彼女よりも先に起きてしまった侑は、今の状態
に目が点になってしまっていた。
「嘘やん、ちょお…待って。」
確か、彼が眠りに落ちた時には美琴はちゃんと
衣服を着用していたはずなのに、目の前にいる
彼女は下着だけの状態ですやすやと眠っていて、
侑は目元に手を当てる。
思わず、自分の下半身を確認したり、ゴミ箱の
中にそれらしきものが無いか確認するも、その
行為の形跡は全く無いようなので、彼は安心
する反面、それ以上の関係には発展していない
ことに少し寂しさも感じてしまった。
力が抜けて再び美琴の隣に横たわり、少し大きめ
のベッドだったからなのか、よく眠れた気は
して、隣で眠る彼女の髪を愛しそうに指で触れ
ると、その指通りの良さに彼は少し感動するの
だった。
「美琴…意外とデカいな。」
侑と向き合うように眠っている彼女からは、
バッチリと谷間を確認する事ができ、服を着て
いる時と着ていない時との見た目のギャップ
から、つい視線がそちらへと行ってしまう。
淡いパステルカラーは彼女に似合っていて、
触ったら絶対に柔らかそうな見た目から、
彼はもちろん釘付けなのだが、また理性と戦う
のはもう辛いので、彼はバッチリ見るだけ見て
満足をしたら、タオルケットでそこは隠して、
邪念を飛ばすように再び眠ることにした。
『へっ、なん…これ!?えっ!!?』
次に目が覚めたのは美琴の嘆いている声で、侑が
瞼を開けたら、彼女は申し訳なさそうに困り顔
で頬を紅潮させ、彼の顔を見つめていた。
「おはよう、美琴。」
彼からすればこの目覚めは、只今2回目の為
驚くことは無く、へらっと彼女に向けて笑い、
あたふたとする美琴の反応が面白かったのか、
彼女の髪の毛を優しく撫でる。
美琴がこのまま頭が沸騰して気を失ってしまっ
たら大変なので、侑はちゃんと彼女にはなんも
俺らはしとらんよ!と説明をするが、目を潤ま
せて震えている彼女を目の前にすれば、つい
イタズラ心が芽生え、彼女を自分の元へと抱き
寄せて、背中を撫で回した。
『ううっ侑さんダメです。今の格好はっ…!』
「めっちゃ、スベスベやーん。」
若い子の肌は最高とセクハラオヤジまがいの事
をしてふざけてみたりしたが、美琴が羞恥から
泣き出しそうになったので、侑はぱっと慌てて
手を離し、もうせんから!と彼女の体を見ない
ようにぎゅっと目を瞑った。
『侑さんも服着てください!』
彼女が投げつけたものは何故か自分が昨日着て
いたものとはまた違う、男物の自分にサイズ
ピッタリなTシャツ。
侑は頭の情報処理が追いつかず、1回それを手に
取ってフリーズして、走ってシャワーに向かう彼女が戻ってくるまで、ポカンと口を開けた
状態で、呆然として待っていた。
「ごめんな、シャワー借りて服汗臭いから
脱いだんや。」
『いや…大丈夫です!ってか。その…
ごめんなさい。私のせいですよね?』
2人とも冷静になった所で、お詫びの気持ちを
込めながら美琴がマグカップにコーヒーを入れ
て侑に差し出し、彼も一言お礼を言えば、それ
を口にした。
美琴が侑に渡した服は治の物で、よく彼女が
酔っ払ってしまうと、引き留める癖があるのを
知っている治が、そのまま着替え用にとTシャツ
を置いていたのだった。
「どおりで、サイズがピッタリ…か。」
彼氏がいる訳ではなかったので胸を撫で下ろす
も、アイツ、どんだけここに来んねん…と、
よく知っている臭いが気に入らないのか、
その事情を知った彼は眉を顰めた。
でも、暑くて服を脱いでいたのは初めての事件
だと知ると、彼はそこは満足だったのか、嬉し
そうにコーヒーを啜った。
『侑さん、体格ええから、ちょっとドキドキ
してしまいました。』
両手で恥ずかしそうに顔を覆って素直な感想を
吐く彼女に驚いて、思わずコーヒーを吹き出す
が、何とかカーペットは汚れずに済んだ。
お詫びに朝ごはん食べて帰ってください!と
彼女は立ち上がって、キッチンに向かうので、
