「でんきくんみて!」
「おっ、可愛いぞー!名前ー!」
「きゃー!」
共有スペースのソファに座る上鳴の前に走ってきた名前が、両手を広げて来ている服を見せるように胸を張る。八百万に創造で作ってもらったワンピースは名前のお気に入りらしい。可愛い、と褒めて欲しくてこうして皆のところを回っていることを知っている上鳴は名前の頭をわしゃわしゃと撫でる。褒められたことと頭を撫でられたことが嬉しいのか名前は両手で口を覆ってくふふ、と笑った。
初めは「名字」といつも通り呼んでいたのだが、小さい名前を高校生の名前と同一人物として見るとどうにも態度がよそよそしくなってしまう。その為、上鳴は「名前」という名前の一人の子供として接する事にしたらしい。そしてその判断は大正解だったようで名前の大好きなお兄ちゃんポジションを見事に獲得したのだった。
「ねー、でんきくんはどんなおようふくがすきー?」
「んー、かっこいいのが良いよなー」
「なまえはねー、かわいいのがいいなー」
「名前は美人さんだからなー」
「ほんと!?なまえ、びじんさん!?」
「おー、美人さんだぞー。俺が言うんだから間違いない!」
洋服披露会は上鳴が最後だったようで、名前は上鳴から褒められた後ソファに座ろうと必死にもがいていた。そんな名前を上鳴が抱き上げて自分の膝の上に乗せる。上鳴の胸に背中を預けて、上鳴の左手をにぎにぎしながら名前が口を開く。それに対して上鳴もスマホを見ながら返事をする。
人に聞いた直後に自分のことを話したがるところは小さな子供だな、と上鳴が声を出さずに静かに笑う。スマホを隣に置いて、右手で名前の頭をぽん、と撫でながらもう一度褒めれば名前がバッと振り返る。勢いよく食いついてきた名前にクツクツと笑いながら肯定の返事をすれば名前は「きゃはふ」と笑い声をあげながら両の手で口を覆った。
「あのね、あのね」
「ん?」
「おみみかしてー」
「んー?」
「あのね、でんきくんもね、かっこいいよ」
「……はぁぁぁぁ」
「う?でんきくん?」
少し恥ずかしそうにする名前に言われた通り上鳴が名前に耳を向ける。耳元でこそこそ、と小さな声で言われたセリフに上鳴は一瞬固まった後、大きなため息と共に名前をぎゅうううっと抱きしめた。なぜ抱きしめられているのか分かっていない名前は首を傾げながらも大人しくしていた。
「名前は小悪魔だなー」
「こあくま?」
「悪い女って意味」
「なまえわるくないよ!いいこだもん!」
「ははっ!冗談冗談!名前はいい子だもんなー」
「むー。でんきくんいじわるしないで!」
「ごめんって。許してくれますか?」
「しょうがないからゆるしてあげる!」
「さすが名前。ありがとー」
「きょーのでんきくんはあまえんぼさんだー!」
少しの間ぎゅうぎゅうと抱きしめていた手を緩めて名前を見ながら上鳴が笑う。上鳴の「小悪魔」という言葉に必死に反論する名前を見て、上鳴がまた笑う。上鳴にからかわれたのだと本能的に理解した名前がむすっとした顔で上鳴の肩をぺちぺちと叩く。両手を顔の前で合わせて謝る上鳴を見て、名前は腰に手を当てて答える。
そんな名前をお礼を言いながら抱きしめる上鳴の背中をぽんぽんと名前が撫でる。自分がお姉さんになった気分なのだろうか、その顔はどこか誇らしげな顔をしていて、その顔を上鳴が見ていたら恐らく笑っていただろう。また逆も然りで、名前を抱きしめる上鳴の口元は緩みきっており、もし他のメンバーがこの顔を見ていたら何か言われることは明確だった。
「名前、一緒にココア作るか」
「ここあ!つくる!ここあつくる!」
「よし、キッチンにしゅっぱーつ!」
「しゅっぱーつ!」
兄と妹?
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