もしも女子が霧崎マネだけだったら

目が覚めて、辺りを見回してすぐに違和感に気づいた。キセキ及び無冠獲得校のバスケ部スタメンが勢揃いする中に一人だけいる異質な存在。誠凛のカントクや桐皇のマネージャーがいないのに、何故か私だけがこの場にいる。

「葉月、怪しさ100%じゃん」
「ほんとにね。私も思ってる」

ケラケラと笑う原に真顔で返事をする。は?全然笑えないから黙ってくんない?向けられる視線は疑いのものばかりでイライラしてきた。

「おい、葉月」
「なんだよ」
「機嫌悪ぃからって俺に当たってんじゃねえよブス」
「うるさいんだけど、なに?何か用?」

声をかけてきた花宮に不機嫌を隠すことなく返事をする。今なら何言われても暴言だけで返事できる自信があるくらいにはイラついている。こっち来い、と言う花宮に渋々腰を上げて着いていく。

連れてこられた場所は最悪のスペース。赤司と今吉サンとかまじありえない無理帰らせろ眉毛。あからさまに嫌そうな顔をする私に花宮がため息をついて無理やり座らせる。

「朝倉さん、この場所に心当たりは?」
「あるわけないでしょ馬鹿じゃないの。そんなクソみたいな質問する暇あるならもっと別のことしろよ」
「おーおー。葉月ちゃん、めっちゃ機嫌悪いやん」
「そう思うならアンタの所の後輩なんとかしてもらえます?何あの目腹立つ潰していいかな」

私が疑われているのはほぼ確実。赤司と今吉サンはまだ決めかねてるって感じ。だとしたってこれだけあからさまに視線を向けられたらイライラする。思わず口から零れそうになった舌打ちを飲み込んで口を開く。

「そんなに疑わしいなら縛るなり何なりして倉庫にでも閉じ込めれば?」

敢えて周りにも聞こえるように声を張ったせいか、私の声は思ったよりも体育館中に響いた。何人かの驚いた様に息を呑む音が聞こえて、目の前の赤司と花宮が目を見開いた。今吉サンは楽しげに笑ってて怖い。

「ふっ…さすが朝倉さんですね。分かりました。縛りはしませんが俺達の監視の元で動いてもらいます」
「…あっそ」

私を見てふっと表情を緩めた赤司が柔らかく笑う。さっきまで殺伐としていた空気が一瞬で和らぐ感覚に気持ち悪さを覚えて右手で左腕を抱える。うっ…鳥肌やばい。自然と素っ気なくなった返事をして立ち上がる。足早に原達の元へと戻り瀬戸の背中に隠れる。

「なに?」
「む、むり…やだ怖い…」
「大丈夫か?真っ青だぞ」
「だ、だいじょばない…」

私の顔色の悪さに瀬戸も引きはがすことなく、そのままにしててくれる。古橋が私の顔色を見て一瞬眉を潜めた後、頭を撫でてくる。心配したザキも大丈夫か?と声をかけてくれる。ただひとり原だけは腹を抱えて笑ってたので後で腹パンしておこうと思った。

〜〜〜

もしもの話

葉月が気持ち悪がってた原因は大きく分けて2つ。

一つ目は赤司くんが葉月の言葉に驚いていた理由が「まさか本当にこう言うとは…」って意味の驚きだったことに気づいたから。赤司くんは予想外の返事に驚いていた訳じゃなくて予想通りの返事すぎて驚いていたってことに対して怖がってます。

二つ目は赤司くんの言葉を聞いて、自分に疑いの視線を向けていた面々が一気にその態度を軟化させたから。赤司が言うなら大丈夫、さすが赤司!みたいな空気に包まれて、お前ら自分の意思はないのか赤司の操り人形かよって思っちゃってぞわぞわ。

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