バラの香り


ふわっ、と香る薔薇の香り。その香りは確かに私の横を通った人の香りだった。
思わず振り向くと真っ黒な闇のようなローブからぽとりと闇をひとつ落としていった。
それを拾って見るとやっぱりその香りは薔薇で真っ黒な財布だった。
中身を見てみるとぎっしりと色々入っていてそりゃあ、お金とカードもたくさんはいっていて…。
このまま貰っちゃえとも思った。普段の私ならそうしているだろう。
でも、何故だか勝手に足が動いてあの人を追いかけていた。
髪の長さは女性みたい。でも、体格は男性。後ろから見てね。

「あ、あの、これ落としましたよ。」

ローブを引っ張り言ってみる。
歩いていたその人は立ち止まり振り返る。
その時でも薔薇の香りがして思わず何の香水使っているのかききたくなった。
その人の瞳は真っ赤で、真っ黒な中に浮き上がったみたいな。
私の差し出した財布を見て一瞬きょとんとし、自分のローブの中を探る。
キラッと闇の中に輝いた銀色はナイフだとは信じない。

「ああ、ありがとうございます。」

ふわりと上品に貴族のように笑うその人に一瞬ドキリとした。
薔薇の香りに恋したせいだ。彼じゃない。
それだけ、それだけの会話で。
彼がさったあと数秒は薔薇の香りが残った。
私にまでその香りうつっちゃったかな。



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星空