お世話係


『研磨、どうしたのそれ!』


突然、孤爪から家に来て欲しいとお願いされて、
美月は孤爪に言われた通りにチャイムを鳴らせ
ば家の中を通され、孤爪の部屋にノックして
入れば、ドラッグストアの袋に入っていた
ブリーチを見て美月は思わず驚愕をする。


「絶対に綺麗に出来ないから美月に
手伝って欲しい。」


『いいけどさー。』


どうしていきなり?と美月が首を傾げると、
目立つから嫌だと彼からはぽつりと一言だけ
答えが返ってくる。


『誰かに何か言われたの?』


「虎に貞子みたいって。」


『切った方が良くない?』


「視界が広がるのが無理。」


いきなり極端に明るい髪に挑戦するのはいい
が、せっかくの綺麗な孤爪の髪の毛を痛めて
しまうのは良くないと美月は躊躇うもなるべく、
彼が何かを始めようとする事を美月は否定を
したくなかった為、孤爪に渡された毛染め液と
手袋を手に取る。


『あ、やる前に準備するから待って!』


少しでも彼の髪のダメージが減るように美月の
お気に入りのトリートメントを取りに一旦家
まで戻り、再び研磨の家まで走って向かった。

そして帰ってきて一息つかないまま、物は試し
かと箱から液を出せば、部屋が汚れないように
大きいゴミ袋を使って孤爪に被せてたら、新聞
紙を引いて手際良く、説明書通りに行った。


『染みない?』


「うん、大丈夫。」


一通り塗り終われば、あらかじめ一緒に用意
していた美容院の様にラップを彼の髪に沿って
ふわっと優しく巻く。

そして、時間待ちと手袋を手を汚さないように
綺麗に外し、彼のベッドに美月はよいしょと
言いながら腰かけた。


「美月がいて助かったかも。」


『突然の連絡なしのお願いにはさすがに
ビックリしましたけどねー。』


彼女は研磨がわざわざ美容院に予約取ってやる
わけないかと笑いながら、再び箱に目を通して
説明を読んだ。


「美月、美容師になればいいのに。」



『んー、実は少し興味ある。』


「みんな美月に切ってもらいたいと思う。」


『私も研磨の髪の毛、触るの好きだから
アリかもね。』


時間が来ると、洗面台で軽く流すと、服を着た
まま風呂場でシャンプーをして、また洗面台と
面倒な作業の筈なのに美月は丁寧に孤爪に
付き合った。

その彼女の手つきは日頃から慣れている模様
で、ドライヤーを手に取ってトリートメントも
忘れることなく彼の髪に触れて乾かす。


孤爪は彼女に触れられるのが心地がいいのか、 つり上がった目が、少し垂れたような目に
変わり、ふぅと力が抜けていた。


翌日、少し遅れてきた孤爪の姿を見て、みんな
の驚く顔を見た美月は黒尾の後ろからニヤニヤ
と手を押えて笑って見ていた。


「どうした、お前…その頭。」


黒尾に言われたら、昨日の美月に対してと
同じ返事を言いきって、のそのそと部室に入る。

そして、彼女も加担した事に気がついた黒尾は
呆れたようにお前も乗ったわけ?と首を彼女の
方向へ傾ければ『なかなか似合ってるでしょ』
と満足そうに親指を立てた。


「綺麗に染めたな。」


『ちょっと進路の道開いた感じ。』


「…俺にも今度セットよろしく。」


『クロは枕で充分。』


不貞腐れた素振りを見せる黒尾は孤爪の元へと
向かえば、夜久は「ひでーな」と黒尾に辛辣な
態度を見せた美月に笑いながら、彼女の
空いた隣にひっついて並び、海と夜久に挟まれ
ながら改めて孤爪の髪色を見た。


『やりすぎちゃったかな?』


「あ、いや、案外…」


皆に囲まれる孤爪を見ながら美月が心配を
して隣にいた海にそう聞くと、彼は否定する
ことなく「あの中にいれば馴染んで見える」と
言ったので彼女は彼の言葉に少しほっとした。


「美月、お世話係お疲れ様。
お前がここ来てくれて本当によかった。」


『今まで大変だったりする?。』


「秋から美月が来てくれて、少し楽には
なったかな。」


『海とやっくん、2人に言われるとちょっと
調子に乗っちゃいそう。』


3人で微笑んで笑い合い、楽しそうな様子の
他の部員を見守る。

そして美月は過去の孤爪が端っこに座って
ゲームをしていた姿を振り返り、今の周りに
囲まれている彼の表情と過去の表情を見比べた
のか、目を細めて優しい笑顔を彼らに向けた。


「でもそれいちいち根元染めるのは、美月さんが大変だろ。」


『さすがに市販はおすすめ出来ないから、
美容院に予約くらいならしてあげれる。』


「え、俺と比べて過保護過ぎない?」


「いーよ、面倒くさいから放置で。」


「じゃあ、プリン確定だな。」







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