保健委員である天道菊治は、大量の救急箱を持って走り回っていた。
彼がいる教室には、たくさんの人が倒れていた。

「菊治…、いてぇ。」

「ごめんね、すぐ、行くから。」

一人、また一人、軽傷から重傷まで菊治は手当をしていた。
その額には汗が滲んでいる。よく、見れば目には涙を蓄えていた。

「ほら、これでいいよ。ガラスで切ったんだね。深かったからあまり動かさないでね。」

「ありがとう。」

涙だとバレないように服の袖で額を拭うふりをして涙を拭った。

(なんで能力が使えないんだろう…)

菊治は次の生徒の足を抑えながら痛いところはどこか聞きながら考えていた。

彼の能力は二つ。どちらとも自己犠牲をするタイプだ。
一つは他人を癒す能力。自分生命力を相手に分け与えることで他人の数を急速に癒すものだ。
もう一つは加護の力。自分自身にまとわりついている女神から加護の力を他人に分け与え、他人の防御力を一段と高める。だが、相手が傷つけば、自分もいくらか軽傷にはなるが、傷つく。

彼は、自分の能力が発動できない自分を心で呪った。
能力が発動出来なくなってしまっているのは仕方が無いことなのだが、彼は今冷静にそれを考えることができなかった。

頭が痛いと訴えて狂ったように暴れる生徒を見る度に彼の心は痛んだ。
ちくり、ちくりと。

また、じわりと涙が溢れそうになっていた。

「ごめんね、ごめんね、」

菊治はバレないようにそっと呟いた。

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