道は開かれた

及川のそれは今日1番の最高で、美月は
綺麗だと見蕩れるように呟けば、弾き飛ばした
チャンスボールをその流れに乗るかのように
後輩も彼女に言った通り、有言実行。

最後までスタミナを残していた国見がチャンス
ボールを何度も打ってチームの逆転へと繋いで
いく。


『無気力に見せかけて、終盤に活躍してくれる
のが、国見の魅力。』


『英ナイスキー!』と彼女が叫べば、彼も
嬉しそうに仲間や彼女に向けて笑い、及川は
ちょっとこのまま聞いて!とみんなに何かを
話しかけ、美月も彼の口元を見ながら、
捉えた言葉にしっかりと笑顔で頷いた。

及川が打つフェイントに揺さぶられ、向こうの
体勢が一旦崩れるも、何とか持ち上げて東峰が
力いっぱいに打てば、渡がそれをカバーし、
繋ぐように岩泉が攻撃をする。


向こうも粘りを見せてそれを上げ、上がった
ボールを金田一が叩き落とすも西谷に止められ てしまった。


飛雄の表情、行動、このタイミング


『うん、いい感じ。』


飛雄の一人ぼっちじゃない姿に安心して、
急成長に焦らされて乱されて、でもやっぱり
彼は凄いと驚かされて


ごめんね飛雄、でも勝たせてはあげれない


影山が体勢を立て直し、日向と共に繋いだ攻撃
は神業だと読んだ目の前の3枚のブロックが
止めることによって、ここで自分たちの勝利が
確定をした。


崩れている飛雄を一瞬だけ自分の目線に入れ、
そのまま声をかけることは無く、美月も彼ら
の元へと駆けつけると、及川と岩泉が彼女を
待っていたと引き寄せながら、彼女の頭を
くしゃりと撫でた。


元の位置へ戻ると互いに整列して挨拶し、相手
の監督達にも挨拶をした所で、彼女は顔を
しっかりと上げた。


そこでやっと、美月達は親友の顔を見た
のだった。


『潔子ごめん、先に行く。』


美月の真っ直ぐな瞳が彼女を見つめ、
彼女の言葉に清水は黙って頷く。


そしてそれ以上は互いに語ることなく背中を
向け、彼女達はチームメイトの方へと向かって
いった。


『上手く読めたね。』

及川とタッチを交わした彼女が、ゆっくりする
時間などある訳がなく、次の対戦相手が入って
くれば、すぐに美月には次の試合に向けての
準備が始まる。


『次は泉石とだから水分摂ったら、
セカンドユニフォームに着替えてね。』


彼女がそれぞれに呼びかければ、岩泉はすぐに 彼女に言われるまま、セカンドユニフォームを
手に取り、着替えながら及川に話をかけた。

「1人だけ上手くても勝てないんだよドンマイ☆
…って言ってやるんじゃなかったっけ?」


「…1人だけが強いワケじゃなかったじゃん、
烏野は。」


「お前めんどくせーな。」


「酷いな!」


着替え終えたユニフォームを岩泉から受け取り
ながら、美月も彼らの話に耳を傾けると、
岩泉の辛辣な態度に美月はクスクスと
笑っていた。


『飛雄、前よりも更に成長してたもんね。
さすがの意地悪な徹でも言えないよ。』


「え、俺って意地悪?」


『すっごく意地悪。』


美月から自分はどう見えている?と一瞬だけ、
及川は顔をポカンとさせるも、彼女は及川からユニフォームを受け取れば、鼻歌混じりで
また別の場所へと移動したので、さっきの話は
彼の中では聞かなかったことに。


一通り預かったユニフォームを綺麗に畳んで、
それぞれの彼らのカバンの上に置き、一旦、
やるべき仕事が済んだところで、美月も
羽織っていたジャージを勢い良く脱いで、
Tシャツ一枚の姿になり、それによって暑さ
から一気に開放感へ。


