2日目の変化


夜は女子トークで盛り上がり、少し遅めに寝て
しまったからか彼女達は這いながらアラームを
止め、先に目が覚めた美月は背を伸ばし、
重たい体をゆっくりと起こした。


『雪絵ちゃん起きて、私達当番だよ。』


「待ってー、あと5分ー。」


『朝ごはんに雪絵ちゃん絶賛のだし巻き卵が
待ってるから。』


「おはよう、美月。」


『反応が相変わらず早いよね。』


1人じゃないマネージャー業は少し気分が楽な
気がして、普段の練習よりは仕事量は多いはず
なのに、彼女はそれが苦にはならなかった。

支度をして、朝食の配膳の当番が一緒の雀田と
白福と先に食堂へ向かい、準備が整えば各主将
へ伝言をするよう、清水達にお願いをする。



「おはよう、牧野。あ、今日当番?」


『おはよう、木葉君。そうそう!』


彼女が味噌汁を配っているとぞろぞろと顔見
知りの姿が見え、嬉しそうに話をかける人間
を目にすれば、黒尾が何故か美月から味噌汁
を受け取り、邪魔する様に彼らへと味噌汁を
渡し始めた。

今はたまたま挨拶をした澤村のお盆に黒尾が
味噌汁を置くので、澤村は少し不服そうな顔
を見せている。


「いや、お前からじゃなくてどうせなら、
牧野さんから受け取りたいんだが…。」


「まぁまぁ澤村君、遠慮すんなって。」


「してねーよ。」


「てか、お前身内もかよ!!!」


「朝からやっくんと美月がイチャイチャする
所なんて誰も見たくねーだろ。」


『クロ!!!ちょっと、邪魔になってるから
退けて!』


黒尾が夜久達の分も手渡せば、もちろん彼は
怒り出してそこでバトル開始となるので、
通路の邪魔になる彼らを見て、美月は黒尾に
一喝する。


彼女は澤村と夜久にお願いをして、彼を席に
座らせると、次に渡す人間に謝れば、笑顔で
味噌汁を渡していた。


『菅原君だ、おはよっ。』


「あっ…、うん。おはよう、牧野さん。」


次に受け取ったのは菅原の姿で、やっと彼女と
会話出来たこのタイミングで名前を読んで
挨拶されるとは思わなかったのか、少し目を
丸くして驚いた後に、嬉しそうに彼女に微笑ん
で挨拶を返した。


『私もさ、スガ君で呼んでもいいかな?
さっき澤村君達が呼んでるの聞いてて、
いいなーって。私の事も美月でいいから…。』


「もっ、もちろん。牧野さんの好きな風に
呼んでくれたらいいから!」


『スガ君、早速苗字だし。』


そして、少し楽しそうに会話をする2人を目に
して、黒尾はほらやっぱりと悪態ついて、
少し距離が縮まる2人に対してため息を吐き、
「名前だけでお前はうるせーよ。」と言う夜久も
黒尾の少し複雑そうな表情を見せて、彼らを
見ていた。

そこからは木兎の登場でもちろん彼の場合は
黒尾も我慢ならずに彼女の元へ戻って一気に
その場は賑やかになり、再び彼女の怒りの声が
食堂に響く。


孤爪と福永はそれを慣れたように見ながら、
いつも通りだなと彼女が入れた味噌汁を
美味しそうにすするのだった。


『相変わらず、向こうの速攻が目で追うのが
精一杯。』


日向と影山が加わった試合は本日が初めてで、
美月は目を細めて彼らのボールを必死に目で
追いながら見ていると、灰羽もその瞬発力に
驚いていた。


それよりも彼女を驚かせるのは灰羽の動きで、
1個前に行った梟谷との試合中に彼は突然
移動攻撃を成功させ、仲間までもを驚かせ
ていた。


『今日のリエーフ、どうしちゃったの。』


それは日向に感化されるように灰羽の動きも
いつもより良くなっている気がして、美月は
孤爪のアドバイス通りにいい動きを見せる灰羽
を満足そうに見ながら、データを嬉しく取る。

そして、他の選手も調子が良く、楽しそうに
彼女がみている矢先に相手側の東峰と日向が
衝突して、それは日向が東峰の攻撃を奪おう
としたように見え、彼女はその光景に驚いて
固まってしまっていた。


