目の前の誘惑
午前4時30分
まだ起き出すには早過ぎてしまう頃合に、
少しだけ重たくなってる身体と妙な感触に
上手く身動きが取れず、うっすらと瞼を
開けてみれば、長い髪の毛がちらりと見える。
ついにここにも幽霊が出たか。
花巻は恐る恐る布団をゆっくりはぐると、
自分に覆い被さるように美月が花巻の上で
うつ伏せ状態で眠っており、驚きから思わず
声を上げそうになったが、周りの状況を把握
して彼はすぐにそれを堪えた。
「美月、マジか。」
普段だとそんな事は絶対にしない思わぬ人物の
嬉しい添い寝にこれが果たして、現実なのか夢
なのか彼は判断がつかなくなり、混乱をする。
いやいやいや、落ち着け貴大。
美月に限ってそんなわけがない。
と自分に言い聞かせるように瞳を閉じた。
でも彼の腹部に当たっている、自分に無いやや
大きめの2つの膨らみの柔らかさや、添えられた
手が不意になぞる感触がぞわぞわっと彼の背筋
に響き、もう一度布団をはぐって確認をする。
やっぱりいる!!!
横も確認する為にちらっと覗いてみると、布団
から抜けだした跡を見つけてこれは現実なのだと実感をすれば、嬉しさで言葉にならず、彼は
ぐっと目元を抑えた。
なんてこった。
そんな彼女は頬が半分潰れた状態で、気持ち
よさそうに花巻の胸の上ですやすやと眠っていた。
「こんな所で寝て苦しくねーの?」
彼女の頭に触れれば一瞬ピクっと跳ねるので、
花巻は起こさない様に息を止めてみたが、
どうやら彼女は頭を撫でられるのが気持ちいい
のか、ふにゃりと力が抜けた顔で美月は
眠り続けている。
ヤバい、可愛すぎるんですけど。
花巻はそんな美月の髪を梳きながら撫でて
いると、細く指通りのいい髪の毛を触っていたら心地が良くなり、花巻はゆっくりと瞼を
閉じた。
女子ってこんなに柔らかいんだな。
強く抱きしめたら壊れそうな彼女を普段味わう
ことの無い花巻は美月の腰元に手を添えて
みたりもして、彼女の温もりを感じる。
「これは、男にはたまんねーよ。」
昔からいつも彼女の傍にいる及川と岩泉は
よく理性を保って彼女と一緒にいるなと
感心しながら花巻はしっかり深呼吸をした。
本当は彼女の布団へ戻さなければとわかって
はいるのだが、今このまま彼女を抱き上げて
しまえば、どうやら自分の欲に負けてしまい
そうなので、自分を落ち着かせるためにも彼女
の寝息に自分の呼吸をただ合わせる。
美月がそばに居るとこんなにも気持ちいい
ものなのだろうか
安心するものなのだろうか。
「美月、好き。」
彼女に呼吸を合わせると心が落ち着いて、
そのまま彼女と同じ呼吸をしていると、自然と
睡魔が襲い、そのまま彼の意識も遠のいた。
次に目が覚めたのは少し離れた所で聞こえる
美月のアラームの音。
花巻はその音を耳にして、彼女を起こさねば
とうっすらと目を開けた。
美月にもちゃんと、その音は聞こえており、
普段の習慣で目が覚めたご様子でおはようと
花巻が声をかけたら、彼女は恥ずかしさで
顔を少し歪ませて花巻の顔を見ていた。
『ごめん、私ったら寝ぼけて…!』
「美月ちゃんのえっち。」
困った顔をする彼女を見たらつい魔が差して、
悪戯心から彼がそう言えばら、顔を真っ赤に
しながら彼女は謝る。
そして、逃げようとする彼女の背中をわざと
ぎゅっと押し込んで起き上がる邪魔をすれば、
恥ずかしさを取り繕う様に彼の胸元のシャツを
くしゃりと握りしめた。
再び感じる柔らかい女子の感触と涙交ざりで、
『花巻のいじわる…』と言いながら、震える声
で頬をふくらませた姿は花巻からすれば、それはもちろんいい刺激に。
ちょっと待って美月ちゃん、それは反則
そして花巻のその後悔は既に遅く、その妙な
違和感は彼女にも伝わり彼女はさらに顔を
真っ赤にさせる。
『花巻、あの…』と美月の恥ずかしさに
限界が来て、少し泣きそうになりながら、
困ったように目を泳がせた。
『えっ、ちょっと…。どうしよう、
なんか硬いモノが当たって…。』
「・・・・あ。」
自分の主張がよりにもよって、彼女の下半身に
当たってしまい流石の彼女も何なのか把握した。
自分は余裕ぶっておきながらも、実は余裕が
無かったのは花巻の方で隠しきれない恥ず
かしい現状に2人の間には何とも気まずい
空気がもちろん流れた。
「ごめん、ちょっとトイレ行くわ。」
その後の2人は何処かよそよそしく…とゆう訳
でもなく美月が気を遣ってなのか何事も
無かったかのように花巻に話しかけるので
彼は逆に心を抉られる気持ちで彼女と
過ごすこととなってしまった。
『花巻、さっきは取り乱してごめん!
男の子だもん、しょうが無いよね。』
「…俺もう美月に頭上がんないわ。」