みんなへのご褒美

「美月、今どこ?」


『え?ハジメとスーパー。』


「えっ、聞いてないんだけど。」


寄り道の理由を話したら、及川は電話越しでも
拗ねてる様子がわかり、彼の文句を聞く前に
慣れたように岩泉へと電話を交代する。


みんなのアイスを買い終えて、合宿所へすぐに
戻ると遅くなった夕飯を2人でささっと済ませ、
それぞれお風呂に入ってから先程買ったアイス
を大部屋のみんなのいる所へと持っていった。


「悪い、遅くなった。」


『溝口クンからの奢りでーす。』


2人の帰りを待っていた部員達は待っていた
お土産に喜ぶが、及川だけは未だに拗ねた
様子で布団の上で三角座りで待機中。


「2人とも酷くない?」


『ごめん、帰ってる途中で思い出して。』


「勝手に先に突っ走って帰ったのはおめーだろ。」


口を尖らせてそう文句を言う及川の前に、
片方は申し訳無さそうに、もう片方は開き
直った様子で立っていた。


美月は徹の大好きなミルクアイスを買って
来たからと彼をなだめるようにアイスを差し
出すも彼は納得いかないのか、じっとりと
した目で美月を見ている。


「…美月があーんして。」


及川の甘える要求に美月は無言のまま、
にっこり微笑みはしたが、彼の要求に答える
ことは無く、口を開けて待つ及川の前に借りた
シャンプーとアイスを置いたらそのまま素早く
踵を返した。


「あ、面倒臭くなったやつ。」


「ちょっとそれ、ガチで傷つくヤツ!」


まっ、そーなるよなと岩泉は納得して頷き、
及川が振られてやんの!と花巻は彼を指さして
ゲラゲラ笑い、通常運転だなと松川は言い
ながら美月からアイスを受け取っていた。


『花巻はシューアイスあったよー。
あと松川はクリームチーズ。』


「美月わかってるー。」


「サンキューな。」


「美月、酷い!」と及川が訴えれば、
アイスが溶けちゃうでしょ?と厳しい一言が
返ってくるので、そのまま受け取ったアイスの
蓋を彼は大人しく開けた。


「ほら受け取れ、金田一。」


「あざっす!…てこれ、美味いんすか?」


岩泉も2年生にアイスを渡し、金田一には
まさかのガ〇ガ〇君のコーンポタージュ味を
俺のチョイスだと何故だか誇らしげに渡す姿に
金田一は困惑し、それを見た3年生は彼の微妙
なセンスに大笑い。


『国見はお手伝いしてくれたから…はい、
これがご褒美。』


「ありがとうございます。牧野さん、これ…。」


美月が彼に手渡したのは塩キャラメル味。
国見、これ好きだったよね?と彼女に言われ、
美月が自分の好物を覚えてくれていた
ことに国見は少し感激気味で微笑んだ。


『昨日は助かったよ、ありがとね。』


「牧野さん…」


先輩が先に食べてくださいとスプーンを彼女に
差し出し、美月も反射でパクッとアイスを
口に入れ、その美味しさにほんのり笑顔を見せる。

先を越された先輩たちは一斉にこっちを見れば、
国見は勝ち誇ったようにニヤリと笑った。


国見を羨ましく見た金田一は、味的な意味でも
そっちが良かったとは言い出せず、なんとも
言えない顔で2人を見てるので、思わず渡と
花巻はそれが面白くて思わず吹き出した。


「ところで、お二人さんのアイスは?」


『あるよー!、パ〇コー!』


「なん!!!」「だと…!!?」


岩泉と美月が2人ともあたかも当然のように
アイスを割って分け合い、岩泉が座ると彼女も
その背に持たれてのんびり寛ぐように座る。


それは、お互いごく自然に寄り添っていた
ので、日頃からそれが当たり前になっている
という事を目の前で見せつけられている気が
して、その悔しさから周りは言葉を失った。


「岩泉さん、本当に美味しいとこ
さらっと持ってくの上手いですよね。」


「アレだ、やましさ見えねーからな。」


「絶対嘘だっ。岩ちゃん実は美月
大好きオーラがムンムンなのに!」


「…あ?及川なんか言ったか?」


『せっかくだし、みんなで写真撮りたい!!』


「ほら、携帯貸してみ。」


「松川さんはさりげなく牧野さんと
ツーショ撮らないでください!」


「お前ら止めろ、重たいだろ。」


「野郎だらけで見苦しいな。」


松川が腕を伸ばせば、その画面に収まろうと
みんなが集い、ぎゅうぎゅうと敷き詰め
られた状態でパシャリと1枚。


今度は私がと彼女が携帯を持てば美月の隣
をみんなが狙うも隣にいた岩泉と松川は絶対に
譲ることなくそこに居座り、突然の人気者状態
が可笑しくて、彼女は止めなさいと大笑い。


その1枚の写真が彼女のお気に入りとなり、
しばらく彼女のスマホの待受としてそれは
飾られていた。

そして賑やかな夜は、今しばらく続く模様。


「覚悟しろ、金田一!」


「なんで俺なんスか!花巻さんズボンを
ずらさないで下さい!!!」


『ちょっと待って、ダメ金田一!
わー、お尻半分出てる!!!』


「牧野さんは見ちゃダメ!」


「あ!国見ばっかりずりー!」


「国見ちゃーん、目を覆うのはナイスだけど美月にべったりしちゃダメ!!」


「あー、うるせー。」






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