キミを祝いたい
『じゃあ徹、約束通りでお願いします。』
「うん、わかった。任せておいて!」
美月がこそこそと及川の教室へ行けば、
2人は何かを打ち合わせていて、小さな声で
こそこそと会話を始める。
するとそのまま美月と及川はそれぞれ別れる
と、彼女は再び自分の教室へ戻り、岩泉の元へ
ノートを片手に駆け寄った。
『ごめん、ハジメ。ちょっとここの問題が
あってるか確認したんだけど。』
「あー、そこ俺も迷ったわ。」
美月が数学の参考書とノートを机に広げれば、
岩泉が席に座ると、問題文に目を通し始める
ので、彼女はこっそりと及川に作戦成功!と
メッセージを送る。
本日は、なんと岩泉一の誕生日。
日曜日だったが模試の為休みはは無く、午後
からはもちろん練習もある。
せっかく岩泉の誕生日に部活があるならと、
サプライズでクラッカー鳴らしてお祝いを
しようと、及川と美月が楽しそうに計画を
練っていた。
及川には先回りをして貰い、彼女は準備が整う
までの時間作りの為に、今日の模試の悩んだ
部分を岩泉に、相談してみれば、彼も真剣な
顔で美月の意見を頷いて聞いている。
すると準備OKとの連絡が見えたので、その
問題も解決した所で岩泉にお礼を言って、
2人で部室に向かおうとすれば、その先で
ちょっとしたハプニングが起こることを彼女
はまだ知らない。
「美月遅いねー。」
場所が変わって部室では、二人の到着を及川が
まだかまだかと首を長くして待っていた。
メンバーが全員揃ってクラッカーを手に持ち、
メッセージを送れば既読の文字はとっくに
ついており、教室から部室までの距離は
そこまではかからないのに、あれから40分は
経っている。
「2人とも、遅いですね?」
「聞いた質問が岩泉に答えれないとか?」
「岩ちゃん、数学は割と成績良いよ?」
「へー、意外。」
「あ、連絡きたきた!」
松川と話をしていれば、その送り主は美月では
無く岩泉からのメッセージで、これからそっち
へ向かうと連絡が入り、及川がそれを見て
マズイ、バレた!?と慌て出す。
「まさかの岩ちゃんからメールきた!」
「マジかよ!とりあえず、コレはバレて
ねーだろうから、来たら鳴らそうぜ!」
花巻が皆にそう呼び掛けながら、松川はメール
の送信時刻を見て計算し、そろそろだなと
みんながそれぞれ、クラッカーを構える。
ガチャリとドアが開く音と同時に岩泉がドアを
開ける前に矢巾がドアを開けて、おめでとー!
と皆が一斉に岩泉に向けてクラッカーを鳴らせ
ば、彼が驚く顔よりも先に周りが目を丸くして、
彼の姿を見て驚いていた。
「あの、岩泉さんこれは…。」
「岩ちゃん、プレゼントに美月をあげる予定
は全く無かったんだけど?」
「あ?何の事だよ。」
岩泉は怪訝な顔で、クラッカーのテープを被り
ながら、両腕で美月をお姫様抱っこで抱え、
彼女は恥ずかしさで耐えらなかったのか、
手で顔を覆い、小さな声を震わせて、みんな
ごめんと謝っていた。
『違う、違うの…』
「コイツさっき転んで足捻ったんだよ。」
時は遡って、先程の場面に戻れば、美月と岩泉
が教室から出てしばらく部室の方へと歩いて
行くと、通りがかりの女子がプリントを大量に
落としていた。
そこをお人好しの美月は彼女を手伝って、
一通り拾って運ぶのを手伝おうとすれば、足元
に残っていた1枚の紙を美月は不覚にも
踏んでしまい、岩泉の擁護の手も間に合わず、
見事に彼女は転けてしまう。
少し痛めるも腫れてないから大丈夫だと彼女が
主張しても岩泉は彼女の言う事を聞かずに、
彼女を抱えてここまで来て、今現在の状況に
