全部お前のせいじゃねえか!

そして、2階を探索した時に見つけた3枚の紙。

『僕のお姫様に虫がついた。一刻も早く払わなければならない。それから、彼女の気分を害す奴らもいる。そいつらもまとめて排除しなければ。』

『協力者を得た。アイツには相当な変態だと言われたがアイツも中々やばい奴だと思う。まあ、僕は愛しの彼女さえ手に入れば他に何もいらない。』

『まさか自分の実験のために自分の人生を賭けるとは。さすがの僕でも驚いた。でも誰もいない僕たちだけの世界で暮らすのもありなんじゃないかと思い始めるようになった。』

熱烈なラブレターとはよく言ったものだ。この文章の中に出てくる虫は恐らく花宮達の事。純粋で真っ白だったころの私が欲しいこの人からすれば、私の性格の悪さに影響を与えまくっている花宮達は邪魔でしかないだろうから。加えて私の気分を害する奴らは誠凛を始めとした他校の面々のこと。簡単な話、私と自分以外の人間はいらないということだ。

そして、協力者という言葉。これは恐らくもう一人の犯人の事。自分と私以外の人間がいない世界なんて現実的に作り出すことは不可能だ。けれど、こんな非現実的な世界を作る力があるのなら話は別だ。現実とは異なる世界に自分と私を閉じ込めてしまえばいいのだから。けれど、そんなことが誰にでも簡単にホイホイできる訳ではないから協力者を得た。つまり、こういう世界を作り出すことが可能な人物と手を組んだ。

「じゃあ全部お前のせいじゃねえか!」
「ほんっと、空気の読めない男だな。そう思ってても言わないようにしてる人がいっぱいいるのに」

そこまで話し終えて、一瞬の沈黙と火神の声。確かに今この状況じゃ私を自分のものにしたい犯人が作り上げた世界に自分たち達が巻き込まれたと思っておかしくない。けれど今の状況を考えると、その答えが間違いだということに気が付くはずだ。己の感情のままに話しているからあんまり考えて話してないんだろうなあ、と呆れた目で火神を見る。

火神だけが声に出しただけで、言わずとも思っている人は多いだろう。私を見る目がいつにも増して険しくなっていて久しぶりに悪役やってるなあと笑ってしまう。今にも飛び掛かっていきそうな原達を目で制して話を進める。

「まあ今はそれでいいけど、話は最後まで聞いてね」
「…話を続けましょう」

3回の探索で見つけた紙は今は全員に見せるべきでは無いと判断して見せずにいた紙。海常と一緒に行った探索で見つけた紙は全部で3枚。

『あの男も悪い奴だ。騙される方も騙される方だが、どちらの気持ちも全く理解できないし、たかが女一人の為に命をかけるような男の気持ちなんて知りたくもない。まあ、私の研究に力を貸してくれるという点では利用価値はある。』

『既に鍛えられた精神の持ち主である全国区バスケットボールプレイヤーならこのゲームをクリアしてくれるのではないか。キセキの世代とそのチームメイト。彼等なら私の研究を成功させてくれるだろう。』

『一度死んだ人間が生き返るなんて不可能。それなのに、あの女はそれを信じている。本当に憐れな女だ。それに、あんな気味の悪い男に好かれているあの女も憐れだ。だが、結果がどうであれこの世界に負のエネルギーを与えることはできる』

この3枚は恐らく何らかの研究を行いたい犯人の書いたもの。つまりは、私を執拗に狙う犯人の協力者だ。そして、この犯人は人間の心理について研究したいが為にこのゲームを作り上げ、様々な人間をゲームに参加させた。だが、結果は全て失敗。その理由は参加者の精神が鍛えられていないから。だから、精神的に強い人達を参加させようと思った。そして呼ばれたのがキセキの世代だったという訳だ。

「さっき私のせいだって言ってたけど、どう?考えは変わった?」
「すみません。火神君、僕たちのせいで君まで巻き込んでしまいました」
「んな…っ!黒子のせいじゃねえだろ!悪いのは犯人だろ!」

さっきまでのリアクションが嘘のようだ。何なんだよ、お前。そのセリフが言えるなら私の時も同じセリフが言えなかったのか。目の前でキラキラ青春劇場を見せつけられて苛立つのは当然のことだろう。というより悲劇のヒロインごっこですかそうですか。火神のセリフも気持ち悪いけど、黒子の僕のせいで…みたいなセリフも大概気持ち悪いからな。

「それよりももっと気になるところがありそうだけど。…ねえ?」

そうでしょう?と笑みを浮かべて彼女を見つめる。私達が話し始めてから俯いて一言も言葉を発さず、動きもしない彼女は一体何を考えて、何を思っているのだろうか。是非顔を見せて欲しいし、ゆっくりお話がしたい。どうやって攻撃してやろうかと考えていれば後ろから花宮に頭を叩かれた。

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