24

何故だか無性にヨーグルトが食べたくなった。

ただそれだけだったのでほんの数分で戻ってくるつもりでいた。実際五分程で戻ってきた。けれど扉を開けると妙に焦った様な、追い詰められた様な表情でまだ二階で寝ていると思っていた景光くんに出迎えられ、また失敗した、と思った。
彼が自分よりも早くに起き、食事を用意してくれているのはこの数日でわかっていた。けれど今日は珍しく彼よりも早く目が覚め、そうすると無性にヨーグルトが食べたいと思ってしまったのだ。理由は明白。昨夜見ていたテレビ番組でコンビニで買える絶品ヨーグルト特集なるものをやっていたからだろう。そういえばヨーグルトなんてしばらく食べてないな、と思い軽い気持ちで買いに出た。

景光くんは普段通り、を装っている様に見える。ならばここで問い掛けるのはやめておいた方がいいのだろう。そもそも私がまだ寝ているだろうから、と油断した結果だ。
想像でしかないけれどイチゴの方が好きそうかなと思い景光くんにスプーンと共に差し出す。
触れるつもりはなかったし、きっと彼から触れる事もないだろう、と思っていると予想に反して彼の口が開かれる。次からは必ず知らせよう。
そう心に決め、ヨーグルトを完食する。

その後は景光くんが朝食を作ってくれ他愛もない話をしながら過ごしていたが、変に早い時間に起きてしまったせいか睡魔が襲ってきた。

「…なまえちゃん、眠い?」
「ん〜…少し…」
「はは、早起きだったもんね。少し寝たら?」
「ん…」
「何時くらいに起こしたらいいかな?」
「あー…、…4時くらい…」
「…ん。後片付けはしておくから」
「ごめん〜ありがと景光くん〜」
「…おやすみ、なまえちゃん」

誰かと、いや景光くんと取り留めのない会話は楽しい。今までは基本的に聞き手役かと思っていた彼だが、そんな事はない。私の何気ない疑問にも言葉を続けてくれるし、パラレル(仮)故の微妙な固有名詞の違いや、しばしば彼の好きなものや些細な日常の話をしてくれるので話が尽きないのだ。こんな風に穏やかに、時間や業務に追われる事も、誰かや何かに気を荒立てる事もなく過ごす時間はとても楽しい。彼の低く、ゆったりとした落ち着いた声色や話すテンポの影響もあるのだろうか。睡魔に脳の大半を支配されている今は彼の優しい低音が子守唄の様にも聞こえる。

起きたら彼の服を吟味しよう。
密かな楽しみを思い描きながら彼の言葉に甘えてベッドに潜り込み微睡みから沈みゆく中、温かい何かに前髪、額、頬と優しく包み込まれた様な気がした。



←23main25→






top