息抜きしてください

帰りのバスでの会話の後に影山とも顔を合わせ
ていた事が判明した美月は、焼きもちを妬いた
後輩達からも他校への対応の注意を受けて、
嫌気がさしたようにバスから降りた。


ある程度の片付けを直ぐに済まして、職員室へ
今回の烏野戦と伊達工戦が録画してあるDVDを
取りに行けば、丁度今日の試合のニュースが
流れてテレビ画面が目に映った。


『初めて見た。』


今回は及川が注目を浴びているせいか、青城が
テレビに映っている時間は長く、上手く避けて
いたと思っていたのに周りが教えたように自分
の姿もバッチリと映っており、しかもアップの
ピンで映し出されていたので、彼女はそれを
目にして、頭を抱えた。


まさか、自分がここまで目立っていたとは、
思ってもみなかった様で、呆然としてその画面
を見る。


「今回もバレー部は大活躍だな。」


『ありがとうございます。』


出来上がったDVDを受け取った彼女の表情は
曇らせたまま、その足取りは重く、及川の
インタビューは見ることはなく明日に向けて
の調整中の及川達がいる体育館へとそのまま
向かった。


『徹、これさっき言ってたやつ。』


「美月、サンキュ。…どうしたの、
何かあった?」


『いや、別に。』


及川はあからさまにテンションが低い美月を
不思議に思い首を傾げると、彼女は笑うこと
無く首を横に振った。
そして預かったDVDを及川へ手渡すと、ふらー
っと金田一の元に近づいて行く。



「牧野さん、どうしたんスか?」


美月は金田一の背中にぴっとりと額を寄せて
ひっついてきたので、普段と違う彼女の様子に
驚くように、彼女の方に首を向ける。


すると彼女はそのまま何も言わず、両手を金田一
の内腿あたりに手を這わせたと思ったら、
突然むにむにと効果音がつきそうな力で、
そこを揉み始めた。


「えっ!!?ちょっ、えっ!!!
牧野さんっ!!?」


『もー嫌だ。目立ちたくないのにテレビ
出てるし、みんなからクレーム来るし。
別に自分からやってる訳じゃなのに。
しかも他校と絡むの文句言われてるけど、
徹のファンの子の整備だって、嫌では
ないけど大変なのに。私ばっかり…』


むにむにむにむに


美月は顔色一つ変えることなく、淡々と何か
を吐き出しながら、しなやかな手つきで金田一
の主には内腿を攻めるように太腿をひたすら
揉み続ける。


渡と矢巾は以前経験した事がある様子で、彼女
の行為を目にして、青ざめた顔で始まって
しまった!と心の中で叫ぶが巻き込まれるの
を恐れて、足を止めた。


美月のストレスがピークに達した時に起きて
しまう、彼女からの逆セクハラ。


金田一は彼女の突然の大胆な行動に恥ずかしさ
で動揺して動けないまま、されるがままで彼女 から受ける刺激に震えながらも立っているのが
精一杯。


隣にいた国見は対象が自分じゃなかった事に
ショックを受けて、固まっていた。
そして、金田一の見たことない反応に少しだけ
戸惑いが。


『金田一の鍛えられた大腿四頭筋を触ってたら
なんか落ち着く。』


「んあっ、ちょっと、そこはっ!!!
俺が落ち着きませんっ!!」


「ちょっと待って、美月は後輩に
何やってんの!!?」


傍から見たら2人の行為は卑猥に見え、金田一
の喘ぎ声に近しい悲鳴に先輩達の方が耐えきれ
なくなり、松川と岩泉が血相を変えて、2人の
元へと駆けつける。


「馬鹿美月!金田一には刺激が強すぎ
んだよ!!!」


「わかった、わかったから、これ以上苦しめて
やるな!」


「美月ごめん、俺達が悪かったって!」


「おい、誰かコーチと監督呼んでこい!
ミーティング始めてさっさと帰るぞ!」


花巻の呼び掛けに渡が走って呼びに行き、岩泉
が落ち着け!と羽交い締めで美月を止めたら、
松川は「生きてるか?」と崩れ落ちた金田一を
心配して様子を伺うように、背中を撫でて
いた。


