「や、やっぱ、体育館に向かうのじゃぁあ…」

「トワさん疲れたんじゃないの?」

顔を真っ赤にして走るトワと、目を回している女子生徒を担いでいた藤(保健室を通りかかったので寝かせてもらった)

先程、手の空いた藤はトワを背負おうとトワの前でしゃがみこんだが、やってきたのは重さではなく背筋をなぞる手だった。
思わず変な声が出そうになった藤は口を抑えてトワの方に振り返った。

「藤殿ばかりに頼っていると悪いじゃろ?
わしは、頑張って走るのじゃ!」

「トワさん…!」

何のコントなんだ。と言いたくなるほどに、二人の周りはきらびやかしていた。

それは、数分前。
最初は速いペースで走っていた(周りから見れば遅いのだが)が、徐々にスピードダウンしていった。そんなトワの速度に藤は早足でも追いつけた。

「何なのじゃぁぁ…この学園広すぎなのじゃぁぁ…。」

「だから、ね?トワさんつかれたなら―」

「おお!体育館の扉じゃ!藤殿行くぞ!」

「え!?あ、うん!」

藤が言葉を言いかけた時、トワの目に体育館の扉が目に入った。
瞬間、疲れていたのが嘘のように軽やかな足取りで藤を抜かして行った。
藤はその後をやや速度を早めてついて行った。

「一番乗りなのじゃー!――あ。」

「あと30分もある――よ?」


「んぎゃぁぁあ!!ごめんなさい!貴方達も早く逃げた方がいいよ!!」


風の速度で二人のあいだを通り抜けて体育館を出ていった生徒。
二人はそのことより目の前でおきようとしていたことに目を取られた。

「てめぇら――」

「トワさん、」
「なんじゃ、藤殿。」
「逃げた方が―」
「わかっておるのじゃ。」

急ぎ足で横へと移動しようとする二人。

「うざってぇんだよ!!」

「うをぉい!」

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人が宙を舞った。トワは舞った人物の涙が雨のように降り注いでいるかのように思えた。

ドシャッ!と痛そうな壁に衝突する音が体育館の外から聞こえた。
そう、目の前で起こりそうなことはこれだった。
人が投げられた。

「トワさん大丈夫?」

「大丈夫なのじゃ。」


うんうん、と頷くトワ。その様子に藤はちらりと生徒を投げた人物を見て舞台前に行くようにトワに促した。

「チッ」と舌打ちをして未だ怒りが収まらないであろう生徒は舞台の反対側へと移動していく。

―「ウッ」
藤が頭を押さえ出す。
トワはそれに気がついた。しゃがみこんだ藤の肩に手を置いた。そして、思い出した。

「藤殿?大丈夫なのじゃ?―鎮痛剤、貰ってなかったのじゃ…」

「だ、…じょぶ…。トワさん…こそ…」

「わしは毎日が頭痛との戦いじゃ。変わらんのじゃ。その痛みがわしの痛みじゃ。だがの、藤殿は慣れておらんのじゃ。いや、慣れなくていいのじゃ。ま、まっておれ、わしが今取りに行ってや―わふっ」

藤にその場にいるようにジェスチャーし、藤の側から離れようとしたとき。
トワは誰かとぶつかった。嗅ぎなれた匂いに、ぶつかった相手を見上げる。

「はーい、鎮痛剤とーちゃく。」

「俊!」

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