可愛い後輩達

美月は今、2人の大きな壁に両手を広げて
阻まれ困惑して2人を見上げていた。


『金田一も国見もどうしちゃったの!』


「美月さんを絶対に」


「行かせませんっ!」


彼女がそこを通してとお願いをしても、決して
2人は彼女の言葉を聞く事はなく、完全拒否。

これが試合中のブロックであれば、とてつも
なく頼もしい事なのだが、練習試合は残念
ながらまだ始まってなどおらず、その鉄壁は
どちらかといえば無意味。


国見は、時々彼女へ何故か拗ねた態度を見せる
ことはあるが、珍しく今回は美月にいつも
素直な金田一まで、ムキになって彼女の言う
ことを聞かずに止めていたのだった。


事の発端は、烏野高校の選手の中から美月が
影山を見つけると直ぐに『飛雄!』と嬉しそう
に彼の名前を呼びながら飛びつき、その時に
『前会った時より大きくなってる!』と照れて
いる影山の頭を質問攻めで、撫でていた所を
彼らに目撃された所にあるのだが。


そしてそれだけでは無く、自分よりも身長が
低い日向を見かけれた途端、珍しい彼に色々
と興味を持ってしまい、以前から気にかけて
いた影山の事を日向にも色々と聞いてしまって
いたので、もちろんそれを目にした2人の機嫌
は更に悪くなるだけだった。


ああそうだ、この2人の前で彼と仲良くする
のはアウトだったっけ。


彼女からすれば学校は関係無く、皆が可愛い
後輩で本当に悪気はなかったのだが、彼等の
モチベーションを下げてしまった先程の浅はか
な自分の行動に反省をしながら、指で自分の
頬をかく。


「美月さんは青葉城西のマネージャー
なんです。」


「決して美月さんは影山飛雄の
専属マネージャーなんかじゃありません」



2人が美月を下の名前で呼ぶ時は、完全に
ヤキモチを妬いている合図。


影山の専属マネージャーというワードを耳に
した松川と岩泉までもが「あ?」「今なんつっ
た?」と低い声を出して、鋭い目でこちらを
向くので、ややこしくなるから止めなさい!
と彼女は二人を落ち着かせた。


ただ荷物を取りに行くだけと2人に説明しても、
その先には先程の烏野の選手達がいるので、
影山とこれ以上話なんてさせるものかと、
2人は美月の邪魔をする。


『向こうに荷物取りに行くだけだから。』


「それなら俺達が取りに行きます。」


『君達は試合でしょ。』


「じゃあ、他の1年に任せましょう。」


普段、美月には屁理屈を言わない2人が
子供みたいに臍を曲げているので、この珍しい
やり取りに美月は段々と可笑しくなって、つい
笑いそうになるが、笑うとかえって2人には
怒られてしまうので、何とかそれを堪えながら、
可愛く見える2人へ、負けましたと彼女は白旗
を挙げた。


『もー、わかりました。』


近くにいた1年生の部員に謝りながら、自分の
これからやりたかった作業の道具をお願いする
と、目線を戻して、2人をムッと少し怒った顔で
じっと見つめる。


「うっ…。」


「ちょっと金田一、何狼狽えてんの。
美月さん、そんな可愛い顔で怒った
顔されても、俺達は謝りませんからね。」


美月はそんな2人にふぅと呆れたため息を
吐いて、わかってるから!とわしゃわしゃと
背伸びをして、両手で2人の頭を撫でた。


『2人が飛雄に対して、一体何を意識してる
のかはよくわかんないけど…』


1番期待してるのは君達だからね!


2人をコートへくるっと向かせて、背中を叩いて
コートへ押し出し、二カッと彼らに向かって
笑顔を向けた。

彼女の言葉にスイッチが入り、闘志剥き出しの
2人は影山を鋭い目で見る。
彼女も2人の表情を見れば、少し安心をして、
その調子でよろしくねと温かい目で見守った。



「アイツには負けねー。」


「金田一に同じく。」


頼もしい後輩2人のやり取りに先輩達も負けず
劣らずの精神で、いい根性だとニヤリと笑う。


「…よし、ポイント1番とったやつが、
牧野とデートで掛けてみるか?」


「んなもん、俺が圧勝に決まりだな。」


「俺達だって負けませんよ、先輩。」


「コレ、趣旨変わってきねーか?」


その試合後に、予想外の動きを見せる烏野の
日向の事を美月がつい可愛いとコーチの横で
ポロッと言葉にしてしまい、そこに戻ってきた 及川も混ざって、再び顰蹙を買ってしまう事を
この時の美月はまだ知らない。


『大王様…最高。』


「牧野、あとで知らねーぞ。」


『分かってますよ、溝口さん。』





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