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「ほらっ、そこに座って。」

「は?だから、いいって…」

「座って。」

いつもより乱暴な言い草で菊治は言った。
要は、渋々というように座り込む。その姿はまるで、親に怒られ拗ねた子供のようだった。

要が座ったのを確認すると、菊治は要の目前にしゃがみこんだ。
そして、ピンポイントで要の重傷部分を思いっきり抑え込んだ。

「いった…!」

「やっぱり、ここ折れてる。能力である程度治すよ。」

「はっ、ちょっ…」

要の声を聞こえないふりをして菊治は傷を癒していく。ある程度骨がくっついたと思われると菊治は能力を停止した。
そして、また、手で強く押さえ込みながら要の反応を見ながら傷を探し出した。

「変態かよ…。」

「はいはい、何でも言いなさい。」

グッと腕を押さえ込んだとき要の眉間が動いた。菊治はそれを見逃さずに、また能力を使った。

そして流血がある箇所はしゅるりとネクタイを外したり、シャツを破いたりして止血した。

「シャツ破る力なんてあったんだ…」

「普段は破れないだろうね。火事場の馬鹿力…とか?」

「火事場っていうほどじゃないけどね。」

要は菊治に目線を向けずに、自身の手を握り締めたり開いたりして具合を確かめていた。
そして、立ち上がる。
菊治はその様子をただ見上げていた。

「そういえば、私を軽蔑しないの?」

ちらりと背後の人間の残骸を見て要が言った。菊治はその人間の残骸のものから目を逸らすようにして返した。

「はっきり言えばしそうになった。
いくら何でも、人を殺すことはないと思う。
―でもね、どこか僕の心の中で無感情な部分があった。」

「は?どういう――」

「要くんだけでも無事で、そこまで酷い怪我じゃなくてよかったって、あの人を殺せるぐらいの元気はあるんだって……。
だけど、要くんには人を殺して欲しくない。いや、僕の知っている人に人殺しはして欲しくないんだ。」

独白を終えた菊治は立ち上がり、要の顔を見て微笑んだ。

「…その甘さが命取りになるかもしれない。ただでさえ、弱いのに――」

「いいよ、その時は要くんが守ってくれるでしょ?」

「はぁ?なんで菊治なんかを守らなくちゃいけないの?」

「要くんはさ、自分の優しさを否定しないでよ。」

ぽんぽん、と菊治は要の頭を撫でた。

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