思わぬ雨の日
梅雨の時期に入るにはまだ早い本日は、
せっかくのオフ日がまさかの雨模様。
「今日は雨か。しかも珍しく美月が
まだ先に来ていない。」
さっきまでは晴れていたはずが突然打って
変わって、ザーザーと水滴が地面を打ちつけ、
傘をたまたま置いていた事に安心をする。
今日はよりにもよって美月との勉強会と言う
名の2人で放課後デートだったのにと彼女の
待ち合わせを学校の下駄箱で待っていた
松川はその景色をぼーっと眺めていた。
「…にしても、遅いな。」
普段待たせることの無い美月がしばらく待って
みてもなかなか来ないので、彼女の様子が少し
気になった松川は靴を履き替えていた彼女の
クラスメイトを見かけて彼女の居場所を聞いて
みた。
「牧野なら野球部の奴に呼び出され
てたけど。」
あ、これは告白パターンですか。と松川は
教えてくれたクラスメイトにお礼を言って
言われた場所まで彼女を迎えに向かった。
階段の人があまり通らない場所で人影と声が
したので、松川はそっとその場に近づけば、
美月の背中が見えて、案の定、彼女が野球部
の男子に告白をされている最中。
せっかくの二人の時間を割かれたくない松川は 美月の告白の返事を聞かせてあげる余裕なんて
ものは、もちろんある訳が無く、長い腕を
美月の胸元へ伸ばせば自分の胸元へぐっと
引き寄せた。
「お楽しみの途中で悪いんだけどさ。
ウチの子に手を出さないでくれる?」
低い声でニヤリと笑いながら見ている松川の
気迫に圧倒された告白の主は、彼に睨む様に
見下ろされてしまうと、何も言い返せぬまま
硬直し、そんな彼の事はもちろん気にかけず、
「じゃ、そうゆう事で。」と美月の
手を引いてその場を去った。
『ごめん、松川待たせちゃった。』
「今日に限って珍しく岩泉レーダー働いて
無いのかよ。」
『今日ハジメは、課題提出して無かった
みたいで先生から呼び出し。』
「そうゆう事ね。」
『松川来てくれたからホッとした。』
岩泉のいない隙を見て声を掛けたのかと
男らしくない行動が尚更彼をイラつかせた
が彼女の嬉しい一言でそんな事はどうでも
よくなる。
こうゆうの慣れなくて遅くなっちゃってと
断るのが苦手な彼女が困った顔で笑うので、
「気にしなさんな」と松川は美月の頭を優しく
撫でた。
「美月、転ぶから走らなくていいって。」
せっかくのお出かけの時間を割いて申し訳無い
と彼女が急げば松川はそう言って、靴に履き
替えた彼女の腕を転ばないように支える。
そして、校舎の玄関から見える景色を見て、
『しまった、傘を忘れた。』としょんぼり
とわかりやすく肩を落とすので、小動物
みたいな動作の彼女を面白いと松川は思い
ながら、彼女の前で自分の手持ちの傘を
ちゃんと見せた。
「俺は持ってるから安心しなさい。」
松川は、傘を忘れた美月とこの天候に感謝を
しながら傘をさし、美月は失礼しますと
少し恥ずかしそうにその中へ入った。
「今日は何処行きたい?」
『もちろん松川の行きたいところ優先。』
ご迷惑かけてしまったのでと言いながらへらっ
と笑う彼女はどこか危なっかしく、車道側に
引き寄せられるのか、行こうとするので
松川が歩道側へと誘導し、濡れないように
彼女の腰を引き寄せる。
気をつけなさいと言えばごめんと美月は
申し訳無さそうに顔を顰めた。
『松川、モテるでしょ?エスコートが
上手いよね。少しドキってしちゃった。』
普段から大人っぽいところもあるしと美月の
見上げて笑う顔が松川からしたら1番彼女の
好きな所で、自分も彼女にいい所を見せた気が
して、少しだけ彼は告白してきた野球部員
と傘を忘れてきた美月に感謝をする。
「美月、埋め合わせはこれでいーわ。」
もう少し、彼女を意識させてみたい。
『えっ、ちょっと!』
彼女の腰元に置いていた手を彼女の掌へ被す
ように組んで繋ぎ、周りから見ればそれは
恋人繋ぎ。
目を丸くして頬を赤く染める美月へ松川は
「今日だけ楽しませて」といじわるな顔を見せて
笑った。
「カフェにでも行きますか。」
『…お任せします。』
恥ずかしさから逃げようとする彼女を逃がさ
ないよう引っ張って、本当は今日だけじゃなく、
いっぱいこんな時間を楽しみたいと彼女に思い
を寄せながら、この天気も悪くないなと2人
並んで仲良く相合傘で歩き出した。