いつもと違うから


抱きしめらた時にふんわりと漂う甘い香りに、
同性といえど、ときめいてしまいそうになる。

ここで美月は彼女に出会うことで、いつもと
違う休日の始まりとなった。


「また会えて嬉しい!相変わらず、美月さんは
可愛らしいし、いい匂いするし。」


『ええっと…、その、はい、いいえ!』


「いや、どっちだよ。」


そっくりそのままお返しします!と彼女に言い
返したいのに、美人を目の前にすると緊張の方
が勝ってしまう美月は、思った言葉がうまく
出せないまま、言葉を詰まらせていた。


「そりゃあ、リエーフの姉ちゃん相手だと、
緊張するよな。」


黒尾は冷静な突っ込みを彼女にする横で、夜久
は抱擁し合う2人の姿が眩しく見えていたのか、
美月の反応にうんうんと頷いて、納得した態度
を見せ、目を細めて楽しむ。

そして、最初に美月に抱きついたのは、灰羽
のはずなのに、彼女が困っているからと自分の
姉を灰羽は注意をするのだった。


「ところで、みなさん揃ってどこに行ってたん
ですか?しかも、研磨さんまでいるなんて、
珍しいですね!」


そして、今1番されたら困る質問をぶつけられ、
灰羽が首を傾げると、嘘が苦手な美月と夜久は、
1番に彼から目を逸らした。


このままスポーツショップに行くと言ったら、
彼も一緒に行きたいと言い出すのは、姉が
一緒だとしても目に見えて、それだと彼への
プレゼントは、買えそうに無い。


「ちょっと、気になる新作ゲームがゲーセンに
入ったらしいから、映画ついでに来てみた。」


「ええ、もしかしてまた格ゲーっすか!?」


そして、あまりにもわかり易すぎる2人の助け船
を出したのは孤爪で、明らかに進行方向は反対
の場所にあるゲームセンターが目的地であると、
あっさり嘘を吐いて、灰羽を騙そうとする。


すると、夏休み中の新作ゲームを買いに行った
あの日を思い出したのか、彼は疑うこともなく
目を輝かせて、孤爪の話に食いついてきた。


そのタイミングを今だと、それぞれが目配せを
送って、上手く噛み合せる。


俺がリエーフをゲームセンターに惹き付ける
から、皆はプレゼントを。


「よかったら、リエーフこれから一緒に行く?」


目で送られた合図で、黒尾と美月ははわかった
のか、黒尾はコクリと深く頷くが、美月は
一緒に来ていた灰羽の姉に申し訳ない気持ちも
あるので、どうが正解なのかを少し頭を悩ませ
ていた。


「もうレーヴォチカは。せっかく一緒に
お買い物に来たというのに。それに、先輩達の
お邪魔したら、ダメじゃない。」


「すいません、リエーフ君のお姉さん。その事
ですが、もし良かったら、コイツの買い物に
付き合ってやってくれませんか?」


『…えっ?』


すると、突然黒尾が灰羽の姉に向かって、予定
とは違ったお願いを言い出して、思わず彼女も
驚いて、黒尾の顔を見上げた。


「それは凄く嬉しいけれど、主将さん達と
一緒にお買い物に来ていたんじゃないの?」


「そうなんですけど、さっき気になる店があった
はずなのに、俺たちがいる寄りにくかった
みたいで。」


「姉さんせっかくだったら、美月さんと買い物
して来たら?俺もゲーセン寄りたいし!」


「美月さんとお買い物…!?素敵だわ!
それなら、喜んで。行きましょう。」


戸惑う美月は完全に置いてけぼりで、黒尾の
提案には、灰羽の姉もその響きに気に入ったのか、かなり乗り気で、意気揚々と彼女の腕を
組み、女子が楽しめる方向へとずんずんと足を
進めていった。


「たまには、自分優先しとけよ?」


黒尾がぽつりと言った言葉に振り返ると、彼の
目は、とても優しかった。


こっちに任せとけとひらひらと満足そうに手を
振って彼女を見送って、灰羽と孤爪がゲーム
センターへ向かって、3年生男子3人組は、
当初の予定としていたスポーツショップへ行く
ことに。


