バレンタイン(ソフィア)
水色のリボンで結んで可愛らしくラッピングされたクッキーの入った袋を大事そうに両手に抱えてソフィアは裏口から出てきた。
先程、やっと客が帰り暇をもらえたのだ。
その間にソフィアは前日に作っておいた、チョコレートクッキーとチョコレートを急いでラッピングしたのだ。
そして、いつか約束した神出鬼没の彼に渡すためにいつものあの場所へ。
あの場所とはソフィアの家の裏側で客用シーツを干す場所だ。
少し小高い山に建てられた家の裏は風通りがよく、草原になっていて街を見渡せる場所だ。
強い風が吹けば草の匂いがしてソフィアのお気に入りの場所だ。
ただ、そこは近くに小さな崖が幾つか連なって気を付けなければいけないのだ。
その時はソフィアは人を探していて足元をちゃんと見ていなかった。足元を。
ひゅっと視界が縮む。一瞬何がおきたのか理解ができなかったが数秒後自分が崖から落ちたことに気がつく。腕と足と腰に痛みが走り顔を歪めてしまう。痛い。それでもソフィアは袋を離さず傷つけない様にした。
いつか小さい頃に聞いた母の「人にあげるものは大切に。」の言葉を思い出す。人にあげるものを大切にしたらその人は喜んでくれる。そう、聞いたから。
痛みを我慢してよろよろと立ち上がる。結構落ちたようで急なこともあって登れやしなかった。周りを見渡すと見慣れないところ。
人里に近い場所だからといって魔物がいないという保証はない。
…もし魔物がいて襲われて食べられたらどうしよう…そう思うと自然にソフィアの目が潤む。
じっと動けずにいるとガサガサと近くの茂みが揺れる。
ソフィアはぴくりと肩を揺らし近くに落ちていた木の棒を手に取り構える。
ガサッ、と出てきた相手にソフィアは木の棒を叩きつけた。
「アダッ!」
聞き慣れたその声に気がつき茂みから出てきた相手を見てみる。
それは、彼女が探していた神出鬼没の彼。
頭部をさすりながらソフィアを見ていた。
「ボロボロの格好デェ木ノを振り回すトはぁ…新しい遊ビですかァ?」
そういつものペースで言った彼に思わず笑みと溜まっていた涙がこぼれ落ちる。
「貰いに来マしたァ」
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星空