かわいそうな男
※微妙にグロ注意、香り程度のモブ女が出てくる
『
細川 密』
この男は人ではない。『悪魔』や『鬼』なんてものが可愛く思えてしまうほど、その男は恐ろしく異常で狂っていた。
鉛のような鉄のような臭いと、酸っぱい臭いが充満する部屋の中で俺は涙を流していた。汗もかいて顔や髪はめちゃくちゃな状態で、俺はただその場に縛りつけられていた。
仄暗い地下室は、男の親が子供のために用意した「遊び部屋」だ。
目の前では悲鳴を上げながら女の子が殴られて、血を流している。逃げるように床を引っ掻く華奢な両手には爪はない。可愛らしい微笑みをよく浮かべていた顔は酷く殴られ、面影すらない。
その女の子は性的な目的に使われる玩具を中に入れられ、苦しいのか獣のような声を上げていた。
何が面白いのか狂ったように笑った男が、その下腹部を何の躊躇いもなく蹴り飛ばした。
「っ、う…ぇ…っ」
「あー?ミツルちゃん大丈夫かいな」
楽しみはこれからやのに、そう男…細川 密は笑った。女の子がかわいそうで申し訳なくて、俺は嗚咽を繰り返し猿轡の隙間から胃液を吐き出した。
*
密と出会ったのは小学6年生の頃だ。裏社会で有名な極道が俺の近所に家を建てたのだ。地域の自治体から批判が殺到して、一時期とんでもない騒ぎになっていたことを思い出した。
そんな中、いつも通り友達と公園で遊ぼうとしていた俺は公園で中学生達を地面に踏みつけている密に出会った。中学生は体が大きかったのに、1人の小学生にボコボコにされていて俺はかなりの衝撃を受けた。
その時の俺は正義感が強かったのか中学生達がかわいそうだったのかわからないが、友達の止める声も無視してそこに近寄ったのだ。
「もうやめろよ、その人達倒れてるじゃんか」
「なんやねん、うっとーしいのぉ」
「っ、だから踏むのやめろよ!」
聞き慣れない方言に冷たい瞳。恐ろしく整った顔の密は、そう怒鳴った俺を起き上がれなくなるまで殴り倒した。
全身が痛くて意識も朦朧としている中、暇そうに佇む密を俺は見上げた。
「わ、…そお、っだな」
「…あぁ?なんか言うたか」
「かわいそうな、やつだって…言ったんだよ」
何も面白いと思ってないくせに人を殴って物を壊すその姿を見て、俺はそう感じた。言わなくてもよかったが、せめてもの抵抗のつもりで俺はそう言った。
密は目を見開き俺を見つめた。その瞳が少し揺れた気がしたが、本当はどうだったのかわからない。
また無表情になった密は無言で俺を殴りつけた。
密とは中学から同じになり、よく絡まれるようになった。ヤクザの息子として有名だった密はあらゆる悪事に手を染めていて、常に悪い噂が絶えなかった。
よくわからない関係が変わったのは中学2年生になった頃だった。無理やり密の家に連れて行かれ、俺は密に抱かれた。
吐く俺を密は興奮した目で見つめて、何度も何度も愛を叫んでいた。
はじめてのキスもセックスも何もかも、こいつに奪われた。そのあとは恋人になんかなるわけもなく、呼び出され無理やり犯されるだけだ。
そんな地獄のような生活の中、俺を好きだと言ってくれる女の子が現れた。密に見つからないように告白を受け入れて付き合い始めた。でも、密に見つからないわけがない。
密は家の舎弟を使って俺と彼女を「遊び部屋」に連行した。椅子に縛られ猿轡をかまされた俺は彼女が蹂躙され壊されていくのを見せられた。泣き叫び、嘔吐して、精神的に壊れそうになった俺を密は最後に抱いた。
俺は壊れたかつての彼女の傍らで、楽しそうな顔をして俺を犯す密を虚な目で見上げていた。
その日から俺に近寄る女の子が現れると、この地獄のような行為が行われるようになった。
*
「後でデータ確認しとけ」
「はい」
密は三脚に立てていたカメラを舎弟に渡した。女の子はぴくりとも動かなくて死んでるのか生きてるのかもわからない。
猿轡と椅子のロープを外され、俺は崩れるように地面に座り込んだ。
「ミツル、どないしたん?顔ぐちゃぐちゃやん」
密は濡れタオルを舎弟から受け取り俺の顔をふき始めた。ふき終わったタオルをその辺に投げ捨てて、密は慣れた手つきで服を脱がせてきた。
「っ、やめろよ…!」
「んー…めっちゃゲロの味する」
貪るように口付けたあと、そう言って密は自分の唇を舐めた。また吐きそうになる俺を密は面白そうに笑った。
泡立った肌をいやらしく撫でて、小さい突起の片方を舌で舐めあげる。さっきの非道な行いをしていた男とは思えないほど優しい手つきだった。
いやでも慣れてしまった体は少しの刺激でも反応してしまう。
「いやだ…っ、ひそか、やめてくれ」
「嫌ちゃうやろ?気持ちよさそうな顔してんで」
「ちがっ、あぁ…はっ、や、ぁ…っ」
「指もすぐ飲み込むし…ミツルのまんこは、っ…ほんまに賢いなァ」
申し訳程度に指で後孔を慣らされ、熱くて巨大なものがナカを貫いた。気持ちとは裏腹に俺の体は密を受け入れて、喜んできつく締めあげる。
出し入れされるたびに俺のものはよだれを垂らしていた。
「こわいか?」
「あっ、あぁ…ひっ、ん…っ」
涙を流す俺を密は見下ろしわざとらしく顔を歪めた。そっと頬を撫でて、唇に何度も口つげた。
「こわいよなぁ、ミツル…かわいそうに」
「なに、っ…いって…ぁ」
「目ェも真っ赤っかやで、よしよし」
怖かったなぁ、そう言ってくる男は本当に頭がおかしい。密のせいだと言うのに、何なんだ。俺は悔しくて唇を噛み締めた。
「俺のミツル…、ミツル…っ」
「っひそ、か…」
密は切なげに顔を歪め俺を苦しいくらいに抱きしめた。腕の中で密の鼓動の音が聴こえてくる。
「お前が悪いんや、ほかの女に色目つかいよって」
僅かに声色には怒りが混ざっているような気がした。あまり感情を出さない密は俺が何かをするとよく感情を表に出す。
そうだ、全て…俺が悪い。俺があの子や他の女の子を不幸にしている。ごめんな、俺が関わらなければこうならなかったはずの女の子に視線をやり、小さく謝った。
甘い声をあげながら、俺はまるで自分を空から見ているような気持ちになった。天井にいるもう1人の俺が悲しそうにこちらを見つめている。あれは小学生の俺か、中学生の俺なのかよくわからない。
「いっ、あああぁ!」
「可愛い、ミツル…」
最奥を突かれ俺は精液を腹に吐き出し果てた。
「おれの、もんや…っお前は俺のもんや」
狂ったようにそう言った密も俺の中で精を吐き出した。
「っ、ふ…」
枯れることのない涙がずっと溢れてくる。
この男が居なくなればどれだけ俺は幸せになれるのか、何度も何度もそう思ったが結局はこの『かわいそう』な男を放っておけないのだ。
あの日からずっと俺しかいないというように縋る男が、かわいそうでかわいそうで仕方がない。この男も俺と出会わなければこんなことはしていなかったかもしれないのだ。
天井で見つめてくる俺を見ながら、密のその広くて小さい背中にそっと腕を回した。
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