新入りは気になる


美月は予告通りに月島に声をかける木兎の姿を
見かけ、嬉しそうに彼女もゆっくりと近寄って
みると、彼はあっさり木兎の誘いを断るので、
彼女は悲しそうに肩を落として、そこからは
身を引いて、静かに片付けの続きを行った。


そして黒尾に声をかける声を耳にしながら、
本日の参加人数を数えて、互いにマネージャー
同士で自主練の参加人数を確認し合う。
彼女達の仕事は今しばらく続くのだった。


『私、やっぱりあっちに戻ろっかな。』


先に孤爪達のいる体育館へドリンクを持って
いき、第3体育館へも足を運ぶと、こちらは
自分と同じ学校の人間は黒尾だけだったので、
再び孤爪達のいる体育館へと移動をしようと
すれば、黒尾は彼女を傍に置いておきかった
のか、それを阻止するべく彼女の腕をぐぐぐ
と音が立ちそうなくらいに掴む。


「美月ちゃーん、そんなつれないこと
言わないでこっち付き合ってよー。」


『だってあっちの方が音駒の数多いでしょ。』


「えー、俺達も美月ちゃんにいて欲しいー。」


『もー、木兎君まで。』


「美月さん、俺だけでこの2人を纏める
のはかなりの苦行だと。」


そう言って赤葦も美月の肩をガシッと掴み、
彼女を行かせまいと説得し、引き止める。
また梟谷のメンバーに逃げられたのだろうか、
赤葦の青ざめた表情を見たら、彼女も拒む事
が出来なくて、傍にあるボールを手に取った。


『球、あげればいいのかな?』


「何だよ、赤葦の言葉には素直かよ。」


『赤葦君、大変そうだし。』


「美月ちゃんってさ、本当に後輩に
優しいんだな。」


「他校といえど、あくまで後輩…だもんな。」


赤葦の言葉ならすんなりと彼女が受けいれた
ことは少し気に入らないのか、黒尾は悪態を
付きながらネットを挟む向かい側へと移動し、
まだ恋愛対象の範囲ではないことを示す様に
後輩をわざとらしく強調して、嫌味混ざりの
言葉を吐けば、赤葦が少し眉毛をピクリと
動かす。

木兎は、黒尾が言うその意味はわかっておらず、そうこなくっちゃと嬉しそうに、彼女が赤葦へ
ボールを投げるのを待っていた。

そしてしばらく練習に付き合い、孤爪達のいる
体育館の様子も気になった美月は、そろそろ
移動しようと、外に出ようとしていた時に、
月島とぶつかって彼の胸に思い切り鼻を
ぶつけてしまった。

「あの…大丈夫です?」


『ごめんね、私は大丈夫だよ。』


「美月、危ねーだろ。余所見すん…」


黒尾が美月を注意する言葉が止まり、その
ぶつかった人物を目にすれば赤葦が「おや?」
と彼の様子を伺った。

「おやおや?」

「おやおやおや?」

『おやおやおやおや?』

木兎と黒尾も嬉しそうに同じく彼の様子を
伺えば、美月も彼の登場が嬉しくなって、
3人が同じ表情でニヤニヤと笑い出す。


「聞きたいことがあるんですが…いいですか。」


月島がそう言うと木兎と黒尾は声を揃えて、
「いーよー。」と答え、すみません、ありがとう
ございますと遠慮気味にお礼を返す月島が、
可愛らしく見えた美月は、彼を見上げて、
にこにこと微笑んだ。


「お二人のチームはそこそこの強豪ですよね?」


「ムッ、まぁね!」


「全国へ出場出来たとしても、優勝は難しい
ですよね。」


「不可能じゃねーだろ!!」


『ふふっ、質問に遠慮は無いんだ。』


「「美月ちゃんは笑わないでください!」」


「まぁまぁ、聞きましょうよ。仮定の
話でしょ。」


『…赤葦君のが大人だわ。』

ムキになる2人を見て美月は呆れた顔を見せ、
彼は純粋な疑問で、どうしてそこまで部活に
必死にのめり込めるのかを3人に聞いていた。
「たかが部活。」その存在価値を知りたくて、
彼は3人へ質問をぶつける。


美月は、彼の中で心に酷く残るものでもあった
のかと、少し心配になりながら、彼の話を頷き
ながら聞いていた。


「ーただの部活って、何か人の名前っぽいな。」


「おお…タダ・ノブカツ君か!
いや待て。ちげーよ、たかが部活だよ!」


「ぐぁぁ!そうかー、人名になんねーっ!」


「惜しかった!」


「…突っ込んだ方がいいですか?」


「いいよ、限りがないから。」


くだらない駄洒落に盛り上がる残念な先輩達
を見て、思わず美月はこれが同い年かと頭を
抱えていると、赤葦が同情するように肩を叩き、
月島も赤葦同様哀れむ目で彼女を見た。


