そして再び
無邪気な目で東京タワーを探す日向を美月は
温かい目で見守るように、そして孤爪と仲良く
話す姿を彼女は嬉しそうに体を震わせていた。
『日向君と研磨が仲良く話してる。
なんだろ…泣きそう、あと可愛すぎる。』
「美月、それ夜久がこの前同じ反応を
してたぞ?」
海が彼女の様子を見たらそう言って微笑み、
彼女はやっくんとお揃いなのかと笑い返せば、
黒尾が俺だって思ったしと顔を歪ませた。
「黒尾、お前ほんと束縛強いんだな。」
「澤村君、守りが堅いって言おうかソコは。」
「美月も苦労してるんだろーな。」
「菅原君はウチのマネージャーを馴れ馴れしく
呼ぶのをやめていただけないか?」
「え?本人の許可は得てるから問題無いだろ。」
「いやいや、問題大アリなんですけど。」
黒尾、澤村、菅原が小さい火花を散らしながら
会話をするなか、美月の目にその光景は入って
おらず、嬉しそうに彼女は清水と谷地を迎え
入れていた。
『潔子ちゃん、仁花ちゃん、ここ結構虫が
出るから、噛まれる前にこれ使って。』
「ありがとう、助かる。」
「わざわざ、すみません。」
綺麗な肌が赤くなったら大変!と彼女達に
虫除けスプレーを渡して、孤爪が蚊を叩く
所を目にすれば、孤爪の元へすぐに駆け寄り、
彼が噛まれた所に塗り薬をすぐに彼の腕に塗る。
そして、日向も噛まれないようにとスプレーを
丁寧にかけた。
「自分でやるから。」
『持ってたついで。いいからいいから。』
「美月さん、用意周到!
虫除けありがとうございます。
美月さん、なんかお姉ちゃんみたいですね!」
『ふふっ、ありがと。日向君には頼もしく
見えたようで光栄です。』
少し日向が羨ましそうに2人のやり取りを見て
いると、孤爪は自分が子供っぽく聞こえてしまう日向のその言葉が気に入らなかったのか、美月達
からぷいっと彼は顔を反らした。
そして、リエーフが日向に駆け寄ると彼女は
入れ替わる様に清水達と先に校内へ入って、
準備の説明をして、彼女達は作業に取り掛かる。
そこからは前回と同じ調子で、練習試合が
開始され、美月も気持ちを引き締めて、
仲間達のサポートに回った。
『うひゃー、相変わらずキツそうだね。』
負けてしまった時のペナルティ、森然名物の
坂道ダッシュを走り終えて、息を切らす仲間へ
タオルを苦笑いで渡しながら、その傾斜面に
美月は苦笑いを浮かべる。
「あー、結構きますネ。」
「一気に汗が。」
『優生君も走も初めてだもんね。』
初めての経験でもちゃんと走りきって立って
いる彼らの体力を褒めながら、もう一息だよと
彼女は彼らを励ましてタオルを渡し、もう1人
心配だった孤爪の方へと振り返れば、そちらは
は寝そべるように倒れ込み、彼女が口を挟む前
に孤爪は顔を歪ませていた。
「無理、若者と一緒にしないで。」
『まだ何も言ってないし、何ならキミも
若者だけどね!!!』
もう一息!と自分の手を差し出して彼を立ち
上がらせ、次の試合が始まるまではその試合
をしっかりと観戦をする。
そして、また試合が始まって、勝ってみたり、
惜しくも負けてみたり、辛勝してみたりと、
その作業を繰り返せば、あっという間にその日
の練習は終わろうとしており、これからの予定
は、自主練をするかどうかの話し合いとなって
いた。
美月も使い終えたビブスを回収しつつ、
彼らに聞いて回り、必要なドリンクの数を
その場で計算をする。
『ウチは皆が残ってするのかな?』
「俺は今日はもう寝たい。」
『そうだね、初日から熱出したら怖いし。
優生君も今年初めてだから、今日はもう宿舎
で休もうね。あと、走は…?』
そして、彼女がそう言いながら犬岡の様子を
伺えば、彼はまだまだ行けますよ!と元気に
飛び跳ねているので、わかったわかったと
彼はその人数には足しておく事にする。
「お前はこれから特訓だからな。」
「えー、俺は強制なんすか!」
『んー、リエーフも元気そうだもんね。』
そしてもう1人の新人を確認する為に灰羽の方
へ目を向けると、黒尾に首根っこを捕まれ、
灰羽はブーブーと文句を言いながら、黒尾に
そのまま引きづられて行くので、美月は
行ってらっしゃいとひらひらと手を振って、
また1人頭の中で追加しながら彼らを見送った。
回収したビブスを洗濯機へと持っていき、
先に洗い終えた物を干し終えたら、必要な
数のドリンクを作って持って行こうとすると
そこに雀田と白福の姿があり、今洗っている
ビブスは彼女達が干してくれるとの事。
『かおりちゃん、これ木兎君達の?
