学校での毎日は退屈だ。ずっと一緒にいるような特定の子はいない。かと言って誰とも話をしないわけじゃない。話しかけてくる女子にふわりと笑って会話をする。中身のないつまらない話に相槌を打って、笑い続ける。
「日高さんほんと綺麗だよね!」
「この間隣のクラスの佐藤くんが日高さんのこと気になってるって言ってたよ」
「佐藤くんって野球部の?」
「そうそう!あんなイケメンに好かれるなんて羨ましーい!」
キャーキャーと話す声を横目にして真緒が外に目を向けると、咲也に引っ張られて歩く万里と真澄の姿が見えた。そういえばあの三人と同じ学校だった、とぼんやり考える。少しすると予鈴が鳴り、真緒の周りにいた女子達も自分の席へと向かう。
予鈴とほぼ同時にバタバタと慌てたように咲也が教室に入ってきて席に座る。咲也と目が合うと照れくさそうな笑顔を向けられ、真緒も同じように笑顔を返した。
「日高さん!」
「佐久間くん、どうしたの?」
「お昼、一緒に食べない?」
「いい、けど…」
午前の授業が終わり教科書を閉まう真緒に声をかけたのは咲也。突然の誘いに驚きながらも了承した真緒を連れて咲也がやってきたのは中庭。いつもここで食べているのか、既に真澄と万里も来ていて。
「お、きたきた」
「遅い」
「二人が早すぎるんだよー!」
「真緒チャンも座れば?」
「えっと、お邪魔します…」
仲良さそうに話す3人を前に固まる真緒を万里が手招きする。咲也と万里の隣に腰を下ろし、さっき買ってきたサンドイッチの袋を開ける。
「それで足りんの?」
「あ、うん。元々あまり食べる方じゃないから…」
「…アンタ」
「え?」
「笑顔、気持ち悪い」
「真澄くん!?」
「え、っと…」
「何にビビってんの、アンタ」
「ごめん、用事思い出したから行くね」
「日高さん!」
万里の質問に答えた真緒を見て、真澄が口を開く。その言葉に慌てて咲也が止めるが続けて真澄が口を開く。何が言いたいのかが痛いほど分かってしまった真緒はふわりと笑って立ち上がった。後ろから咲也の声が聞こえたが振り返らずに駆け足でその場を離れた。
「なん、で…」
至に真澄、会って間もない彼らいとも簡単に真緒の仮面を見透かした。その事実に真緒は困惑していた。どうして、なんで、の言葉が頭の中をめぐって。視界がぐにゃりと歪んで思わずしゃがみこむ。昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響き、次第に賑やかだった校内が静まり返っていった。
2017/08/11 執筆