『なんか…』


「やりにくい相手だよな、ホント。」


セットはこちらが取ったものの、彼らも美月と
考える事は同じなのか、ドリンクを渡せば
苦笑いを浮かべるので、彼女も困った様に
笑って見せた。


『ホントね。でも猛虎さんもリエーフ君も
いい感じだったので、そこは褒めますね。』


ヨシヨシといつもの調子で頭を撫でようと
すれば、灰羽は嬉しそうに膝を曲げて受け
入れて、山本は未だ慣れずに彼女から3歩
下がる。


そうこうして、少しの休憩が終われば次は
もっと再び登場するやりにくい相手に仲間達
は嫌そうに顔を顰めていた。


「ヘイヘイヘーイ!美月ちゃん、
またしっかり、俺の活躍見ておいてねー。」


「木兎さん、一応美月さんは敵チーム
なんですからね。」


「…美月、アイツのテンション下げろ。
ウザイって一言アイツに言うだけでいーから。」


『そんな酷いこと言うわけないじゃん!』


「単純に取ればいーだけだろ?」


『…やっくん、かっこいい。』


「ちょっと、そこ自分の株を上げないで
貰えます?」


「はい、切り替え切り替え。」


海の手を弾く音が響き、再び彼らとの試合が
始まれば、先程を巻き返す様に木兎の攻撃は
容赦なく降り注ぐ。

木兎のスパイクはやはり威力が凄く、月島に
勢い良くぶつかった球に美月は冷や汗を
流しながらも、猫又同様それを避けた孤爪を
怒るように見た。


「コラ研磨!逃げるな!」


「だって腕もげる。」


『もげない!』


見たか!と彼女へアピールする様に彼が美月を
指差し、彼女は不覚にもその攻撃に魅了され、
心を射抜かれそうになるが、仲間がいる手前、
ぐっと歯を食いしばってそれを堪える。


木兎君、カッコよすぎ!!!


堪える彼女の表情は仲間からもバッチリと
バレてしまってるのだが、それを防ぐには
こちらも攻撃を仕掛けるしかない。


「悔しいが、今のは何も言い返せねーな。」


「でも取るって言い切ったから取らねーと。」


「夜久さんはそれ以上株上げないでくださいよ。」


夜久は敵ながら天晴れと笑いながらもその球
に執着するようにひたすら拾い上げ、黒尾と
孤爪は相手の僅かな隙を狙おうと何度も探る。

仲間達は闘志むき出しで臨むも、惜しくも
そのセットは取れずに負けてしまったが、
楽しみは次だと猫又が笑うので、孤爪は
またレベル上げしなきゃだねと彼らに呟き、
美月はそうだねと孤爪の言葉に微笑んだ。

『潔子ちゃん、仁花ちゃんもまた再来週一緒に
頑張ろうね。』


「また、会えるの楽しみにしてる。」


「私はまだまだですが、頑張ります!」


各校それぞれに悔しさが残りながらも合宿は
終わり、烏野を見送れば彼らも帰る準備を始め、名残惜しそうに美月は仕事仲間と抱擁をする。


『かおりちゃんと雪絵ちゃんと離れるの
寂しいー!』


「美月も梟谷に来ちゃう?」


「あ、それ賛成ー。」


「俺もゆっきーに同じく。」


雀田に美月が抱きついていると木兎がその
流れに乗るように両手を広げて美月を待てば、
今度は白福が背後から彼女に抱きついて、
「木兎にはあげない。」とふざけて舌を出して
いると、黒尾から行くぞ!とお呼びの声が
かかった。


「美月さん…。」


「残念赤葦君、七夕はもう終わったから彦星
終了でーす!」


すれ違いに出会った赤葦に、黒尾は舌を出して
手をヒラヒラとさせ挑発すれば、美月が
止めなさいと片手で彼の頭をチョップして、
彼の失礼な態度を謝る。


『また2週間後が楽しみだね。』


黒尾の態度に納得はいかずにいたが、美月が
彼にふんわりと優しく微笑む顔を見れば、
彼も満足して「そうですね。」と彼女へ微笑みを
返して、そのまま彼らを見届けた。


「美月は他校のやつに笑顔向けるの禁止。」


『まーたクロは突然、変な事言う!!!』



「うわ、また始まった。クロの美月独占病。」


「でも、俺も今回あんましハグさせて貰えな
かったから、その気持ちわかります。」


「って言いながら、抱きついてんじゃねーか。」


『猛虎もハグしようか?おいで。』


「…すいません、勘弁してください。」




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