自分の身支度が整って、美月へ声をかけよう
としていた国見は、彼女がジャージを下ろす
仕草を見て、その姿が妙に色っぽく見えて、
彼の胸は一瞬、ドキッとしていた。


「美月ー、後輩が顔赤いぞー。」


珍しい国見の反応を面白がった花巻が茶化す様
に彼女に声をかければ、手を仰ぎながら着替え
ている仲間を見て、美月は彼らを羨まし
がっていた。


『暑っつい!応援気合い入れたら汗が。
いいなー、私も着替えたい。』


「ここで?やだ、美月ちゃん。」


『もー、突っ込む体力無いんですけど。』


花巻へ冷ややかな態度を見せるものの、美月は
襟元曲がってる!とちゃんと彼にもお世話は
焼いてあげ、それをされたら花巻も照れ臭くて、
少し黙る。

そしてそれを少しだけ羨ましそうに見ていた
国見に、彼女はどうしたの?と首を傾けた。


「美月さんも今のうちに少し休んで
ください。」


彼女はそうだねと素直な返事で微笑んで、
やっと自分も水分を補えば、予想以上に水分
を欲していた体にどれだけ必死だったのかを
思い知る。


『いっぱい、叫んじゃってたもんなぁ。』


「だから言ったじゃないですか。」


「お前、やっと水分摂ったろ。」


松川からも指摘を受けてしまえば美月は悪戯
がバレてしまった 子供のように体が跳ねた。


『大丈夫、まだまだ元気。』


もちろん松川のその言葉を聞けば、及川と岩泉
も少し怒った様子で目が笑わないまま、彼女を
見るので、彼女は国見を壁にしてピッタリ背中
合わせで2人から隠れるように水分を摂った。


国見はドキドキとする心臓の音を聞かれたく
なくて、少しだけ、彼女との距離を取るのに
1歩だけ前に進んだ。


そして、彼女は喉の潤いが充分に満たされれば、
再び試合の準備が始まり、忙しく動き出す。


「美月、今日はそのままでいてね。」


『え、何のこと?』


それぞれの調整を終えて、互いに挨拶を交わし たら、試合が始まる前に及川が美月にそう
言うので、彼女は彼が言うそのままという意味
がわからず、及川に問い質す。


「俺に夢中で周りが見えてなくて、
さっきからずっと徹って呼んでる。」


『え、嘘!?』


「ホント。だからさ、今日の美月は
…最高。」


褒め言葉が恥ずかしくなった彼女が、目を少し
潤ませて照れる姿は及川を尚更刺激して、この
ままハグしちゃう?と及川が悪戯心を混ぜて
両手を広げて彼女に笑えば、美月は慌てた
ようにそんな余裕なかった?と手で口を覆う。


「もう周りなんて気にしなくていいよ。」


彼がそう言って、美月に一歩近ずいて、
そのまま彼女を閉じ込めてしまおうと、肩を
動かそうとすれば、それは上手く力が入らなく
なる。


「じゃあ、俺が抱きしめるわ徹。」


後ろから迫る大柄な男の抱擁に及川の顔は
サーッと青ざめた。
周りなんて気にしないと松川がふざけながら
耳元で囁けばそれは鳥肌モノで、片方の腕は
彼の腹部に手を回し、もう片方は頬に添え
られ、及川の背筋には、ぞくぞくっと冷たい
ものが伝ていった。


「俺じゃなくて俺達なんだよなー。」


花巻が松川グッジョブと親指を立てれば、及川 へそう言いながらニヤついた笑いを見せる。


「まっつんは何で毎度いい所で俺の邪魔を
するのさっ!!!」


「俺の本能がそう言ってる。」


「松川カッケーな、おい。」


「岩泉、お前が言う?」


と言いながら岩泉はちゃっかり美月を擁護
する素振りを見せながらも彼女のお腹に手を
回し、彼女の頭には顎を乗せている。


「…ねぇ及川、何でお前すっげぇ汗かいたのに
ちょっといい匂いさせてんの?」


「…ごめんまっつん。それお互い様だし
まっつんもいい匂いしてる。」


『あ、さっき2人に同じ汗拭きシート
渡しちゃった。2人ともお揃い。』


「知りたく」「なかったし!!?」


「はいはい、いつもの調子に戻ったトコ
で行きますかねー。」


花巻が手を叩いて纏めるところで美月は岩泉
の手を解いたらニカッと花が咲いた様な笑顔を
仲間に向けていた。


『信じてるよ、みんな!』


及川のセリフを美月に奪い取られ、彼は嘆き
ながらも、周りは彼女と同様に笑顔を見せ
ながら円陣を組み、気合いを入れ直せば
試合の合図。


見事にそこではセットを取らせずに勝利を
決め、初めての決勝の道を彼らは勝ち取る
ことができ、そしてそれは、再び彼らの因縁
の相手との対決となる。





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