教室クエスト

朝練を終えてから教室に着いて、今日の授業は
何があったかを確認すれば、5現目にある古文
の資料集だけが、確かに入れた筈なのに鞄には
入っておらず、及川は忘れて来たことにため息
を吐いた。


「あー、やば。あの先生、いちいち当ててくる
から面倒臭いんだよね。」


及川は誰かから借りるべく、スマホのバレー部
3年と書かれたグループをすぐに開いたら、
「みんな助けて、古文の資料忘れた!ちなみに
俺のクラスは5限目なんだけど誰か持ってる?」
と他のクラスにいる仲間達にメッセージを送り、
すぐに既読のサインが次々と付いてくる。


一番最初に返信を彼に送ったのは花巻で、


「悪い、今日は古文が無い。」


そして松川からは「授業が被ってる。」


その後に湯田、志戸、沢内も持って来ていない
若しくは松川と同じく被っていると残念な返事
で諦めて他の人に借りようと考えているところ
に岩泉からも返事が来ていた。


「持っているがお前には貸さない。」


なんと、続けて及川が目にしたのは、腹が立つ
事に某有名怪獣が鼻をほじっているスタンプ。


「じゃあ、わざわざ言わないでよ!!」


岩泉の冷たい一言に返そうと思ったメッセージ
が思わずそのまま声に出て、及川の隣にいた
女子の肩が突然の彼の大声に驚いて跳ねたので、
彼はごめんねと彼女に謝る。


そして、最後の既読がついて、それは最後の
頼みの綱の美月だった為、岩泉と同じクラスの
彼女が持っていない訳がなく、彼女を期待して
少し待てば、彼の予想通りのありがたいお言葉
が返ってきた。


『私も持ってるから貸せるよ。
ウチは3限目で4限目は移動教室だから
昼休憩に来てくれたら嬉しいな!』


さすがの神様、女神様、美月様!


「サンキュー美月!」と投げキッスのスタンプ
を送れば彼女からも親指を立てた可愛い猫の
スタンプが返ってきて、思わず嬉しさで笑みが
こぼれる。


続けて松川と花巻が「キモイ」「ヤメロ」と送って
きて、岩泉は「及川を甘やかすな」と送り、
その後も何人か何かを続けて書いてはいたが、
彼はその後の文章は無視してスマホを閉じた。


長かった4限目の授業が終わり、やっと昼休憩が 来たと及川は腕を伸ばす。
そして忘れる前にと美月のいる隣の教室へ
向かおうと席を立ち扉をガラッと開ければ、
しまったと彼は公開するように一旦立ち止まった。


美月がいる教室は及川にとって、そういえば
厄介なクラスだった事を彼はすっかり忘れて
いたのだ。



美月の教室の扉を空ければ、バスケ部、
サッカー部にいた男子達と目が合い、彼らも
及川の顔を見た瞬間眉間にシワを寄せる。
及川は彼らを門番AとBと呼ぶ事にした。


「おやおや?及川さんが何の用で?」


「もしかして、牧野に用事か?
それなら、タダじゃここを通さねーけど。」


わかってるよな?とバスケ部の門番Aが指で
及川を招き入れ、袖をまくると目の前にある
机に腕を置いたので、及川も腕まくりをして
手を差し出し、その相手と手を組んだ。


「レディ…ファイッ!!!」


門番Bの掛け声と共にお互い自分の出せる力を
ぶつけ合い、腕力がある及川はすぐに相手の腕
を押し倒す。


「くそっ!!!」


「悪いけど、通してもらうから。」


悔しがる門番ABにそう言い捨てたら、彼らの
横をそのまま通り過ぎクラスメイトの女子と
話をしている美月の姿が見えたので、彼女へ
声をかけそうになれば、今度は柔道部の女子が
及川の目の前に現れた。


「ちょっと、美月に用事あるなら
私を通してからにしてよね!」


腕を組み、また及川を邪魔するように今度は
中ボスが現れる。
そして及川に向かって再び腕を差し出すので
彼はため息を吐いた。


「ちょっと、さすがに女の子に本気出せない
んだけど。」


及川はへらっと笑って彼女にそう言いながら、
掛け声と共にお互いの力をぶつけ合う。
力を抜けばこちらがやられてしまうと考え
ながら、ギリギリの所でなんとか及川が勝つ
ことが出来た。


「待って。君、本当に女の子だよね?」


めっちゃ強くない?と呼吸が少し乱れながら、
自分が危なかったことに彼は少し焦る。
すると、普段の及川だと絶対にありえない
ブーイングの嵐が女子から湧いて出て来て、
彼の背中には冷や汗が流れた。


「ちょっと、及川ありえないんだけど!」



「マジで女子相手に本気出す?」



「そんな大人気ない男にウチの美月は
渡せませーん。」


「ちょっと資料集借りに来ただけで、何で
俺はこんな苦労しないといけないわけ!?」


『ごめん、徹。本当は持って行こうとしたら
ハジメに止められちゃって。』


「美月が謝らなくていーの!
てか、やっぱり岩ちゃんか!」


「そうそう、美月がわざわざ手を煩わせる
ことじゃないんだから。」


「外野はうるさい!!!」


やはり、岩泉と美月との会話を彼らの周りの
クラスメイト達が聞いてしまったのが原因
だったかと及川は顔を顰めた。


他の女子が聞こえませーんと美月を隠して
見せないように抱きついて、及川との会話を
阻止しようとするので、彼はそれに少しイラッ
としながら、彼女達を見る。


すると「ちょっと、及川何とかしてよ!」と彼女
達が呼び出せばそこに岩泉が登場するので、
及川は唖然とする。
俺を倒してから話をつけろとラスボス感を出し、
腕を机にドカッと差し出すので、岩ちゃん、
ノリノリかよ!と彼にツッコミながらも及川
も自分の腕を差し出した。


「ゴリラ並みの岩ちゃんに俺が勝てるわけが
ないじゃん!」


「よし、今のは悪口と捉えたので及川、
容赦なくへし折ってやる。」


「岩泉勝って!美月を護って!」


「あんたなら殺れる!!!」


「ちょっと待って、物騒!!!!
しかも及川さんの応援1個も無いじゃん!」


「及川みたいな不特定多数の女子が寄る男
なんかに美月は渡しませーん。」


「私達が認めてあげるのは岩泉若しくは
1組の松川だけでーす。」


「ぐぬぬっ!!!」


『待って、私の意見聞かないのね。』



彼女達の野次の言葉に及川はムキになって、
岩泉は珍しくいい顔してやがるとお互いの
掛け声と共に再び容赦なく譲ること無く腕の
力を押し付ける。


たまたま廊下を通った花巻や松川もこの光景を
目にして楽しそうに傍観し、最後は結局、美月が試合前にやめなさい!と資料集で2人
の頭をパシンと叩くことでこの戦いは静かに
幕を閉じるのだった。


「岩泉と美月のクラス、ほんとみんな
仲良いから楽しそうだよなー。」


「自分のクラスよりも馴染んでね?
腕相撲大会、一緒に楽しみ過ぎだろ。」





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