あたると彼は言った。
「とりあえず、美月を下ろしてやれ。」
「ちょっと岩ちゃん、美月はスカート
なんだから、気をつけてあげて!」
「おぉ、そうか!」
スカートの中が見えそうな事に及川が気が付き、
彼女の腰元にすぐジャージを巻くと、岩泉も
そこは申し訳無さそうに、彼女を椅子へ下ろ
した。
彼女を椅子へ座らせて、足の状態を見てみれ
ば、彼女の言う通り大した事は無さそうなの
で、それにみんなが安堵の息を漏らす。
『ごめん、私ほんとカッコ悪い。』
「確かに、先日の球技大会とのギャップが
あり過ぎですよね。」
国見の言葉にご最もと落ち込みながら、念の為
に湿布を貼って包帯で固定すれば、とりあえず
の応急処置処置は完了。
そのまま、彼女が立ち上がり仕事を始めようと
すると、及川が彼女を止めた。
「駄目、美月は今日は帰りなさい。」
『私は全然大丈夫なのに!』
「無理して動いて、酷くなって腫れてきたら
どーすんだよ。今日は様子見ろ。」
花巻にも正論を言われれば、美月は拗ねた
子供のように口を尖らせる。
そして、今日はどうしても帰りたくないのに
と悲しそうな表情を浮かべ、及川の目を見た。
「うっ、そんな可愛い目をしても駄目。」
『そんなー。』
帰り道、二人並んで歩く足取りはいつもよりも
ゆっくりで、美月のペースに合わせて、
岩泉が彼女の隣を歩き、彼女は罰が悪そうに
彼の顔を見た。
『ごめんね、せっかくの誕生日なのに。』
「別にのんびりするのもアリだろ?」
結局、美月は早退することになり、一人で
帰すのは心配なので、彼女の付き添いと称し、岩泉も彼女と一緒に帰ることとなった。
美月は彼の練習を中断させてしまったことに
罪悪感を感じて、少し猫背気味で歩けば、岩泉
は気にすんなと彼女の背中をポンと優しく叩く。
そんな彼の優しさに、少しだけ彼女は気持ちが
救われながら、自分が大事なことを忘れていた
とに気が付き、ふと立ち止まった。
「どうした?」
岩泉に向かい合って大きな瞳が彼の目をじっと
捉え、困り顔を見せるので岩泉は首を傾げる。
『私、ハジメに肝心のお祝いしてない!』
「何だ、そんなことかよ。」
『そんな事じゃない、大事なこと!』
美月はガサガサと渡す予定だったプレゼント
を鞄から急いで取り出し、綺麗にラッピング
された袋を岩泉へと笑顔で差し出す。
『ハジメ、誕生日おめでとう。』
眩しくなるくらいの笑顔を向ける美月の姿に
岩泉からは思わず喜びからのため息が溢れる。
そして、そんな彼女を独り占めしたくなって、
自分の腕の中に収めると、彼女の肩に顔を
埋めた。
「…あー、最高。やっぱ嬉しいな。」
『喜んでくれてよかった。』
雰囲気が良い所で岩泉のスマホが振動し、
メッセージを見れば及川からで、その内容を
読めば無言のまま、返信はすること無くスマホ
を閉じる。
今日限定、俺達からのプレゼント!
PS.美月は絶対にあげません☆
「…ただ。」
『…ただ?』
「次は怪我せず祝ってくれよ?」
「あんま心配かけんな」と頭を撫でた岩泉の一言
に、彼女は顰めた顔を見せ、気をつけますと
一言添えると、彼の背中に手を回せばポンポン
と彼女の場合は子供をあやす様に、彼の背中を
撫でた。
それがまた岩泉には心地が良くて、及川達が
お膳立てしてくたプレゼントを彼は素直に喜ぶ
事にした。
そして祝福をしてくれた彼らに心から感謝する
のだった。
「スポーツタオルか!カッケーな!!!」
『よかった、ハジメこれ好きだよね!
徹と2人で選んだんだよ!』
「…ほう。それは聞きたくなかった。」