帰り道の雑談

テレビのインタビューを受ける及川を避ける
ように岩泉の背中にこそこそと隠れていたら、
自然と帰りのバスは美月と岩泉は一緒の席に
座り、それに納得いかない及川は、後ろで不貞
腐れる様に頬をふくらませていた。


「美月、そこまで避けることないよね?」


『ごめん、本当に苦手なんだもん。』


「嫌なもんはしょーがねーだろ。」


お前が目立ちすぎんだよなーと、及川の隣に
座る花巻も横目で冷たい眼差しを送れば、
爽やかな顔で妬まないで2人ともと笑顔を送る
ので、及川の後ろにいた松川と後頭部を狙って
前にいる岩泉は額を狙って同時にチョップで
彼に制裁をした。


「まっつんまで酷くない!?」


「すげーイラってしたからつい。」


「後ろに同じく。」


「美月も割と目立つタイプだから、
テレビはそりゃ映そうとするよなー。」


「あ、確かに。絶対、1回は映るよな。
応援してる女子代表って感じで。」


頭を押えて怒る及川は無視をして、松川と花巻
は美月にそう話を切り出せば、2人の言葉を
聞いた彼女は、あからさまに嫌そうな表情を
見せていた。


『えっ、知らなかった。』


「お前、テレビ確認したことないわけ?」


『全くない、見ない。』


「え、俺の出演チェックしないの?」


『わざわざ、しないよー。』


「他校の番組とかは見てるのに?」


『それは知らない情報得る為にだよ。徹とは
ほぼ毎日会ってるし、こちらはよーく知って
いますし、本物見てたら既にお腹いっぱい!』


「確かに胸焼けレベルだな。」


幼なじみ達の辛辣な言葉に松川が笑い、
ですってと花巻の語尾にはハートマークが付き
そうな喋り方に、及川は悪態をつく。


他にも可愛い女の子沢山いるじゃん!と及川の
チェックどころではない彼女は頭を抱えて嘆き
ながら、目立つと言われる理由を必死に考えて
いた。


『やっぱり、私が観客の子と比べたら、
大きいから?』


「え、大きいって…胸が?」


「てめーは、どこ見てやがる。」


『花巻って、時々びっくりするくらい
デリカシーが無いよね。』




彼女が胸元に腕をクロスさせて隠す様に手を
添えると、花巻はその格好が逆にエロいと
喜び、更に後ろにいる松川からは及川が邪魔
をして全く見えないから席に不満を持ちながら
軽く舌打ちをし、及川が驚いて少しはねた様子
を見せる。


岩泉も突然のセクハラ発言をする花巻を怒り
ながらも無意識に目線はちらっと横目に彼女の
胸元を見ていた。


すると、それを見透かした及川は「岩ちゃん
だって見てるじゃん。」と指摘しようとするが、
美月に気づかれたくなかった岩泉に凄い形相
で睨まれるので、何も言葉には出さずに、ただ
黙っていた。
そして、松川の言葉でさっきの話に再び戻る。


「ほんと、美月は自分の事になると
疎いよな。」


「だよねー。可愛いって言ってるのに、
全然こっちの話聞いてくれないし。」



『ちゃんと自分のことはわかってるつもり
ですからね。そして徹の可愛いは当てに
ならないから。』


「いやいやいや、わかってるじゃねーよ。
お前今日他校の奴に結局、何人絡まれたか
わかってんのか?」


岩泉は腕を組みながら、呆れた様にため息を
吐いて、本日の出来事を思い返すように話し
出す。及川も岩泉の言葉に「そうだ!そうだ!」と賛同をした。



「美月を気にしていたらキリなくて
めっちゃ疲れたもんね!」


「いや、お前が言うかよ。」


花巻は及川にツッコミを入れながらも確かに
今日は試合よりも彼女に悪い虫が付かないよう
にガードする方が疲れたと4人共に同意見だと
語り出す。



「試合中に手を振って来る奴はいるし。」


「目を離した隙に連絡先聞かれてるし。」


「突然、アプローチかける奴はいるし。」


「ウシワカは美月の前からそろそろ
消えて欲しいし。」


松川、花巻、岩泉、及川の順でぼやけば、
眉間に皺を寄せて4人が一気に美月に
視線を送るので、彼女は自分にはどうしようも
出来なかった出来事なのにと思いながら苦笑い
を見せる。


『私の場合はモテるんじゃなくて、
青城のデータが知りたいんじゃない?』


私に近寄ってなにか掴みたいだけだと思うよ
なんて、呑気に言い退ける彼女は『頭痛く
なってきた』と結んだ髪の毛を解いてほぐし
ながら、ふんわりと甘い香りを漂わせる。


「あー、無意識ほんと怖い。」


「何故同じ汗かいてもいい匂いする?!」


「いい加減、こっちの身が持たねーよ。」


「明日から他校の奴と話すの禁止で。」


及川は自分の肩を抱いて震え、松川と花巻が
両手で顔を覆ってしくしくと泣き真似を見せ
れば、彼女の長い髪の毛を隣で手に取る岩泉は そう言って指で絡めながら手遊びを始める。


『だからハジメまで、何でそーなるの!』



「美月の友達の烏野のマネちゃんなんて、
美月がすごくお世話になってるから
声をかけたんだけど、こっちの事は
まるで完全に無視だったよ!」


『潔子ならやりかねないね。』


声をかけながら手を振る及川を清水が無視して
通り過ぎる様子は美月はすぐに頭に浮かび、
肩を揺らして彼女の塩対応に笑っていると、
及川が「彼女を少しは見習って!」と怒り出す。


「それは、及川だからじゃないのか?」


「ああ、それは一理ある。」


松川と花巻の正論が更に美月のツボに入り、
確かにとお腹を抱えて笑えば、再び不貞腐れた 及川はもう知らない!と頬に手をついて、
窓から見える景色を口を尖らせて眺めていた。





top