隙あれば触れている

突然のお泊まり会と言っても試験が近い3人は
遊ぶわけにはいかず、夕飯を済ませれば直ぐに
それぞれが参考書とノートを開きながら、机に
向かって静かに自分の世界に入る。

2時間ほど経てば気がつけば8時が回っており、
キリがいいところでノートを閉じれば、同じ
ように3人は腕を伸ばした。


『んー、同じ体勢だと身体痛い。』


「少し、体を動かすか。」


「岩ちゃん、それ賛成。」


3人の意見が揃った所でいそいそと折りたたみ
テーブルを片付けて、皆が動けるスペースを
確保すれば、美月は再び汗をかくのを躊躇い、
ストレッチだけにしておこうと開脚をすれば、
2人が突然焦りだした。


「ぶふっ、ちょっと美月!!!」


「お前は反対向け!」


先程のボクサーパンツ事件の後に彼女が履いて
いたものは、前回自分が置いて帰っていたらし
い短パンで、シャツはそのまま及川のシャツを
着ていた。


丈のせいか、やはりそこは履いてない様に見え
ていたらしく、足を大胆に広げれば、水分を
取ろうとした及川は吹き出し、岩泉が怒り出し
たので、美月は仕方なく彼らから背を向けて
行った。


『あー、勉強後は尚更最高。』


一通り済ませて、最後に仰け反りながらお腹を
伸ばして、体を反対方向に捻れば、何故か美月
は2人と目が合った。


『あれっ、2人ともしないの?』


「いやー、変幻自在のそのストレッチが
相変わらず面白いなって。」


「ずっと見ていても飽きねーんだよな、
お前のそれ。」


同じように行っていたはずのストレッチを彼ら
は気がつけば止めて、2人から注目されると
さすがに美月も恥ずかしくなって、端っこに
移動して膝を抱えたら、2人の筋トレの邪魔に
ならないように、そこで小さく丸くなっていた。


「何なのそのカドっ子暮らし的な座り方。
飼いたくなるじゃん。」


「馬鹿なこと言ってねーで、やるぞ。」


彼女のストレッチを2人が眺めるのが好きなの
と同じように、美月も及川と岩泉が互いに相手
の足を押さえて、トレーニングをしている姿を
見るのが好きな事だったりもして、2人を楽し
そうにニコニコ笑いながら見ていると、2人は
少し照れ臭そうな様子を見せる。


「なーに美月。俺達に見蕩れちゃった?」


『うん、確かにそうかも。』


及川が冗談交じりに言った言葉に頷いて、腹筋、
ちょっとだけ見たいなと彼女の方から、珍しく
スキンシップを取ろうとして、ジリジリと四つ
ん這いで寄ってくる。

その姿の方が彼らに比べて何倍も魅了しており、
それを目にする2人からは彼女へ返す言葉が出て
こなくて、思わず生唾をごくんと飲み込んだ。


丁度さっきまで腹筋運動をしていた及川が床に
手を着いて座っていると、彼女にペロッと
シャツを捲られて、割れた部分を指ですーっと
伝うようになぞられるとは思わなくて、及川も
目を見開いてその突然の刺激に耐えるように、 そして変な意識をしないように、下唇を噛み
締める。


「んんっ!!?」


『どーやったらここは割れますかね?』


彼女が触るのは縦の線じゃなくて横の線。
何度も彼女の指がなぞってくるが、その顔は
真剣に及川のお腹を見ていて、自分のシャツを
捲って自分のお腹と見比べて、やっぱり回数
かな?と彼女は今度は自分のお腹を見つめる。


「お前もここは縦に割れてるだろ。」


『んんっ!!?』


すると、岩泉が2人の向かいで彼女のお腹が見え
ていたのか、無意識に彼女の縦の線を指でなぞ
ったので、彼女も及川もまさかの行動に驚いて、
キョトンとした顔で彼を見た。


