワと熱が迫り上がってきた。


「は、んんっ、ん…ふ、ぅ…っ、は、あ、ああぁっ、いやだ、またっい、ぃ…ぁっ」

 俺が首を振ったり嫌がるたびに、叱っているつもりなのか最奥をプラムのように腫れた亀頭で抉られる。痛くて苦しいものだったのに、体は狂ったように快楽を感じてしまう。
 あの日から俺は毎日のように黒川さんに抱かれている。嫌で吐いたこともある、それでもこの男はやめてくれなかった。


「下になれ、そうだ…っ、はぁ…」
「ひ、ぎ…や、ぁぁ……っ」

 大きな手が俺の首に手をかけて、ゆっくりと力を入れていく。頭にどんどん血が集まり、苦しくなっていく。
 見下ろしてくるその美しく雄々しい顔を見つめる目に涙が溜まってきた。歪む視界の中、苦しみと確かな気持ちよさが俺を支配していた。

「ぁ…っ、ひ、ぐ、〜〜〜っ♡」
「勝手にイくな、っ!」

 首を絞められながら、獣のように激しく突かれて俺は何度もイッていた。イキすぎて薄くなった液体が腹を汚した。ビクつきながら仰け反った俺を黒川さんはニヒルな笑みを浮かべて見た。

「まだ、っできるだろ?」
「できなっ、ひ、ぁあっ、や、らっ、ああっ!」

 ぼやけた意識の中で、俺はただ女のように声をあげる方しか出来なかった。




 俺はタダで黒川さんに抱かれている訳ではない。
 意識を失うほど抱かれた後、目が覚めればローテーブルにはピン札が何枚も置かれているのだ。これを生活に当てたり、返済に充てていたがもう俺の体はボロボロだった。

 洗面所にある鏡に写る俺はいつもの俺であるはずなのに、黒川さんの下で喘いでいる女のような姿がチラついてくる。


『もっと股を開け』
『…またメスイキしたのかよ、もう女と変わらねぇじゃねえか』
『俺のちんぽが欲しいんだろ、あ?どうなんだよ、おら…言ってみろ』

「っ、は、ぁ……っ」


 じわじわと熱が身体を犯すような、激しいあの感覚がして震える息を吐いた。下着の中にあるソレが頭を上げていく。深呼吸をするように息を吐いて、ゆっくり扱きながら目を閉じた。

「ふ、っ…あ、ぁ…」

 瞼の裏に浮かぶのは、あの、あの人の……


「っおれ、なにして…」

 自分がしようとしたことが信じられなくて、自分の体を抱きしめる。こんなのおかしい、普通じゃない。
 仕事に行くために、俺は急いで服を着て家を飛び出した。



「ーー店で働きたい?」

 黒川さんの部下が怪訝そうな顔で俺を見た。昼の事務所は静かで、野太い部下の男の声がよく響いた。事務所にはこの人ともう1人のチンピラしかいない。黒川さんはどこかに出かけているらしい。
 俺は俯きながらパーカーの裾にできた縺れを弄る。

「俺、男もいけることがわかったんです。だから…ちゃんと働けます。店で働けば借金の返済も早く終わると思いますし」
「……まあ早く返済してもらわな俺も兄貴も困るしな。じゃ、手続きしとくから」

 お願いします、俺はそう呟くように言った。
 黒川さんに近い環境に居たくない。早く、早く離れて元の俺に戻りたい。返済さえ終われば、そう信じて俺は事務所を後にした。


 *



「よろしく、君みたいな若い子を抱けるなんて嬉しいよ」
「は、はい…よろしくお願いします」

 サラリーマンっぽい男が俺の最初の客らしい。適当に飲み物を飲んでから、男は俺の体に触れ始めた。黒川さん以外の人に触られるのは初めてだが、やっぱり少し気持ち悪い。でも、何も考えないようにやれば上手くいくかもしれない。
 ベッドに押し倒されて、服を脱がされる。

「あれ…気持ち良くない?」
「いや、その…お尻が、好きで…」
「…なるほどね、ちんこよりもアナル派なんだ」

 男はニヤニヤしながらローションを手に取った。俺のちんぽは全く反応せず萎えたままだ。尻穴を触られれば気持ち良くなるのかわからないが、とりあえずやってもらわなければいけない。
 ローションでヌルついた男の指が俺のアナルに触れる。不快感を抑えるように俺はギュッと瞼を閉じた。
 痛みは無いが気持ち良くも無い、唇を噛み締めながらただただ耐える。

「はぁ、はぁ…いれるよ、いいよね?」
「はい…お願いします」

 苦痛のようなその時間が過ぎ、男が俺のアナルにそれをあてがった。


「おいおい…何してんだ、カケル」
「ぇ、……黒川さん?」

 突然の声に振り向くと、何故か部屋の入り口に黒川さんが立っていた。黒川さんは戸惑う俺たちを無視して、ズカズカと中に入ってくる。

「働くなら俺に一言くらいくれてもいいじゃねえか、なあ?」
「あ、あんた誰なんだ!今、俺たちは…っぐあ!」

 黒川さんは男を蹴り飛ばし、そのまま殴りつける。

「どこまでこいつに触った、おぉ?さっさと答えろよこの野郎!」
「ゆ、ゆび…っ、指を入れただけだ!」
「ふざけんじゃねえぞ、くそが…おい、ペンチ持ってこい」

 後ろにいた部下に黒川さんはそう言い放った。逃げようとする男の頭を蹴り上げるところを見て、俺はそこから目を逸らした。劈くような男の悲鳴を聞かないように耳を塞ぐしかできなかった。