「いや、もう十分美味しい思いしたけど。」と
考えながらも、彼女の後ろ姿はグッとくるもの
があった為、彼は彼女の厚意に甘える事にした。
『あ、ちょっと、危ないですよ。』
「んー、何作っとるん?」
『簡単なものしか出来ませんて。』
背後から侑が顔を覗かせて美琴の様子を伺えば、
美琴はそう答え、彼女が作る一品は
外食が
どうしても多くなってしまう侑に配慮してか、
味噌汁にだし巻き玉子と身体にやさしいもの
ばかりだった。
「どこまでええ子なん。」
『治さんには適わへんけど。』
恥ずかしそうに微笑む美琴の姿を見て、彼は
彼女を抱きしめずにはいられない。
「そんな謙虚になるなや、大幅に超えとるわ。」
と包む力を強めたら、風呂上がりの甘い香りも
混ざって、彼の頭はクラっと来てしまう。
このまま俺のとこに来てくれんか?と言い出し
そうになる所に、何故かその品は2人きりにも
関わらず、そこには余分に2品も増えていて、
どう考えても2人では食べきれない量に彼は
不思議に思う。
するとピンポンと玄関のチャイムの音がして、
彼女に代わりに出るようにお願いされれば、
朝早い宅配なのか?と侑は言われるがまま玄関
のドアを開け、そして彼はすぐに後悔をする。
「え、北さんもお前も何でおるん?」
「侑、久しぶりやな。
こら、服装くらいちゃんとせぇ。」
「お?クソツム、なんで下パンツなん。
しかもそれ、俺の服やし!!!」
侑の姿を見た北は口は笑っているが目は笑って
おらず、治はあからさまに機嫌が悪い様子で
侑を睨んでおり、突然の2人の登場と自分の
格好にもちろん侑の顔は血の気が引く。
『北さん、治さん、入ってください。』
パタパタと嬉しそうに駆け寄る音が聞こえて、
彼女の姿を見れば、2人は穏やかな表情に戻る
ので、侑はそれに救われ、彼女が女神に見えた。
「米びつに移すから貸し、重たいから。」
『いつもすいません、ありがとうございます。
5キロやし、それくらい持てますよ!』
「こういう時は素直に甘えた方が可愛えで?」
スマートに重たいものを美琴に運ばせない様に
米びつ一直線に向かえば、手早くそれを詰め
替える。
おいくらですかと彼女の片手には財布があり、
どうやら彼女にお米を届ける約束をしていた
模様。
ちなみに、治は侑がおる気がすると言って、
彼女に料理中にそっちに行くと連絡を入れていた。
美琴は双子ってすごい!と感動するので、侑は
間髪入れずにそういうのとちゃうで。と彼女に
ツッコミを入れた。
『ご飯足りますかね?』
「そう思って、少し握ってきたで。」
『治さん、大好き!』
「美琴、もっと言うて。」
「これ、テーブル運んだらええんか?」
2人は両手を広げて抱き合いそうな会話を繰り
広げ、北がそれを邪魔するように皿を持ち出す
ので、美琴が私やります!とくるっと向きを
変えて北に駆け寄り、治は寂しくもそこで見事
な空振りを見せる。
2人の用意周到さに敵は手強いと苦笑いを浮かべ
ながらも、侑は治の滑稽な姿を見たら少しだけ
スッキリしたのかブッと吹き出し、それに治も
怒って2人が喧嘩しそうになれば、近所迷惑やろ
と北が目を光らせた。
美琴は呑気にみんなで朝ごはん久々ですね!と
笑っていたで、侑はぐしゃぐしゃと彼女の頭を
撫でる。
そして、皆で揃って朝食を取れば、その光景は
どこか懐かしく、美琴は楽しそうに笑うので、
彼らが彼女を見る目は皆、温かく優しかった。
「よかった。手は出されとらんのやな?」
『侑さんが私なんか相手にするわけないや
ないですか!』
「でも気をつけや、男はみんな狼や。」
『え、治さんも?』
「侑は危ないけど、俺はまあそれに関しては
大丈夫や。可愛い後輩に変なことするわけない
やろ?」
「「(どの口が…。)」」
『そしたら、侑さんも大丈夫ですよ!
だって、さっきも…ふぐっ。』
「美琴、言うたらあかん。」
『(こういう所、ほんま治さんとそっくりや。)』