「いつもだと、お前が引っ付いて行きそうなの
に、今日はめっちゃ優しいじゃん。」


「さすがに、そこまで過保護じゃねえよ。
アイツ、すぐに相手に合わせようとするから
丁度良かった。」


「確かに、いつもそんな感じだもんな。」


灰羽の姉と並んで笑顔を見せる美月を見たら、
彼らからはついそんな会話をして、ささやかな
女子会を楽しめるようにと背を向ける。


「やだっ、どうしよ、こっちも可愛い!」


『よかったら、色違いで買ってみます?』


「いいの!?ぜひ、お揃いにしましょう。」


すっかりと意気投合をした彼女達は、呼び方も
さんからちゃんへと変わっていき、可愛い物に
目を光らせて、久しぶりの女子同士の買い物を
彼らの想像を超えて、楽しんでいる模様だった。


『アリサさん、髪の毛すごく綺麗。』


「美月ちゃんは、ヘアアレンジがすごく上手ね。
器用なのが、羨ましいわ。」


『ふふっ、好きなんです。こういうの。』


「将来は美容師さんだったりして。」


『だとしたら、素敵ですよね。』


そして、先程購入した髪飾りをどう使うか、
悩ませていたアリサに、彼女がメイクルームで
軽くヘアアレンジを教えようとして、彼女の髪
の毛に触れ、久しぶりのその手触りに、やはり
これが好きだと改めて実感をする。

美月の器用な手付きを真剣な顔で見ていて、
やんわりと纏め上げられた髪に付けられると、
その髪型には、髪飾りの良さがしっかりと出て
いた。


「私も何かお返しをしたいわ…そうだ!」


そしてその仕上がりに感動したアリサは、今度
は自分の番だと意気込んで、服が気になって
いると美月から聞くと、彼女似合う服を選び
たいと言い出して、手に取って彼女に色々な服
を照らし合わせ始めた。


「美月ちゃんに、これすっごく似合うと思うの!」


『…久しぶりにこんな可愛い系見たなあ。』


「なら着なきゃ、こんなに可愛らしいのに
勿体ない!」


『アリサさんに言われても説得力が。』


アリサに押されて負けた美月は、そのまま彼女
に試着を勧められ、アリサにもその姿をちゃん
と見せると、彼女の満足するものが出来上がっ
たのか、そのままでいましょう!と目を光ら
せた。


美月も好みだが勇気がいるのか、踏み出せずに
迷った反応を見せていると、そういう時に限り、
その服達は半額セールだったりもするので、
そのまま購入する方向へと流されてしまう。


「美月、お前…それ。」


合流してすぐに、幼なじみは彼女の姿を見て、
呆然としていた。

ほんの1時間前までは、見えていなかった足元
に、見蕩れて思わず後輩のプレゼントをどさっ
と落としそうになった黒尾の横で、得意の反射 神経で、夜久が間に合いそれをキャッチ。
海はにこにこと微笑み、似合っているよと素直
に彼女を褒めていた。


『アリサさんに選んでもらって、買ってみた
んだけど。』


「さっきのも可愛かったけど、それもすげぇ
好き!」


秋にピッタリのラテカラーをバランスよく身に
纏わせて、アリサのセンスに感謝したくなる、
女の子らしい格好に、夜久も興奮気味で彼女を
とにかく褒めていた。


『クロ、時間くれてありがとね。』


黒尾のリアクションで不安そうな顔を見せて
いたが、夜久の反応を聞くと安心したのか、
嬉しそうにそう言ってはにかむ姿が、更に黒尾
と夜久の心には、見事に刺さっていた。


「…て、待て。なんでお前手を繋いでんの?
どこに連れていこうとしてんだよ。」


「あの…いや、ナンパされたらアレなんで、
もう撤退しようかなと。」


『待ってクロ、まだ3時だよ!?もう少し
遊んで帰ろうかと思ったのに。』


いきなり美月の手を取って、帰宅すると言い
出した黒尾に驚いて、夜久がお前といる方が
危ねぇよ!と怒り出し、その場は一気に賑やか
になり、目立つからと美月の止める声も入る。


「可愛いでしょう?そうでしょう?」


「…姉さん、一体何したの?」


彼らの反応を見たアリサは、満足そうに笑顔
を見せてどこか誇らしげで、ここにいたのかと
皆と合流した灰羽が、珍しく冷静に苦笑いを
浮かべるのだった。


「クロ、こっちのこと忘れてたでしょ。」


『あ、研磨おかえり!ゲームは楽しめた?』


「美月、その格好どうしたの。」


『ん、どうかな…?』


「今日はもう帰ろ。」


「研磨もかよ!!!」






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