もしも付き合う未来があったとして(IF)

※完全IF※もしも原と葉月が付き合ったら※

「てな訳で俺ら付き合うことになりました〜!うぇ〜い!」

パチパチとわざとらしく手を叩いて盛り上がる隣のバカにイラッとしつつ向かいの席に座っていたザキに視線を向ける。これでもか、と言うほどに目を見開いて私と原を交互に見てから至極真剣な顔をしたザキは静かに口を開いた。

「お前、マジで言ってんの…?男の趣味悪すぎだろ」
「言わないで私が一番思ってるから」
「待って一応俺彼氏だかんね?」
「こういう時だけ彼氏面すんの辞めろウザイ」

何で付き合ったのか、だとか原のことが好きなのか、だとか。そんな事を聞かれても何一つ答えられないがただ一つ言えたのは一緒にいて心地が良かったということだ。あとぶっちゃけると酒の勢いでヤッてしまったから。あの時の私は本当にどうにかしてた。正直後悔してる。

閑話休題、そんなこんなで一緒にいる時間が長くなり気が付いたら付き合おっか、そうだね、と言った具合の軽いノリで所謂カップルになってしまった訳だ。だが実際お互いの性格も考えも知り尽くしているし、デメリットよりもメリットの方が大きい事は確かで。

「まあ、恋愛的な意味で好きかと言われるとね。別に好きじゃないけど」
「はぁ?じゃあなんで付き合ってんだよ」
「付き合ってるとか付き合ってないとかって単に肩書きでしょ。付き合ってなくてもキスもセックスもできるじゃん?」
「いやまあそうだけどよ…そういう問題でもねーだろ…」

ほんと何なのお前らとため息をついてからストローに口をつけたザキはまだ疑っているようで納得のいかない顔をしている。ちなみに花宮にも一応形式上はカップルになったと伝えたが既読無視だった。古橋と瀬戸は言わずもがな、だ。高校生男子が同級生、ましてや部活の同期の色恋沙汰にあんなにも冷たい対応をするものだろうか。

「今んとこザキのリアクションが1番面白いよん」
「いや、そりゃアイツらからしたらこんな話どうでもいいだろうな」
「こんな話ってひどくね?俺らこう見えてもちゃんと付き合ってんだよ?ヤることヤッてるし」
「余計なこと言うなバカ」
「マッジで!?」
「お前もなんで過去一で食いつくんだよ引っ込めバカ」

ケラケラと笑いながら私の肩に腕を回してこめかみにキスをする原をしっしっ、と手で払うけれど今までじゃ考えられない距離感にザキが心底面白そうな顔で見てくる。マジでウザイ。だから嫌だったんだよ。付き合ったとか付き合ってないとかわざわざ言う必要ないじゃん。何なのコイツほんとにムカつくから三回くらい死んで欲しい。

げっそりしながら温くなって苦味の増した安いコーヒーを飲む。私そっちのけでキャッキャッと楽しそうにクズ丸出しな話をする二人にため息が出る。彼氏だとか彼女だとか、そんな肩書き正直どうでもいいし気にもしてないけれど仮にも彼女の前でセフレの話をするかね普通。多少の苛立ちを感じながらも頬杖をついて口を開けば原はケラケラと楽しそうに笑う。

「別に他の女でつまみ食いすんのはいいけど意味分からん病気なんて持ってきた日には二度とヤれない体にしてやっからね」
「ね?別にセフレとヤッても平気でしょ?本人がこれだもん」
「お前それほんとにいいのかよ。仮にも彼氏が他の女とどうこうって、嫌じゃねぇの?」
「それが嫌だったら原と付き合えないでしょ。もう原がそういう病気みたいなもんなんだから」

正直原程のクズになるとその辺の女じゃ彼女にはなれないだろう。なれたとしてもすぐに別れたくなるはずだ。一人の相手に執着できない原みたいな男と、恋人に愛されたい女は相性が悪すぎるから。だから原を私が縛るつもりはないし、別れようと言われればすぐに手を離せる。

「一緒にいる上で都合のいい肩書きがカップルだったってだけだから」
「それでいいのかよ」
「俺も面倒な女切る時楽だもん。彼女いるからって言えばいいだけだし?」
「彼女がいるのに面倒な女と関わりを持つ時点でどうかと思うけどね」
「いやツッコむとこ面倒かどうかなのかよ。女と関わりを持つのがセーフってのがもう変」

それでもほんの少しだけ、私じゃない女が原と付き合うだとかそういう事になったらと思うとムカつく私がいる。私よりいい女なのかと思うとムカつくし、あれだけ一緒にいたのに私じゃない女を選ぶのかと思ってしまう。けれど一番ムカつくのは原に対してそんな心を抱いている自分自身にだ。多少なりとも原に対して恋愛的な好意を抱いていることを嫌でも実感させられることがムカつくんだ。

「お、なんか可愛い顔してんね。葉月ちゃん?」
「はあ?頭おかしいんじゃないの。つーか可愛いのなんか当然でしょ」
「ウケる。超照れ隠しするじゃん。もしかしなくても俺の事考えてたでしょ?」
「ほんとに死んで。今すぐに」
「…なんか付き合ってるみてーだな」

私の頬をつついてニヤニヤと笑う原の足をテーブルの下でゲシゲシと蹴る。揺れる前髪から見えた色素の薄い瞳に一瞬だけうっと息を飲めば、それに気付いた原がにんまりと口角を上げる。テーブルの下でするりと絡められた足にギロリと原を睨みつけるけれど、当の本人は全く意に介していない。

付き合う前から原が私に甘いのは分かっていたけれど、今は露骨に私を甘やかしてくる。そんなバカップルみたいなことは御免だと思っていたのに、原だからしょうがないかと諦めて受け入れている私がもしかしたら一番甘いのかもしれないと、気付いた時にはもう後戻りはできなかった。

「私のこと大好きなのは分かったから、さっさとドリンクバー取ってきて」
「はいはいツンデレ乙〜」
top
ALICE+