「松川さん、俺っ…、俺っ!」


「何も言うな、金田一。大丈夫だ、
今のは誰も太刀打ち出来ねーよ。」


及川と岩泉は必死に彼女を落ち着かせ、帰りに
好きなアイス買ってやるからと宥めたら、その
動きはピタリと止まり、ニッコリと2人に笑顔を
向けると、『ミーティング、始めよっか。』と
ホワイトボードをいそいそと出し始めた。


「3年生にはしない所が。」


「本能のまま動くんだろーな。」


辺りはすっかり暗くなり、美月は片付けを
済ませると部室まで階段を駆け上がった。
部室の扉まで行くと、金田一と国見が「お先に
失礼します。」と中に残っている岩泉と及川に
挨拶をしていた。


『2人ともお疲れ様。ハジメと徹はまだ中
にいる?』


「いますよ。中入っても大丈夫っすよ。」


『了解、あっそうだ。金田一、今日は
軽率な行動をしちゃって本当にごめん。』


「あっ、いや。全然大丈夫っす!」


冷静になった美月が両手を合わせて謝ると、
金田一は先程の行為を思い出して頬を赤く
染め、頭を掻きながら顔を逸らす。


『…触られるの嫌だったよね?』


「俺は牧野さんからだから、寧ろ
嬉しいんですけど…!」


と言葉を続けようとしたら、逆に自分が変態
臭い発言をしている事に気がついた金田一は
その言葉を飲み込む。


『じゃあ、よかった。嫌われちゃうかと
思った。』


「牧野さんを嫌いになるわけない
じゃないですか!」


少し安心した顔をする美月と彼女を必死に
フォローをする金田一の2人のやりとりが気に
入らない国見は、不服そうに眉間に皺を寄せて
「こいつなら、大丈夫ですよ。」と彼の背中を
押して、前に進もうとする。


「俺だっているし。」


『ん、国見?』


「俺のでよかったらいくらでも触らせてあげ
ますから。」


『えぇっ!!?』


国見の大胆な発言に、今度は金田一が馬鹿
言うな!と焦った様子で彼の手を引いて、
「失礼します!」とその場からすぐに走るよう
に去った。
国見は軽く舌を出していたが、その姿は彼女
からは見えず、彼女の目は点になりながら、
とりあえず彼らが見えなくなるまで手を
振った。



『2人とも入るよー。』


ノックをして扉を開けたら、2人ともロッカー
の荷物を片付けている所で、彼女は2人を待ち
ながら、近くにあるパイプ椅子に座った。


『明日また今日と同じ時間に徹の家に
行ったらいい?』


「うん、それで宜しく。」


『ハジメ、おにぎり2個でいい?』


「おぅ、鮭とツナマヨ食いてー。」


「まさか、おにぎりまで作ってるの?」


『徹もいるなら、徹の分も作るよ?』


「いる!!!岩ちゃんと同じで!」


及川が返事をし、ご機嫌な鼻歌交じりに手元に
持つDVDを片手にしまうと、岩泉はそれを
見ながら「おい」と及川に声をかけた。


「くれぐれも夜更かしなんかすん
じゃねーぞ。」


「岩ちゃんは俺のお母ちゃんですか。」


「…あ?」


及川の発言に苛立ちを見せた岩泉は睨む様に
及川にがんを飛ばすので、それに焦る及川は
即彼に誤り、「コンディションは万全で行く
から!」とフォローを入れるも時は既に遅し。


「くだらねぇ事を言い出してんじゃねぇよ
クソ及川!部室閉めんだからちんたらして
んじゃねーよ、グズ川。」


「悪口を略さないで!」


「グズ及川!」


「言い直さなくていいから!」


見兼ねた美月もハジメ落ち着いて!と彼を
宥めるも意味はなく、及川を置いていくように
彼女の手を引いて、部室をあとにした。


『心配なら徹の家泊まりに行こうか?』


「待って、逆に寝れない!!!」


「俺が添い寝してやろうか?」


「生きた心地しないからホントやめて。」










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