あなたも一緒に
「嫌です、俺だって宮城に行きたい!」
「だから、遊びに行くのと訳が違う
つってんだろ!」
練習が終わり、猫又監督から聞かされた今後の
予定を聞いた後の部室で、片方の大柄の男が
嫌だ嫌だと駄々をこね、もう片方の大柄な男は
眉間に皺を寄せ、美月は間に入ってお決まりの
ように落ち着きなさいと二人をなだめた。
「お前は力不足だからまだお留守番。」
「犬岡達は行くのに俺だけお留守番とか
酷いですー!」
「じゃあ、レシーブまともに取れるように
なってから言え!」
黒尾と夜久がどんなに説得しても聞く耳持たず、
山本までも我慢しろ!と参戦する始末。
美月は灰羽が少し可哀想に見えて、海と美月が
お互いの目を合わせたら頷いて、彼の頭を背伸
びして撫でながら、口を開いた。
『リエーフはその体格を皆が見たら、
驚くでしょ?君は最終兵器ってワケ。』
「…最終兵器?」
『うん、だからね。まだ他の人達に見せるわけ
にはいかないの。』
「じゃあ、俺ってめちゃくちゃカッコイイ
ポジションってことですか?」
「うん、そうだな。美月の言う通り。」
2人の説得を聞けば、段々と灰羽は目の輝きを
取り戻し、キラキラとこちらが眩しくて、目を
開けられなくなるくらいに、美月を見つめた。
「俺、お留守番で大丈夫です!
大人しく待ってます!!!」
彼女の肩をガシッと掴んで素直になる彼を見て、
最初からコイツらに任せればよかったと黒尾
と夜久はため息を吐く。
孤爪は我関せずといった様子で、手元にある
携帯ゲームで、ひたすら巨大な敵を倒すのに
夢中になっていた。
『ねぇねぇ、クロ。ところで、私ってどうする
んだったっけ?』
ふと、マネージャーの自分は何も言われずに
ミーティングが終了してしまっていたので、
美月は灰羽の手を解いたら、黒尾に首を傾げて
そう聞いた。
「どうするもこうするも貴方ももちろんお留守番
デスけど?」
『えっ、そうなの!?』
「えっ、仕事はどうするの?」
ずっと画面を見ていた孤爪もまさかの美月も
お留守番発言にはさすがに驚いて、黒尾の方を
向けば、そのままゲームは敵に負けてしまい、
少し悲しそうに肩を落とし、じっとりとした
目で黒尾を見た。
「俺達だけで何とかすんだよ。」
「えー、それも困る。」
ゲッソリした顔の孤爪に福永も賛同するように
必死に頷き、山本も美月さん無しとか考えれ
ねー!と叫び出す。
1年生はまだ意見を言い出せずに、顔は来て
欲しいと訴えながらも、言葉には出せては
いなかった。
「うわ、もしかして他校のヤツらに
美月を会わせたくない的なやつ?」
夜久は理由の99.9%はそれだと考え、黒尾の
独占欲にかなり引いた様子で、さすがにそこ
までしなくてもと、他の人達と同様に顔を
顰めていた。
「やっくんもお前らも甘いな。
去年の梟谷のヤツらの反応思い出せよ。」
昨年の梟谷グループの合宿にその時だけ、
助っ人で参加した時の様子を夜久も思い出せ
ば、そこの現主将が必要以上に彼女へベタベタ
したり等、その時の色々が頭に浮かんで来て、
夜久までもが「そうだった。」と頭を抱えながら、
黒尾の意見を肯定した。
「悪い、美月。今回はさすがに俺もお留守番
の方が…。」
『えー、やっくんまで!』
灰羽を説得した建前、駄々をこねるなんて
恥ずかしい事は出来ずに、美月は少し悲しそう
に肩を落とす。
海も申し訳無さそうに彼女に謝るので、それ
以上の反論は、彼女もさすがにする事はなかった。
そして、少し寂しそうに哀愁を漂わせて、灰羽
にピトっと肩を引っ付けると、彼に寄り添う
ように頭を彼の肩に預けていた。
『リエーフ、仲良くお留守番しようね。
練習はちゃんと私が付き合うからね。』
「はい、美月さんと部室も体育館も
二人きりとか俺は最高です!」
主に部活はマネージャー業ばかりの
美月だが、
黒尾と孤爪と過ごす中で、多少のバレー経験が
あり、基礎練習は完璧の為、灰羽との練習には
丁度いい。
『せっかくだから、普段出来ないコトとか
やっちゃおっか!?』
「そうですね、監督もコーチも誰もいない
ですもんね!」
「部室も体育館も二人きりの上、普段出来ない
事…だと?」
「リエーフ、お前…。」
特訓しようね!と笑い合っている二人だが、
どうも灰羽の視線は彼女の胸元を見ている
気がして、先輩2人はよからぬ妄想が駆り立て
られて、素直に笑いながら見れない男達。
「ごめんごめん、美月ちゃん。
ナシだわ、やっぱり参加だわ。」
「そっちのが確実に危ない、させない。」
黒尾と夜久がガシッと2人同時に彼女の肩を
掴んで、目が笑わない笑顔で、いきなりそう
言い出すので、美月は驚いて、肩をビクッと
跳ねさせた。
『待って待って!でももう決定なら部屋
とかどうすんの!?』
「一緒の部屋でも大丈夫だ、お前は小さいから
どっか収まんだろ。」
『人を猫みたいに!』
「俺、美月いないとダメなの忘れてた。
だから、一緒に行こう!」
『やっくんにそう言われると断れない。』
突然意見が変わって、素直に喜んでいいのか
分からないまま混乱しながらも、本心は嬉しく
てしょうがないので、美月は『お世話しますね』
と皆に笑顔を見せる。
すると灰羽がそれを見たら、再び駄々を捏ね
始め、2年生と1年生は呆れた様子でため息を
吐きながら、彼を落ち着かせるのだった。
『修学旅行みたいな感じかな?研磨、隣で
寝ようね。』
「あ、うん。よかった美月が一緒の方が
落ち着くから…。」
「美月さんと同じ部屋で、果たして俺は寝れる
のだろうか。」
「山本、お前だけ外で寝るか?」