ねえ、知ってる?

意識が遠のいたのは一瞬で、目を開けるといつものように部室にいた。まるで今までの出来事が嘘のように時計は進み、他の生徒達の声も聞こえてくる。あんなにも傷だらけになったはずの体は怪我一つなく、本当にさっきまでの出来事が夢だったんじゃないかと思う。

「え、めっちゃ普通に戻って来てんじゃん」
「葉月も全回復してるし」
「さっきまでのは何だったんだ?」
「花宮、何してんの?」
「…今吉さんから連絡が来てんだよ。全員いるかって」
「ああ、そういうこと。私達別に他校と連絡取り合ってるわけじゃないもんね」

赤司を筆頭にあの時あの場所にいた全員の無事が確認されて、俺の方で少し調べてみますと赤司から連絡があり数日後。分かったのはあの男も西条さんも実際に存在していて、数年前に二人共亡くなっているということだった。

私の母親が過去に通っていた病院にあの男が勤務していたことも記録に残っており、あの男が私の両親の死に関わっているというのは本当と思わざるを得なかった。

西条さんは高校1年生になった年の夏に車に轢かれて亡くなっていた。お墓参りに誠凛の連中が行ったという話を聞いたが、私達には関係の無い話だ。

そんな中、あの日から数か月が経っても分からなかったことが一つだけあった。それは、あの世界の視聴覚室で一度だけ見たもうひとりの犯人と思わしき男。

あの男の正体だけは赤司の力でも分からなかったらしい。まあ分からなかったからと言ってどうということも無いのだが。いつものように練習終わりに立ち寄ったコンビニでその話をすれば、原とザキがのっかってくる。

「ま、さすがにあんなのに2回も3回も巻き込まれることないでしょ」
「知ってるか、原。そういうのフラグっていうんだぜ」
「うっわ、そういうこと言ってるザキが一番フラグ立ててんじゃん」
「どっちもどっちだろ」

なんて、笑い話にしていた私たちは疑うはずもなかった。

あの男の研究とやらがまだ続いていることを。

◇◇◇

「ねえ、知ってる?どっかの学校で起こった集団失踪の話」
「何それ。どっかってどこよ」
「知らないけど、友達がいなくなったって言ってる子がSNSにいっぱいいてさ」
「絶対釣りでしょ、それ。止めなよ、いちいち反応するの」
「でも怖くない?ほんとだったら私達も巻き込まれちゃうかもよ?」
「やだもう、止めてよ!そういう怖いこと言うの!」

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