結局こうなる

会場について早々、荷物を後輩達に手伝って
もらいながら、美月は忙しく動いていたが、それ
が落ち着けば、レギュラーメンバーの所へ
並び、そのまま一緒に会場へと入る。
入って早速、彼らは他校からの注目を浴び、
その視線の先は、もちろんその中に紛れた彼女
へも。

可愛い、狙おっかな等、彼女の隙を狙った言葉
を耳にすれば、彼女を挟む岩泉と松川がギロリ
と鋭く睨んで、彼らならではのオーラで圧倒
させる。

二人の視線に耐えれなかった周りは、目線を
明後日の方向に向けながら、彼女へ声をかける
事を諦めていた。

そんな中、この列の中に一人だけ欠けている事
に気がついた入畑監督が矢巾に向かって「及川は
どうした?」と問いかけると、彼は「えーっと。」
と目を逸らして、気まずそうに言葉を濁す。


「なんだ。」


「外で他校の女子に捕まってます。」


入畑監督も溝口コーチも美月を見るが、美月は
我関せずといった態度でそっぽを向き、『私は
今日は知りません。』と聞く耳持たないので、
次の矛先は岩泉へと行く。


監督が「…岩泉。」と一声かければ、岩泉は
「ハイ。」と皆と反対方向へ体を向けて、及川の
方向へ向かおうとすれば美月は笑顔でボール
を彼へ渡した。


『ではでは、お願いします。』


「…やっぱり、お前も来い。」


その後のフォローが無理に決まってるとボール
を持つ美月の手をぐいっと引っ張れば、彼女
は遠慮しますとそれを拒む。


『離して、ハジメー!!』


「うるせー、いいから行くぞ。」


痺れを切らした岩泉は、ずるずると彼女を引き
づるのが煩わしくなったのか、軽々と美月を
持ち上げ、そのまま肩に担いだ。

美月は持たされたボールでぽかぽかと叩いて
抵抗するも、彼女の攻撃は岩泉には適わず完敗
して、そのままの状態で及川達のいる所へ岩泉
に運ばれながら向かった。


「アイツら傍から見たらヤバいだろ。
岩泉の奴、無意識に尻叩いたぞ?」


「美月がジャージでよかった。
いや、よくねーんだけど。」


「制服だとパンツ丸見えでしたね。」


松川、花巻、矢巾が順番が言葉を零しながら、
美月の心配をしたが、サクサクと歩く岩泉に
よってその姿はすぐに消えたので、そのまま
それ以上は何も言わずに2人を見届けた。


『…ハジメのバカ。』


恥ずかしさで観念した美月は入口で下ろされ
れば、頬を膨らませるとボールを岩泉に渡す。


そして女子の声がする方向へ向かうと、肝心の
及川は女子から嬉しそうに囲まれて、笑顔で
プレゼントを受け取っている最中で、女子から
の差し入れを呑気に「これ、美味しーい。」と
口にしており、思わず岩泉と美月はじっとり
とした目でお互いを黙って見合わせた。


「本当に手作り?」


「夜更かししました!」


「うわ、嬉しーい。ありがとう。」


1人の女子から写真いいですか?と頼まれれば、
彼は断ること無く「え?写真?」とすぐにその
女子にOKサインを出す。

「もちろんいい…」と言う前にバゴンと彼の頭に何かが当たり、それと同時に女子達の悲鳴が
した。

その音は返事をした瞬間に岩泉が全力でボール
を投げたからで、それは綺麗に弧を描き、岩泉
の手元へと綺麗に戻る。


美月は彼のボール裁きに少し感動し、心の中で
お見事と彼に拍手をした。


「監督にもぶたれたことないのに!」


及川が半泣きで後頭部を押さえながら振り返る
と、目を血走らせたまま、顎だけをクイッと
動かして指示をする岩泉の横で美月が時間を
見て!と口パクで入口を指さす。


及川はそんな二人の動作を見たら、「…ゴメン、
写真はまた今度ね。」と彼女達に別れを告げた。


「えぇー。」と彼女達のガッカリする声を聞き
ながら、岩泉が行くぞと声をかける前に美月は
及川と入れ替わるように、謝りながら彼女達の
方へと走って向かった。


「青葉城西高校のマネージャーです。
ごめんなさい。及川の時間が無くなって
しまったので、私が代わりにあなた達の
差し入れ渡しておきますね。」


彼女達は突然現れた美月に戸惑った様子だった
が、彼女が『責任持ってちゃんと届けます』と
手を差し出せば、彼女達も手元にある及川への
差し入れを美月に渡し、彼女はそれを笑顔で
受け取った。


『すごい。及川の為に一生懸命時間かけて
作って来てくれたんだよね、私にも伝わって
きちゃった。』


「えっ?」と彼女の言葉に驚いて目を丸くさせる が、彼女は微笑んで『及川が喜ぶよ。』と
一人一人を褒めながら丁寧に受け取った。

彼女達の差し入れを一通り受け取ったらぺこり
と一礼をして、その場を去り、彼女達は少し
頬を染めながら美月の後ろ姿をただじっと
見ていた。


いつもの癖で、ジャージのポケットに持ち運ぶ
用の袋はちゃっかり入れていた様で、彼女は
慣れた手つきで袋をすぐに出して、抱えた荷物
を丁寧 且つ迅速に移し、美月はそんな自分に
可笑しくなりながら走って二人の元へ行く。


岩泉は一言、彼女へ「お疲れ」と労いの言葉を
吐けば、彼女は纏めた袋を及川に『んっ。』
と差し出して持たせた。


『今日はしないと決めていたのに、勝手に体が
動いてしまいました。』


「美月、いつもごめん。
そしてありがと、助かるホント。」


自分の為に動いてくれた嬉しさ半分で、申し訳
無さそうに彼は受け取ると、美月は何も
言わずに彼の額を指で弾いて階段を駆け上った。


『今日は私も昨日の及川との約束守るの
やーめたっ!』


「えぇー!!!」


『今から、飛雄にいーっぱい手を振って
あげなきゃ。』


イタズラ混じりの笑顔を見せながら、楽しそう
に走り出す彼女に、彼は今日はしょうがないと
諦めながら、待っていた仲間と達合流すれば、
やっと帰ってきたかと皆が彼らに一息吐く。

そして、階段から話が聞こえていた松川と花巻
は及川の手元を目にして、呆れた顔で二人と
美月を交互に見た。


「及川、お前のせいだぞ。」


「連れてった岩泉も同罪。」


「さすがにすまん。」


結局、及川が立たなくとも国見と金田一が練習
試合同様、彼女の壁になるので、「潔子!」と
親友同士の挨拶は出来ても影山への挨拶は
難しい事に変わりは無いのだが、その後悔は
さらに後に続くこととなった。


『なんか二人の壁がすごく高い。』


「国見ちゃんも金田一も大変良く出来ました。」




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