「岩ちゃん、今すっごくナチュラルに
美月のお腹を触ったけど。」


「…すまん、つい!!!」


『大丈夫、擽ったくて変な声出たね。』


「俺がやったら絶対岩泉ちゃんは俺を殴っていた
行動だよね。」


岩泉は無自覚だったのか、現状を把握して顔が
真っ赤になって、触られた美月の方が減るもん
でも無いしと言って、ケロッとしているので、
及川は普通逆でしょ。と呆れるように二人を
見た。


『ハジメも私のお腹触ったなら、私も触って
いいよねー。』


筋肉見たいと催促するように彼女が人差し指を
動かせば、岩泉は黙って自分のシャツを捲り、
美月は楽しそうに鍛えられたそこを指で触れ
ていた。


『ハジメさんもバッチリですね。
やっぱり、腹直筋って見応えあるなー。』


「お前…その触り方はわざとか?」


『んー、なんの事?』


「待って、俺は何を見せられてるの?」


擽るように彼女がその筋を触れば、グッと力を
入れて羞恥心を何とかこらえながら受け入れる
も、及川の方がこの2人の空気に耐えきれず、
岩ちゃんをいじめない!と彼女の手を止めて、
このスキンシップを終了させる。


この空気を変えるべく、及川はそろそろ布団を
引こうかな!と言いながら、別の部屋にある
布団を持ち出そうと移動して、岩泉も手伝うと
言ってスっと立ち上がり、彼女も手伝おうと
すればそれを止めて、その場を後にした。


「今のは、お前に感謝したわ。」


「俺達はよく何年も美月の前で紳士に
してるよね!誰か褒め称えて欲しいよ。」


そんな2人の訴えは美月には届かず、布団を
取りに行く2人を待っていると、先程の激しい
雨でやはり少し体力を奪われていたせいか、
いつもよりも早い時間に美月は眠気が襲う。


布団を運んで行ってる間に美月はいつの間にか
コテンと転がるように眠っていて、畳に心地
よさそうに深い寝息を立てていた。


「もー、自由過ぎるお姫めっ!!!」


「仕方ねぇ、布団に移動させるか。」


3人の布団を並べて、美月を岩泉が抱え上げ
ようとすれば、脱力した彼女の重量はなかなか
ズシッとくるものがあるらしく、うっと呻き声
が思わず漏れていた。


「おい、起きている時と全然ちがうぞ。」


「そんなに重い?」


「前抱えた時はそんな事は思わなかった
んだけどな。」


「完全に眠っちゃってるもんね。」


及川は以前、彼女が布団に入ってきた時の運ん
だ自分の力は火事場の馬鹿力だったのかと気が
つくように思い出すと、何故か可笑しくなり、
岩泉が辛そうに運ぶ姿を見て笑う。


「コレが1番の筋トレかもな。」


「美月が聞いたら怒るよ?」


岩泉が布団に寝かせれば、及川がその上から
掛け布団を掛けて、彼女の頭を2人がそっと
優しく撫でる。


「あと何回こうして、3人で寝れるかな。」


「大学行ったら、みんな都合合わなくて
なかなか時間取れねーだろうな。」


彼女へ向ける優しい岩泉の表情を見れば、
「もう少しだけこのままでいようね。」と
岩泉へも自分へも言い聞かせるように
及川は彼女へ優しく囁く。


そして、今日あわよくばまた自分の布団に
入ってくればいいのにと少しだけやましい
感情を持ち合わせながら、自分も彼女の寝顔
に眠気を誘われそうになったら、彼女の枕元に
置いてあげたスマホの通知画面を見て、一気に
それは吹っ飛んで行った。


「え、この人のスマホ、さっきからめっちゃ
メッセージ来ない?何なの二口堅治って。」


「さっき、お前が風呂入ってる時に、牛島と影山
とも電話していたぞ。」


「は!?岩ちゃん、許したの?」


「影山は直ぐに向こうが察して切ったが、
牛島は美月にさり気なく逃げられた。」


「もー、アイツらマジ何なの。」





top