ついでに持ってくし、終わったら洗うから、
ビブス終わったら先に上がって。』
「えっ、いいの?アイツら結構練習長いから
美月、大変じゃない?」
『大丈夫、かおりちゃんたちの方が先に来て
準備してくれたんだもん。こっちが今日は
助かったからお礼しなきゃ。』
「いやいや、それはお互い様だし。でも今日は
甘えようかな、ありがとっ。」
『うん、お疲れ様ー。』
美月は彼女達とそう話して2人と別れると、
今度は片手はドリンク、片手はタオルを入れた
カゴを持って、第3体育館へと足を運ばせる。
「美月ちゃんが持って来てくれたの!?」
『練習は捗ってますかー?』
美月が届けに来れば、一番に嬉しそうに
木兎が駆け寄り、その後に続くように赤葦は
彼女を手伝って、ドリンクが入ったケースを
彼女から回収して、赤葦がそれぞれに渡した。
『赤葦君、大丈夫なのに。』
「結構重たいですよ?これ…」
「ちょっとー、俺は美月ちゃんから貰い
たかったんだが。」
「木兎さんは我儘言わないでください。
美月さんだって忙しいんですから。」
赤葦がもう上がりますか?と確認を取れば、
彼女はこのままいるよと首を横に振るので、
彼は少しそれに喜ぶ。
だが、彼女の名前を呼びながら泣き言混ざりで
抱きつく灰羽を目にすると、彼も少しそこは
見たくなかったのか、少し微笑んでいた表情は
いつも通りの真顔に戻っていた。
「こら、逃げんじゃねーよ!」
「美月さん、黒尾さんが容赦無いんですけど!」
『そりゃ、リエーフに期待してるからねー。
私もリエーフの見事なレシーブ裁きを目に
収めたいな。』
「ほらほら、お前の大好きな先輩もこう
言ってるぞ。」
「今はちょっと嬉しくないんですけど。」
茶化す様に木兎が灰羽を煽り、黒尾も赤葦から
ドリンクを受け取って水分を補給する。
そして一息入れたら再び自主練は再開され、
居残り組ならではの楽しい空気はこの合宿で
しか味わえないもので、美月は仕事は大変だが、
この自主練は嫌いではなかった。
「てか、ブロックいねーから困った!」
『梟谷の他のみんなは?』
「早々に逃げていきました。」
『誰かいないか声かけてくるわ。』
「…あっ、いや。その必要ねーかも。」
外から見えた1人の人物の姿を黒尾が指さし、
黒尾と木兎が彼に声を掛けに行く。
美月も彼らの背後からその勧誘を見守れば、
まさかのあっさり断ろうとする彼が面白かった
のか、彼女は後ろで吹き出した。
「美月さん、笑いすぎです。」
『だって、素直で可愛い。』
「なっ!!!」
彼女が肩を揺らしながら笑っていると、その声
をかけられた人物である月島は普段言われ慣れ
ない言葉を彼女にかけられたからか、ほんのりと顔を赤くしながら、一瞬だけ動きを止め、
黒尾は余計なことを言うなと彼女の頭を軽く
叩いた。
「見えないかもしんないけど、コイツ全国で
5本の指に入るスパイカーだから、練習に
なると思うよ。」
『木兎君のスパイクは綺麗だしね。悔しい
くらい、強いし…。』
「美月ちゃん、もう1回言ってくれない?」
「…三本の指にはギリギリ入れないですかね。」
「ドンマイ。」
「上げるなら落とさないでくださいよー!」
月島に交渉をしながらも木兎を2人は揶揄い、
美月も彼らのやり取りが更に可笑しくて、
彼女が笑い涙を拭っていると、「美月ちゃん
笑いすぎ!」と木兎に怒られるので、謝りながら
彼の背中をポンポンと叩いた。
「…それに君MBならも少しブロック練習
した方がいいんじゃない?」
黒尾の煽り文句に月島のカチンときている
表情を美月は読み取って、もう1本追加
するかとドリンクを走って取りに行く。
『これが、合同合宿の醍醐味ですね。』
もうしばらく、練習は続くなと彼女はタオル
も再び余分に手に持って、駆け出した。