「ーーカケル、てめえ何勝手なことしてんだ?」
「ごめんなさ、ごめんなさい…っ」
「ごめんなさいじゃなくて、俺の許可なく何してんだって聞いてんだよ、ええ?おら、わかってんのかこの野郎」

 髪を掴まれ、目を無理やり合わせられる。男の返り血で濡れた手に触られ、額が少し汚れた。

「く、ろかわさんが働けって…だから、俺…」
「俺が抱いたオンナを本気で風俗に流すわけねえだろ、ナメてんのか」
「そ、そんなの知らな…っ」

 黒川さんの平手が頬に飛んでくる。いつもより低い怒声と頬の鈍い痛みに涙が出てきた。


「俺が優しくしてれば調子乗りやがって、クソガキがよぉ…おい、泣いてねえでなんとか言えよゴラァ」


 怒鳴られながら何度も頬を叩かれた。打たれた拍子に口内が切れたのか、少し血の味がした。


「は、早く返済したくて…だから…」
「てめえが嫌だっつうから俺が抱いて金やってたんだろうが、それともなんだ?足りなかったのか、ん?」
「ちが、ちがいます!男ともセックスできるようになったし、黒川さんも働けばいいって言ってたから…」

 黒川さんの額には青筋が浮かんでいる。何故黒川さんはこんなに怒っているのか、俺は全く理解できずにいた。言われたことをしただけなのに…パニック状態の俺は、必死に言い訳を繰り返すしかなかった。


「…まだ他の野郎にまんこ貸してもいいって思ってんのか?ダメだよな、そう思うだろカケル」
「………っ」
「てめえは俺のなんだよ、このいやらしいまんこもだらしねえチンポも…ここを大事に育ててやったのは誰だと思ってやがる」


 ぐぷりと荒々しく指が中に入ってきた。痛みは一瞬だけで、俺のナカを理解し尽くしたその指は的確に弱いところを刺激してくる。涙を流しながらも善がりはじめた俺を見て、黒川さんは冷たく笑った。

「……やっとここまで来れたんだ、こんな店に出すわけねえだろうが」

 その小さな呟きは俺の喘ぎ声に消されて、誰の耳にも入ることはなかった。





 ぐったりと店のベッドに横たわり、俺は静かに涙を流していた。どうしてこんな目にあっているのだろうか。
 黒川さんに抱かれるのは嫌なのに、あの客の男には感じなくて黒川さんには死ぬほど感じてしまうのだ。

「カケル、こっち向いてみろ」

 黒川さんは赤く腫れた頬に流れる涙を長い舌で舐めとった。柔らかく熱い舌の感触が不快だった。俺はゆっくり目を閉じて全てを見るのをやめた。
 この綺麗な男の顔も自分の体も、何もかも見たくなかった。

 何度も何度も涙を舐めとられるのを感じながら、俺の意識は深く深く深淵に沈んでいった。








「佐々木さんよ、またこれだけしか払えねえのか?利子分もないじゃない。困るんだよ、〇〇ファイナンスの金はウチの事務所で融資してあげてるんだからさぁ」
「す、すみません…」
「すみませんじゃなくてさ、お金…ちゃんと払ってよ。〇〇ファイナンスで手に負えないから親のこっちが佐々木さんと話してるんだよ?迷惑かけてるのわかるよね?」



 舎弟の男の声を聞きながら、精悍な顔つきの男は事務所の外に目を向ける。外には軽四車が道路の端に停められていた。そのボロい軽四車は恐らく詰められている佐々木の車だろうか。
 そこの助手席から1人の少年が降りてくるのを、じっと男は見つめた。近くにある自販機で飲み物を選ぶ姿は何とも平和である。


「……………」


男は灰がスーツに落ちることも気づかず、その少年だけを見続けた。その姿を目に焼き付けるように、いや、舐めまわすようにという方が正しいか。


 短くなった煙草を漸く灰皿に擦り付け、男はソファに腰掛けた。

「佐々木さん、珍しく息子連れてきて…遊びにいくのか?」
「く、黒川さん…、そうです、今日は息子が高校に合格したんで、その合格祝いに飯でも連れていこうかと…」
「なら、3万くらい貸してやる、どうせ持ち金少ねえんだろ。可愛い息子にたらふく美味いの食わせてやれよ」

 男…黒川は懐から金を取り出し、佐々木に差し出した。戸惑いながらも佐々木はそれを受け取り、息子が待っているのでと逃げるように事務所を飛び出していった。


「いいんですか、親父…あいつ金払えなくなりますよ」
「いいんだよ、潰れるまで貸してやれ」


 不服そうな舎弟に、黒川は笑みを浮かべながら続ける。


「潰れたら俺はあの息子を貰うだけなんだからよ、ぜーんぜん構わねえよ」


 むしろ、早く潰れて欲しいくらいだ、そう黒川は小さく呟いた。普段何の感情も浮かべない瞳の奥に、怪しく光が宿るのを見て舎弟の男は冷たい汗を流した。


「後で息子の名前調べとけ、いいな」
「…わかりました」

 ご機嫌な上司に男は何も言えず、そう言葉を返す他なかった。




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