本当は理解されたくて

「真緒ちゃん!ごめんね、ごめんね…!」

「なんで、あやまるの」

「気づいてあげられなくてごめんね…!」

「どこまで、お人好しなの」

公園で真緒が至に話したのは自身の過去。両親と周りの期待に押し潰されそうになった自分が身に付けた嘘の仮面を被るスキル。完璧でなければならないプレッシャーに苦しみ続けて、嘘を塗りたくった汚れた自分。

至に手を引かれて寮に戻ると待っていたのはホッとした表情の団員たち。臣が作ってくれたココアが入ったマグカップを両手で握りしめて、至に促されてぽつりぽつりと過去を語った。マグカップを置いて逃げ出そうとする真緒をいづみが抱きしめて引き止めた。

「真緒ちゃんじゃなきゃダメなの!私は、真緒ちゃんの作った曲じゃなきゃ嫌」

「完璧じゃないんだよ、私」

「完璧な人なんていないよ。真緒ちゃんの作曲スキルも意地っ張りなところも寂しがり屋なとこも全部、全部ひっくるめて私は真緒ちゃんが大好きだから」

「…ふ、っ…ばか、っじゃ、ないのっ…!」

「泣いてもいいんだよ、真緒ちゃん」

真っ直ぐに目を合わせて笑ういづみにボロボロと、真緒の目から涙が零れる。拭っても、拭っても、溢れてくる涙に真緒が必死に唇を噛み締める。もう一度優しく真緒を抱きしめたいづみが頭を撫でる。

いづみの背中に腕を回して、真緒が声を上げて泣く。物心ついた時から泣いてはいけない、と涙をこらえ続けた真緒が人前で泣いたのはこれが初めてだった。

2017/08/11 執筆

ALICE+