結果発表


「美月、どうだった?」


『えっとね、これは92点。』


「…マジで?英語トップに近えじゃん。」


『問題は、数学と化学が残ってるからね。』


「そういえば、数学系ダメだったもんな。」


『文系は割と大丈夫なんだけどね。』


とある英語の時間、部活がない時間励んだ結果
に、夜久と美月が隣同士で点数を見せ合いっ子
をしながらひそひそと会話をし、夜久も自分と
あまり変わらない点数に、すごいじゃん!と
褒めて、その仲睦まじい2人の姿を後ろから黒尾
が冷たさと羨みが混ざった視線で見届けていた。


「つーか、夜久君の引き運の強さだよ。」


二学期からしばらくして、10月の終わり辺りに
は席替えをしたにも関わらず、2人は隣同士が
変わること無く、黒尾がただ後ろの席に回った
だけで、他の景色は変わっていても、黒尾から
すれば、何ら変わりのない席位置。


2回連続のその席に、クラスではまだ付き合って
もいないのに、冷やかし混ざりで妙なカップル
扱いをされていて、寧ろこうして2人が授業中に
仲良く会話をしている姿を視界に入れてしまう、
何とも不快な位置。


1ヶ月弱を経過しても、黒尾は未だに慣れずに
つまらなそうに頬杖を付き、「美月のお陰だ!」
と嬉しそうにはにかむ夜久の表情に、よかったねと心にも籠っていない、祝福の言葉を掛けた。


そこから残り30分、穏やかな表情を見せていた
美月の雲行きは変わって、強ばってスカートを
ぎゅっと握りしめた、その緊張する時間は次の
授業で訪れた。


カタカタと、自分の名前が呼ばれるまで怯えて
いる美月が面白く、笑ったら可哀想だと頭では
分かっていても、可笑しくなって黒尾は口元を
押さえる。


夜久も結果が来るまで、怯えすぎている彼女を
心配に思ったのか、美月に声をかけていたが、
彼女は大丈夫だよと返した言葉と表情がどうも
合っていない。


「次、牧野。」


『は、はいっ!』


名前を呼ばれて、裏返る声とぎこちない動作で
立ち上がる彼女を見たら、黒尾は耐え切れずに
小さく吹き出してしまった。


「美月、面白過ぎでしょ。」


「だな。」


黒尾の隣の席の美月の友人も黒尾の反応に同意
の会話を交わしながら、ブリキ兵みたいな動き
で席に着く彼女を温かい目で見届けて、点数を
やっとそこで確認をしたのか、ふっと彼女の肩
の力は抜けていた。


「美月どうだった?」


『赤点じゃなかった!…というよりも、私が
70点代取れてる!?』


「やったじゃん!」


安堵の息を漏らした美月は忙しく、夜久に結果
を尋ねられて再び見返して、想像よりも点数が
取れていた事を喜んで、夜久にキラキラと嬉し
そうに目を輝かせた。


夜久も自分の事のように喜んで、そんな彼女達
のやり取りを眺めていた黒尾も、美月の数学の
点数だけは心配だったのか、彼もまた安心した
表情を見せていた。


「赤点は、免れたみたいだな。」


「美月って、本当にわかりやすいよね。」


海や孤爪もきっと大丈夫だろうと、今度は2年と 1年にいる、テストと聞いたらいつもと違って
深刻な表情を見せていた後輩達を頭に浮かべ
ながら、万が一赤点だった場合の対策を黒尾は
考える。


すると、夜久と会話をしていたはずの美月は、
くるっと後ろを向いて、ぱちりと黒尾と目を
合わせ、不意に彼女と目が合った黒尾は首を
傾げた。


『ありがとう、クロのおかげだよ。』


小さく口パクで黒尾に伝えると、彼に向かって
も嬉しそうに微笑んで、ニッと歯を見せた後に
彼女はまた、何事も無かったかのように姿勢を
元に戻して、夜久と間違いを確認していた。


いや、お前、今のはズルいだろ。


ずきゅん。といった擬音を彼は使いたい程に、
優しく微笑んでいた彼女の仕草に射抜かれ、
黒尾はそのまま顔を伏せる。


「あーあ、黒尾がやられたわ。」


美月の友人は、そんな彼らのやり取りを慣れた
様子で把握して、胸を押さえる黒尾を放った
まま、自分のやるべき作業に取り掛かる。


『ありがとう、海のおかげで化学も何とか
大丈夫だったよー。』


「うん、それはよかった。」


そして、午後からの授業で不安だったテストは
全て返ってきて、見事に赤点は免れた模様で、
美月は練習が始まった時に、黒尾と同じく、
丁寧に教えてくれた海にも、ちゃんとお礼を
伝えた。


「美月のその嬉しそうな顔見たら、また助けて
やりたくなるな。」


『ふふっ、またお願いします。』


よく頑張りましたと海に褒められると、美月も
誇らしくなってきたのか、次も頑張るから!と
意気込んで、そうしていると後輩達も先輩達に
結果を伝えにやって来た。


「美月さーん!美月さんのお陰で英語、大丈夫
でした!!!」


『わーい、リエーフよかったね!』


部活に支障がなかった歓喜のあまり、灰羽が
勢い良く美月に抱きついて、普段だと危ない!
と注意をする彼女も結果にホッとしたのか、
跳ねて喜び、背伸びをして彼女の頭をよしよし
と撫でていた。


「俺も大丈夫でした。心配かけてすんません。」


『うんうん、猛虎も偉い偉い。』


「ちょ!!?美月さんからのなでなでには心の
準備が!」


『もう、猛虎はつれないなー。』


同じく、報告してくれた山本の頭を美月が撫でる
と、一気に頭を沸騰させて逃げるので、彼女は
相変わらずスキンシップに慣れてくれない後輩
に口を尖らせて、犬岡と芝山はまたかと困った
顔で笑っていた。


「何とか、皆大丈夫そうだな。」


「やっぱ試合が試合だから、みんなそりゃ気合い
が入るだろ。まあ美月はああ言ってるだけで、
大丈夫だとは信じてたけど。」


「俺だって、信じてますって。」


各学年、赤点という最悪の事態が起こらなかった
事に黒尾と夜久は一息ついて、夜久がこぼした
一言に黒尾もついムキになって、妙な張合いが
始まりそうになった所を海が止めていた。


『あ、先輩2人も喧嘩中?』


すると、言い合いが視界に入った美月が黒尾と
夜久のいる元へ駆け寄ってきて、2人を止めよう
としたのかそう言うと、再び後輩の時と一緒の
体勢で背伸びをして、彼女は2人の頭をよしよし
と笑顔を見せながら撫で始めた。


『今回はみーんな、よく頑張りました。』


普段は味わうことの無い、彼女からの子供扱い
が擽ったくて、2人揃って「おう。」と照れ臭そう
に反対方向に目を逸らすと、後輩達が違和感を
覚える中、彼女は満足そうに腕を組んだ。


「うわあ…お2人が撫でられてるのは、1つも
可愛くない光景ですね。」


「ふっ。」


「リエーフ、後で覚えてろよ。」


「いや、芝山辺りだと和む光景だが、190cm
には言われたくねえわ。はい、研磨もそこで
吹き出さない。」


『これで、心置き無く練習出来るね!』





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