正直過ぎです
GWが明け、一つ目の試練の中間テストも美月の
ヤマ当てという助けもあって、見事に皆が
クリアし、いつも通りの日常が戻る。
そんな中、今日の美月は普段とは違った様子
で、珍しく落ち着きが無かった。
必要以上に時計を気にして見たり、授業の
終わりをそして練習の終わりをそわそわと
しながら待っていた。
『ごめん、今日ちょっと寄るとこがあるから
また明日!』
普段は一緒に帰っている及川、岩泉と今日だけ
は別行動を取りたいと、2人が呼び止める間も
無く彼女はそう言って一目散に走り出しす。
「美月、どしたんだろ。」
「なんか、参考書が欲しいって今朝教室で
言ってたけど。」
「ふーん。岩ちゃん、今日何日だっけ?」
「…なるほど、わかった。」
美月は2人が着いてきていない事を確認
したら、本屋へと急いで入り、そしてお目当て
の本を確認したら、一緒にファッション雑誌も
手に取りすぐにレジへと持って行き、支払いを
手早く済ませる。
その手つきは慣れたように早いもので、袋に
入っていたそれを見て、大切そうに、そして、
嬉しそうにぎゅっと抱きしめ、早く家に帰ろう
と店から出ると背後から「あら奇遇じゃん、
美月ちゃん。」と撒いたはずの及川の声がし、
驚いた彼女はビクッと肩を揺らし振り返った。
『おっ、及川さんと岩泉さん…?』
「ちょっと、何を改まった呼び方になってんの。
ここ、学校と違うんですけど?」
『なっ、何でもないです。』
あからかまに美月は何かを隠して口を尖らせ、
2人からは目を逸らし、出会ったのがまずいと
いう反応を見せている彼女をジトッとした目で
探るように2人は見つめた。
「美月、参考書買ったんじゃねーの?
その割にサイズがでけーなー。」
『おっ、おしゃれも勉強しようと思ってね、
服の雑誌も買ったんだー。』
「えー、俺も見たいな。美月の買った雑誌。
俺だって、気になるかもー。」
見せてよ。と言いながら、及川が手を差し出す
ので、彼女は素直に及川に雑誌を渡せば、
ふーんと言いながら、彼はそれを受け取る。
これは上手く誤魔化せていると彼女が安心する
のも束の間、及川は何かを見破るように眉を
ひそめた。
「もう一冊、あるんじゃないの?」
『えぇっ!!?』
「いいから出しなさい。」
「エロ本を買う中学生みてーだな。」
もう俺達はわかってるから諦めろと岩泉にも
お見通しだと言われてしまい、及川からは黒い
オーラを纏って言われるとさすがの彼女も
太刀打ち出来ないので、素直にもう一つの本を
諦めて及川へと差し出した。
『…はい。』
彼女が買っていたものは、月刊バリボー。
一見、バレーが好きな人間なら誰でも買って
いる雑誌なのだろうが、彼女の場合、買った
理由に問題が。
受け取ったその本をペラペラと及川はページを
捲り、ある部分を見つければその手を止めた。
「ウシワカ、発見。」
「ビンゴか。」
「美月が月バリ買う時は大体コイツ
が載ってるからさ。」
『コイツって言わないの!』
「…え?何、美月?」
彼女がそう言い返そうとすれば、普段は見る
ことの無い及川の鋭い眼差しに美月は手を
当てて、口を紡ぐ。
及川が淡々と表情を変えることなく岩泉に説明
をして、彼らの会話に少し恐れた彼女はビクッ
と肩が揺れ、両手を綺麗に伸ばして、そのまま
姿勢を正していた。
そして『2人とも機嫌悪くなるから』と彼女も
眉毛を八の字にして、珍しく拗ねた子供の様に 口元を歪ませると二人は呆れてため息を吐く。
以前から美月は白鳥沢学園高校の
主将、牛島若利に憧れを抱いていた。
彼が三人の前に現れてから、2人は大きな壁に
敵意剥き出しだったが、彼女は見事に彼の
プレイの虜となり、向こうとも及川達を
通じて、共通の知り合いとなってしまった。
美月は2人の気持ちを汲んでからなのか、
彼等の前で決して褒めた言葉は出さないが、
彼女が牛島に向ける視線は明らかに違い、
美月を日頃からよく見ている2人が彼女の
気持ちを分からないわけが無い。
憧れる人間は自由にしてあげたいが、その人物
が牛島となっては話は別。
まだ恋心に発展はしていないとはいえど、
見ていて気分のいいものでも無い。
「別に買うなとは言わないけど。」
「こそこそ買われるのも気に食わねー。」
でもやっぱり腹が立つから没収!と理不尽に
及川が取り上げて、自分の鞄にしまい込めば、
彼女は『酷い!』と嘆き、ほら帰るよ!と
及川に手を引かれたら3人で家路についた。
『牛島君、カッコ良過ぎだから。』
並んで歩きながら美月がポツリとそう呟くと
2人が「ん?」「あ?」と血管を浮かべて物騒な
表情で彼女を見るので、最後まで聞いて!と
怒りながら、彼女はぐいっと彼等の腕を引く。
『2人が…いや、みんなで勝ったら
もっともっとカッコイイなって思って、
今は彼の事知りたいなって。』
全国行くには少しでも多くの情報を知りた
かったと俯いて、彼女の言葉に嘘偽りが無い
ことくらいよく分かっている。
なので彼女にそんな事を言われてしまったら、
さすがに2人は何も言えなかった。
「もー、分かりました。」
及川は鞄から先程美月から奪った本を
「取ったのはごめん。」と彼女に返し、岩泉は
何も言葉は出さずに彼女の頭をクシャッと
優しく撫でた。
「俺らの為にありがとな。」
『感謝される事のものでも。』
「…にしても、ウシワカの情報収集が
ちょっと多すぎじゃない?」
及川の言葉にそれは!と顔を赤くし、自分から
指摘をした事なのだが、彼女の見たくない表情
を見てしまい、この話はもう終わりにしようと
及川は顔を逸らして呟いた。
頼むから、恋心には変わってくれるな。
2人が考える事は悲しくなるくらいに同じで、
本日何度目だろうとため息を吐く。
やっぱり、大事そうにその本を抱えている彼女
を見れば、2人はそれが気に入らなかった。
「そういえば美月ってウシワカの連絡先
知ってるんじゃなかったっけ。」
『・・・・。』
「あっ、美月。走って逃げた。」
「追いかけるぞ、及川。」