気になるあの人
勇気をだして1人の人物を呼び止め、初めて自分
から声をかけてみたものの、上手い言葉が見つ
からず、美月は緊張からか声が裏返り、言葉
が震えていた。
お互いに会場では会っても、試合で当たること
は無かったが、すれ違いざまに見かけていた、
以前から気になっていた存在。
これって、所謂ナンパになるのだろうか。
初対面の相手には、初めましてって言うべき
だったよね?
美月は自分の頭の中で色々考えながらも、
彼女は次の一歩が踏み出せず、思いつく言葉
は出せないま、その言葉を呑み込んだ。
及川同様、コミュニケーション力が割と高め
である彼女は、普段はこんな事は絶対に無い
はずなのに、相手の目をちゃんと見れずに
いて、目は泳いでいた。
『あの、…えっと。』
彼女に声をかけられた相手もまさか自分に
声がかかるとは思ってもみなかったらしく、美月の緊張に釣られて、その相手の頬も
赤くなり、美月から一瞬視線を逸らした。
美月の緊張は普段の桁違いに酷い状態で、
声だけではなく、手までもを震わせながら、
恐る恐る自分の携帯を差し出した。
踏み出さなければ何も始まらない。
『マネージャーの牧野美月です。
あの…ずっと前から、仲良くなりたいと思って
ました。』
お友達になってくれますか?と聞くと相手も
驚いたように、でも、彼女のその誘いを喜ぶ
ようにこくりと頷いた。
「…嬉しい。」
清水潔子です、私もマネージャー同士仲良く
なりたいなって思っていました。
彼女の言葉が嬉しくて、美月は興奮気味
に本当に!?と聞けば、彼女はもう一度
美月に向けてこっくりと深く頷き、
よろしくお願いしますと返事を出す。
美月は嬉し涙を流しそうになりながら、
彼女のその言葉に胸の鼓動はドクドクと脈
打って激しく、高鳴っていた。
『清水さん、ありがとう!』
「潔子でいい。私も美月ちゃんって
呼ばせてもらってもいいかな?」
もちろん!と彼女が答えれば、お互いに携帯を
差し出し、連絡先を交換するとにっこりと
嬉しそうに微笑み合った。
『マネージャーの友達、いい刺激に
なるだろうからずっと欲しかったの。』
でもなかなか作る機会が無くてと言うと彼女も
「凄くわかる!」と互いに相手の意見に共感し
合い、気が合う2人は話が広がる。
タイプは違う2人だが、目標は学校が違えど
互いに目指す先は同じで、仲良くなるのに
時間はいらなくて、思わぬ両思いにお互い
何度も笑い合った。
「潔子さんが女子と笑っとる…」
「綺麗女子とモデル女子が眩しい。」
「牧野さんの照れた顔初めて見た。」
田中、西谷、驚いている様子も、付き添いで
一緒にいた矢巾が彼女の思わぬ一面に感動して
いる様子も
そして、澤村、菅原、東峰が清水に他校の友人
が出来たと嬉し泣きしている様子も、彼女達は
気にする事はなく、それから1年くらい経過
していた。
『潔子!!』
「美月。」
両校挨拶をそれぞれ整列して済ました後に、
門に向かった烏野選手を走って追いかけて、
美月は悔しさが混ざりながらもお互いに
手を出し、それを弾き合う。
『いい仕事しよう。』
「お互いに。」
学校は違えど良い友人でライバルで。
試合中は目も合わせていなかった2人が
練習試合に味方の邪魔にならない為に、
試合終了後にやっと、互いに挨拶をする。
烏野の1年生以外はそんな2人の事情を知って
はいたが、青葉城西側は矢巾しか知らなかった
ことで、影山も及川もそんな二人を見て驚愕
していたが、当の本人たちはそんな彼らに
気にすること無く、互いにはにかんで見せて、
次はインターハイでと手を振った。
親友の背中を満足そうに見届けた美月は
及川にも微笑み、戻ろっかと笑顔を向けて、
彼より先に仲間達の元へと歩き出す。
及川はそんな彼女を見ながら、少し不満そうに
彼女について行くように続いて歩き出した。
「なんか、美月にいい所を持って
かれた気がするんだけど。」
『え。徹、何言ってんの?』
「清水先輩、美月さんと知り合い
だったんですか?」
「うん。美月から可愛い後輩が
来るって聞いていたけど、てっきり
女の子が来るものだと思っていたから、
影山の事だとは全然思って無かった。」