隣の優越感


ここ最近、自分の心に余裕があるのは、毎日を
隣にいる彼女と、有意義に過ごせているから
なのだろうか。

同じクラスになって、自分の好きな部分が余計
に好きになり、隣の席になって、自分の知らな
かった部分を知ることが出来た。

夜久の頭の中はそんな風に過ぎり、右側に視線を移すと、美月が本に目を通す姿は時折目にして
いたが、彼女が休憩の合間合間に必ずペラペラ
とページを捲っている、隣の席じゃないと知ら
なかった事。


『美月って、結構小説読むんだな。』


夜久は気がついて思った事を口に出すと、彼女
もちらっと夜久を見たら、少し照れくさそうに
笑っていた。


『本、似合わないなって思ったでしょ?』


「なっ、そんな事思ってねえよ。
そうじゃなくて、見る度に表紙が違うから、
読むペースが早いなあと。」


『続きが気になっちゃうと、サクサク進ん
じゃうんだよねー。』


パタンと美月が読んでいた本を閉じるので、
夜久は彼女の読書タイムを邪魔したかもしれ
ないと謝れば、彼女はちょうど読み終わって
いた模様で、ぐっと凝った腕を伸ばした。


「早っ、もう読んだのかよ!」


『面白くて、あっという間でした。』


一昨日とは違った表紙を既に読み終わって、
そのスピードに夜久が驚愕して、そういえば
彼女は現文や古文も得意だった事を思い出す。


美月はもう既に、次は何を読もうかを楽しみに
しているようで、その読み終えた本は、図書室
から借りたものなのか、表紙の裏には学校専用
のバーコードがあった。


「昼は、図書室コースか?」


『うん、よかったらやっくんも一緒に行く?』


「うん、行く!」


昼休憩はそれぞれ、同性の友人と共に行動する
事が多いので、部活のことで相談以外は滅多に
ない、彼女と過ごす時間は物凄く貴重で、夜久
は勿論、首を縦に振る。


そうしていると、別の男子と話していた黒尾の
耳はピクリと動き、じわじわと美月達に近寄っ
て来た。


「なーに、楽しそうな話してんの?」


『んー?やっくんとお昼に図書室行こう
って話。』


「へー。夜久君、本なんて読むの?」


「うるせえな、美月に付き合うだけだよ。」

夜久は2人きりは無理なのは想定内だったが、
こうも反応が速いものかと、何かを言いたそう
にニヤニヤと笑う黒尾を見ながら、彼は顔を
引き攣らせる。


『クロも図書室に用事?』


「んー、久々に俺も借りるかな。」


「お前こそ、本なんて読むのかよ。」


「まあ、人並みに。」


そちらこそ、バレーばっかりで、あんまし読ん
でねえだろうがと言葉を返そうとしていたら、
黒尾はクラスメイトの男子に声を掛けられ、
本日の昼休憩に部長会議があると伝えられる。


「おやおや、黒尾さん。忙しいんじゃなくて?」


それを耳にした夜久が勝ち誇った顔で黒尾に
ニヤリと仕返しする様に笑い、黒尾は舌打ち
をしながら、顔を歪ませる。


ついている自分に嬉しくガッツポーズをして
いたらチャイムが鳴って、話はそこで中断と
なり、そのまま楽しい気持ちで授業を迎えた。


恨めしそうに2人を見る黒尾を完全に無視して、
右隣で美月とまた目が合えば、自分に笑いかけ
てくれる彼女との幸せな時間を噛み締めている
と時間はあっという間だった。


『せっかくなら、お昼も一緒に食べちゃおうか。』


「それ、賛成!!!」


たまには、屋上で食べようと美月が言い出して、
お弁当の入った小さな手提げを持って、夜久と
一緒に足を運ぶ。


「あれ、美月は?」


その間、残念ながら黒尾はトイレに行っていた
ので見失い、そしてそのまま別のクラスメイト
に捕まったので、彼らとは合流出来ず、夜久の
席も空いていたのはしっかり確認済みだった為、
彼は納得いかない顔で、席を見つめていた。


『あれ、一番乗りだったのかな?』


「ラッキーだな、あっち座ろうぜ!」


ただでさえ気分がいいのに、屋上にはまだ誰も
到着していなかったのか、貸切状態になって
いて、夜久は彼女の手を引いて絶景ポイントへ
腰掛けた。


「あ、それ美味そう。」


『ふふっ。よかったら、どうぞ。』


「え、いいの?!じゃあ、俺も。
おかず交換、こんなに楽しいっけ?」


『本当だね。そういえば、やっくんの誕生日の
時もこんなことしたね。』


「したした!」


のんびりと美月とお弁当のを口にして、おかず
をお隣同士で交換しあって食べることを楽しん
で、しばしの休憩と言ったところか、雑談を
しながら、一望できる景色を眺めていた。


『まだ少し、のんびりしようかな。
あ、そうだ。良かったら音楽聞く?』


「え、あっ…うん!」


すると、おもむろに美月がランチバッグに入れ
ていたウォークマンを取りだし、夜久に片方の
イヤホンを渡すので、彼女からそれを受け取っ
た。

どれがいいかなと画面を見ながら曲を選んで、
自然と肩と肩とがくっつくので、夜久の体温
はみるみる上がっていくのは、自分でもわかっ
てきていた。


「あ、これ。俺も好きなバンドだ。」


しかし曲が流れ始めると、自分が良く聞いて
いるバンドの音楽が流れ始め、美月と聞いて
いる音楽が、一緒だったことが嬉しくなって、
目を輝かせながら彼女にそう言えば、彼女は
くすくすと笑っていた。


『これ、やっくんが1年の頃に教えてくれて
から、私もハマっちゃったんだよね。
やっくんの好きなもの知りたいなって話を
した時あったじゃん?』


夜久が美月に教えたのは、同じバントの別の
アルバムで、それは彼女がわざわざその後に
別のアルバム購入を購入したと言い出して、
自分きっかけでハマった事に驚いたのか、
彼は目を丸くして、彼女を見る。


まず、自分を知ろうとしてくれていたその言葉
で更に好きだという気持ちがこみあがってきて
いるのに、やっぱり私達は気が合うねなんて
付け足されてしまったら、もう堪らない。


彼は「あー、もう。」と零し、顔が熱くなったの
か、その顔を彼女に見られたくなくて、膝を立
てて隠して伏せて、しばらくそのままでいたと
思ったら、イヤホンを外して立ち上がった。


「よし、図書館行くぞ!」


『どうしたの、急に!』


夜久はそう言い出したら、手を引っ張るので、
彼女は慌ててランチバッグに片付けて、夜久
に引かれるまま、図書室まで移動する。


「俺ももっともっと、美月の好きな物を
知りたくなった。」


そんで、その本借りる!と彼は言いながら、
ずんずんと前に進んで行くので、彼女は笑って
彼に、手に持つ本のタイトルと作者を教えた。


『やっくんの好みに合うといいなぁ。』


図書室から帰ってくると、部長会議を終えた
黒尾が近づいてきて、夜久が手に持つその表紙
を見て、不服そうな顔を見せる。


負けず嫌いのその男は、俺は別のを読んだしと
夜久に張り合うように吐いて、段々と距離が
縮まる2人を阻止しようとするのだった。


「つーか、その本教えたのは確か赤葦じゃ
なかったか?
アイツ、好きな作者はちゃんと買うからな。」


「マジかよ、借りる本間違えた。」




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