予習ももちろん忘れずに
本日の昼休憩の美月は、友人の誘いを用事
があるからと断って、昨日の時点で自分と岩泉 のお弁当も明日は作れないと連絡済みで、一人
机に座ってとある事に集中をしていた。
買っていたパンを片手に齧りながら、月バリを
ペラペラと捲って読み、それを食べ終えたら
ノートを出して、交互に見ながら、何かを
書いていく。
「弁当のおあずけの理由はそれか。」
美月が作らないなら私もと自分の母親からも
弁当のおあずけを食らってしまった岩泉が食堂
から戻って、席借りるぞと美月の前の席の
持ち主に言って、椅子に跨って彼女と向かい
合わせになると、ノートとその本を見た。
「おい、これ県外の学校じゃねーかよ。
しかも先月号のやつ。」
『徹から借りた。今月は持ってるし、
もう県内の学校は収集済みだから。』
これは予習と言って、彼女が開いているページ
は「優勝候補、強豪校特集!」と書かれており、
岩泉は先日の牛島が載ったそれを大事そうに
抱えていた美月の表情を思い出して、少し
眉間に皺が寄る。
だが過去の不満をグチグチと言うのは彼の性分
には合わない事なので、黙って彼女の書いた
ノートをそのままじっと見ていた。
『気が早いかなと思ってたけど、予選が
終わったらすぐだしグズグズしてられない。』
「ほぅ、白鳥沢はもうぶっ潰す予定か。」
『簡単じゃないだろうけど、その気で
行かなきゃ間に合わない。』
彼女が彼に『私、間違ってる?』と尋ねたら、
もちろん彼は「間違ってない。」と否定をし、
お互いニヤリと笑い合った。
「あ、ハジメ。見て見て。」
再び、本に視線を戻した時に美月は
ページの
角が折られている事に気が付き、岩泉のシャツ
を引っ張り、その彼女が指すページには、
最強の挑戦者稲荷崎高校男子バレーボール部と
書かれた見出しと共に高校生No.1セッター、
宮侑!との文字に2人は目を見合わせた。
『徹、この子の事めっちゃ意識してる。』
「…みたいだな。」
『宮侑君ってテレビにも出てたよね。』
「ここはよく特集組まれてるからな。」
この記事を読んでいる時の及川の顔を想像して
しまった2人は吹き出し、笑い過ぎから、少し
呼吸困難に陥りそうになったが、落ち着きを
取り戻し、美月は記事を一通り目を通す。
美月は彼の写真もじーっと見て納得をしたのか、
『あー、なるほどね。』と頷きながら、彼女は
無意識なのかリズミカルにトントンと彼の写真
を指で叩いた。
『宮侑君と徹、タイプと学年は違うけど、
似た共通点が多いから、自然と目についたって感じかな。しかも、高校生No.1てあったら
少し鼻に付いてしまったと見た。』
女の子にモテる、凄腕セッター、サーブも魅力
的と彼女が指折り数えれば「認めたくないがな」
と言いながらも腕を組んで頷き、顔のタイプも 違うけどカッコイイ子だねと美月が言えば、
ピクリと岩泉の耳が動いた。
「お前、そうゆうヤツが好みだったか?」
『うーん、このタイプは徹だけで私は
十分満足かな。』
普段の苦労を思い浮かべながら、困った様に
眉間に皺を寄せる彼女の「同じのはいらない」と
言う言葉に岩泉は可笑しくなって再び吹き出した。
すると、美月は宮侑の性格を人当たりは良さ
そうには見えるが、内面は癖が強そうな匂いが すると分析する様に言いながら、ペラっと次の
ページを捲り、高校バレー界の最強ツインズ
宮兄弟と書かれてあるそのページには同じ顔
した宮侑の紹介に。
『そういえば、双子だったね。』と彼女が
言えば、岩泉も同じポジションに気になり、
同じ様にそこの記事にも目を通す。
『宮治君も穏やかそうに見えて、この子も
意思が凄く強そう。あ、じゃないと
強豪のレギュラーは勤まらないか。』
「他人は人相だけで捉える箇所は鋭い癖に
自分の事になると鈍いよな。」
『え?なんか言った?』
「何でもねーよ。」
『あー、こっちは嫌いじゃないかも。』
「は?!」と岩泉が反応すれば、彼女は指差し、
プロフィールの好きな食べ物「めし」と言う文字
を見て、この子可愛いとクスクス笑いながら、
『ご飯を美味しそうに食べてくれる人は、
凄くいいと思う』と言って美月は頬杖を付き、
岩泉の顔をじーっと見た。
「…なんだよ。」
『これまたタイプは全然違うけど、案外共通点 はあるかもしれないね。ハジメも美味しそうに
いつも食べてくれるもんねー。』
「〜〜〜っ!」
照れている岩泉に構うことなく、美月はノート
につらつらとメモを取り、どうしてこいつらは
付き合わないのかと見ている周りがもどかし
そうに二人の会話を耳にする。
そんな周りにも気が付いていない美月は、
双子の呼吸と阿吽の呼吸、戦ったら勝つのは
どっちかな?と楽しそうに話す彼女は楽しそう
に記事を読む。
そして次のページを捲りながら、その記事を
読むと表情の雲行きが変わり、悲しそうな遠い
目をした。
『ハジメ駄目だ、この学校にはウチには
無いものを持っているみたい。』
「そりゃ学校が違うから仕方ねーだろ。」
そういう問題じゃないからと彼女は首を振り、
はぁと悲しそうにため息を吐く。
『北信介君、同級生とは思えない落ち着きぶり。
ウチもこんな主将が良かったと不覚にも
思ってしまった。このなんとも言えない感じ、
烏野の澤村君以来なんだけど。』
そこの主将の写真と記事の内容を目にすれば、 岩泉も座った目で同情する様に彼女の肩に手を
置いた。
「美月、前にも言っただろ。
そこは残念だが諦めろ。」