彼女がごほんと咳払いをすれば、ハッと気が
ついた木兎が眼鏡君と呼べば月島と名前の
呼び方を訂正され、名前を呼び直し、質問を
ぶつけた彼にバレーが楽しいかと質問を返す。


彼は少しその質問に悩むと、特には…と返事
を返したら、木兎はヘタクソだからじゃない
のかとオブラートに包むこと無く、月島に
言葉をぶつけていた。


そして、彼はバレーが楽しいと思った時の事を
自分の経験を振り返りながら彼に伝え、その
説明は美月達も納得するものだった。


「それが、お前がバレーにハマる瞬間だ。」


その言葉を耳にした時の月島の表情を見た時、
美月は彼に安心をして微笑みかける。


『少し霧が晴れたみたいだね。』


つい、いつもの癖で後輩にする行為を月島
にもしてしまい、よしよしと背伸びをして
頭を撫でると、彼は彼女のなれない行為に
顔を真っ赤にして、固まっていた。


「月島君ズルくない?俺もされた事ねーのに!」


質問答えたのは俺なのに!と月島を羨ましがり
ながら騒ぎ出すので、美月はくるっと振り返り、
『木兎君も先輩らしくて、カッコよかったよ』
とよしよしと頭を撫でれば、「え、美月ちゃん
にそう言われたら照れる」と幸せそうに顔を
緩ませる。


そして、もちろんそんな2人のやり取りに納得
いかないののは黒尾で、美月の背後に立てば、
わしっと自分の両手で彼女の胸を掴むという、
大胆な行動で2人の邪魔をした。


『んあっ、ちょっと。信じらんない!』


目の前でむにっと揉まれて、甘い声が一瞬だけ
出した彼女を目にした木兎は目が点になり、
残りの2人もそのショックで動きが止まる。
そして、冷静になった月島はうわぁと黒尾を
一歩引いた目で見ていた。


「あの二人は付き合って無いんですよね?」


「うん、幼なじみとしか聞いてないよ。」


束縛すごいけどと赤葦がぽつりと言えば、
月島も…みたいですねと2人同じ表情で、
彼らの少し羨ましくも思うが、それよりも
怒りの方が勝つのか、顔には出さないが、
ふつふつと彼らの中に湧いて出る。
ちなみに木兎は、目の前の光景に瞬きもせず、
彼女の胸元に釘付けとなっていた。

黒尾の俺のものだと見せつけるように触り、
美月は彼にこのままされっぱなしになって
たまるかと、黒尾の腕を力込めて引き剥がし、
それ以上は触らせないように自分の腕で胸元を
隠した。


『クロの馬鹿、えっち!!!』


彼女はそう言って睨みながら走って移動して、
月島のドリンクを準備するのか、体育館の入口
から顔を出して、黒尾に向かって舌を出す。


「お前が隙ありすぎだから、悪いんですー。」


『何それ!意味わかんないし、クロは人の
胸を触りすぎ!』


「今のは聞き捨てならないんですけど。」


黒尾と美月の言い合いの中での思わぬ彼女の
発言に赤葦は黒尾へ鋭い視線を向け、何故か
その表情を見て、木兎の方が震えている。


時間勿体ないのに!と怒りながら彼女は流しへ
駆けっていき、木兎達も質問に答えたかと月島
にブロック練習を付き合うよう誘導し、美月が
ドリンク片手に体育館へ戻ってみれば、彼らの指示を聞きながらブロックに励む月島と楽し
そうに練習する他の3人が見れたので、その時
だけは彼を少しだけ許して、美月は月島に
笑顔でドリンクを渡すのだった。


「で、お前は何で赤葦に引っ付いてんの。」


『だって、油断したらクロのセクハラが
待ってるから。』


「美月さん、今はそれはちょっと…。」


「美月さん、今のは赤葦さんには酷なんじゃ…」


「あー、さっきのやつ、おっぱいの形丸わかり
だったもんな?」


「ちょっと、木兎さんっ!!!」


「あれ、ところで月島君。美月の事を
いつの間に名前呼び?」


「・・・・・・。」


「…美月、何があった?」


『やっくん!!!』


なかなか来ない彼女を心配して、夜久と海が
様子を見に来ると、彼女の発言と様子で何か
を把握した夜久が「お前また何かしたのか!」
と問答無用で黒尾を蹴飛ばし、海もいつも通り
の恐ろしい笑顔を向ける。

そんな彼らを見て、月島は大変そうですね、
と言って、その場から立ち去るのだった。



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