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「うっ………。」
菊治が口元を抑える。そして、耐えられなくなったのかしゃがみこんだ。
矢代は、しゃがみこんだ菊治の背中を摩った。
数回咳き込むと吐血をした。菊治の口周りと抑えていた手が赤く染まる。
額にはじわりと脂汗が滲み、涙が溢れる。体が酷く震える。
声にならないほどの痛みが菊治を襲ったかと思うと、瞬間、糸が切れたように菊治は地に膝をついた。
「大丈夫か?」
矢代が、無表情に、だけどどこか心配そうに聞く。
ツゥッ、と菊治の頬を涙が流れた。
―加護の能力が強制的に解除された。
つまり、対象者
「要くん……。」
その呟きと菊治の様子に神器を使っていたトワが反応をする。
矢代は、察したのか菊治の頭をゆるりと撫でた。
いよいよ静かに泣き出した菊治を矢代は抱きしめて、背中を優しく叩きながらトワの方へと視線を移した。
その視線は「もう大丈夫なのか。」と聞いている。
「もう終わったのじゃ。」
トワが言い、神器の能力が解除される。
瞬間、部屋いっぱいにあった古代文字が消える。
「マシロさんと藜くんは、無事かな。」
菊治が矢代の腕の中でポツリと呟く。その呟きに返すことはできなかった。
要が殺られた。藜は確かに強いが動きは単純。真っ先に殺られているかもしれない。
マシロに関しては、あまり心配などしていなかった。
自身の背中に回された腕を解いてほしくない、と言うように矢代の背中にもゆるりと腕を回ししがみついた。
入口前で見張りをしていた七海が、唐突に声を上げた。
「来たよ。」
と。
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星空